山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

大英博物館古代ギリシア展の目玉展示「円盤投げ」の不思議

2011年05月05日 12時57分37秒 | Weblog
 昨日(2011・5・4)、神戸市立博物館に大英博物館古代ギリシア展を観に行った。あこがれのギリシア美術だ。
 水や穀物を入れる壷・アンフォラがたくさん展示されている。黒絵、赤絵があり、大きさはさまざまだがいずれも均整のとれたギリシアの壷だった。絵の内容によって各コーナーに分けて展示されている。この壷絵が、ギリシア人の生活からオリンピア競技、戦争、神々、人生観までうきぼりにしてくれる。
 アンフォラとともにわたしを満足させてくれたのが、大理石の彫刻だ。ギリシアの大理石彫刻はいずれも上質の白大理石を使っている。女神アフロディテ像もよかった。だがギリシア彫刻といえば、なんといっても青年(男)のひきしまった肉体美の表現だ。
 そのなかでも、今度の展示会の目玉は「円盤投げ(ディスコボロス)」だ。展示されていたのは、前5世紀の彫刻家ミュロンのブロンズ像にもとづいてローマ時代につくられた大理石の模造品だ。図録によると大英博物館の「円盤投げ」は、1791年にローマ近郊の皇帝・ハドリアヌス帝の別荘から出土したものだ。この別荘からもうひとつ「円盤投げ」が出土しており、これはヴァチカン美術館に所蔵されているという。ミュロンの「円盤投げ」の大理石コピーはローマ時代に数多くつくられ、現在27点知られている。そのうち完全に近いコピーは、現在ローマ国立博物館に所蔵されているものだそうだ。
 ところで、わたしはこの「円盤投げ」をぐるりと2回まわって鑑賞したのだが、あれ変だなと思うところがあった。
 それは、円盤投げに適した形になっていないからだ。わたしは会場で、円盤投げの格好を自分でやってみた。すると、この彫刻とは足が逆になるのだ。「円盤投げ」は、右手に円盤をもち後ろへ大きく振り上げている。それで右足に重心をおいて深く曲げている。左足はつま先で支える形だ。右手を振り上げているので、上体はひねられ、力が蓄えられている。そのバネを解放し、かつ右足を伸ばして円盤を飛ばすのだ。
 だが、右手の円盤を体をひねりつつ投げようとすると、やはり左足を前へ出して重心をかけて投げるのが自然の形になる。円盤投げはしたことはないが、運動の基本のスタイルからいって、彫刻の足は逆だと思った。
 家に帰って、2300円の図録を読んでいくと「円盤投げ」の解説があった。この解説はすべて大英博物館がかいたもので、それを日本語訳して出版している。そこにわたしの疑問を解く解説があった。

 1896年、アテネで開催された第1回近代オリンピックでは、古代ギリシア独自の競技である円盤投げが行われた。ギリシア人選手団は、この伝統ある競技に自国の誇りをかけて臨んだが、アテネにやって来るまで円盤を投げた経験がほとんどなかったと言われるあるアメリカ人選手の前に苦杯をなめる。
 敗北の原因はミュロンの≪円盤投げ≫だった。ギリシア人コーチは円盤投げの方法をこの古代ギリシア彫刻の名作に求めたが、ミュロンの≪円盤投げ≫と同じように投げる作戦自体が誤りだったのである。なぜなら、ミュロンの≪円盤投げ≫は、現実に円盤を投げる人のありのままの姿ではないからである。

 逸話まで添えて書いてあった。足が逆だとまでは書いてないが。古代オリンピア競技では、円盤投げは投げる手と同じ側の足をふんばるというルールがあったのなら話しは違うが。でも、他の競技では近代スポーツのようなルールは整備されていなかったのだから円盤だけ特殊なルールがあったとは思えない。



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