山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

校長も望まない、学校の非民主的運営の押し付け

2014年07月18日 11時42分27秒 | Weblog
 『朝日新聞』2014・7・18夕刊に「職員会議で挙手禁止?」というコラム記事がのった。大阪府教委が、校長のリーダーシップ強化のため、職員会議での挙手や採決禁止の方針をきめ、8月下旬までに校内の内規を見直すよう全府立高校に求めている、しんと静まりかえる職員会議、そんな学校に子どもを通わせたいとは思わない、という記事だ。
 校長のリーダーシップというが、そのモデルとなるのは大阪市立巽中学校の、教育の条理に反するわがまま勝手な校長なのだろう。府教委は、「教職員の意見を聴取する場合、選挙またはこれに類する方法は取らない」「人事委員会のように実質的に校内人事を決定し、校長・準校長が追認することは認められない」、職員会議について「教職員による挙手・投票の実施を原則とする…ことがあってはならない」などとしている。
 いったい、府立高校校長会からそのような要望がでていたのか。はっきりいって、これは校長の裁量権を不当に侵害し、その仕事を困難にする以外の何物でもない。府教委がまた無理難題を押し付けてきてこまっているという、校長の声を聴いた。多くの校長がそう思っているだろう。校長を府教委の管理下にがんじがらめにするものだからだ。校長のリーダーシップというが、たんに教職員をおさえつけ勝手な独裁的な手法をとるだけで、リーダーシップとはいえない。教育のリーダーシップとは、教育への見識によって全職員をひきつけまとめあげるものでなければならない。職員会議の民主的運営と十分な議論をつうじて、教職員の合意が形成される方向へ、また校長と職員の意見が一致する方向にすすんでいく。その努力が日々つづけられなければならない。民主的学校運営とはそのようなものだ。これまで職員会議では必要な事項では採決がおこなわれてきた。しかしそれは一票でも多い多数決をよしとしたものではない。これは政治的な多数決だ。教育現場では、合意形成を何より重視し、採決をすれば大方の賛意をえられるまで議論をつくすことを大切にしてきた。けっして採決は校長の権限を奪うものではなかった。
 ところがこれをくつがえせというのが府教委の方針だ。大阪維新の会・松井知事・橋下大阪市長の教育介入、その推進者である中原徹教育長の押し付けけそのものだ。校長の要望ではない。校長を府教委のも足元に縛り付けるものだ。学校教育法で「教育をつかさどる」と定められた教育の専門家である教員の総合的な教育力を萎えさせる方向だ。
 戦時中の学校がその目標、到達点となるだろう。安倍反動政治と対をなす教育・学校体制だ。
 
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納得いかない、小保方氏論文「早稲田大学調査委員会」報告

2014年07月18日 10時10分44秒 | Weblog
 7月17日(2014)、小保方晴子氏にかかわる「早稲田大学の博士学位論文に関する調査委員会」の報告が発表された。あまり詳細な記述はなく少々おどろいた。しかも、委員会の委員長は小林英明弁護士で、他の委員4名は早稲田大学教授・医学博士などと職名のみが記され氏名は不詳だ。じつに不可解な文書だ。結論は、不正はあったが学位取り消しにはあたらない、というものだ。
 
 小保方氏の論文について、「『最終的な完成版の博士論文を製本すべきところ、誤って公聴会時前の段階の博士論文草稿を製本し、大学へ提出した』
と認定した。」「著作権侵害行為等にあたるとされたのは、製本・提出すべき論文のとりちがえという小保方氏の過失によると認定した。」という。
 大事な博士論文をとりちがえて草稿を提出するというのはありえないことだ。もし間違えて送ったとしても、真正の論文が手元に残るのだからすぐ気付くはずだ。論文の著者に対する公聴会審査は2011年1月11日であり、正しいとされた本当の論文提出は2014年5月27日である。2014年2月に問題発覚してからでも数か月して正しい論文を提出したことになる。これは過失によるとりちがえとはいえない。

 「『本件博士論文には、上記のとおり多数の問題箇所があり、内容の信憑性及び妥当性は著しく低い。そのため、仮に博士論文の審査体制等に重大な欠陥不備がなければ、本件博士論文が論文として合格し、小保方氏に対して博士学位が授与されることは到底考えられなかった』と認定した。」
 審査体制がしっかりしておれば、博士号が授与されることは到底考えられない論文だったというのだ。

 ところがである。
 「早稲田大学における学位取り消しの要件は、『不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したとき』である。」ということで、「不正の方法」を検討する。「『著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起行為は不正行為にあたる。』と認定した。但し、『不正の方法』といえるためには、不正行為を行う意思が必要と解釈すべきであるため、過失による不正行為は『不正の方法』に該当せず、『不正の方法』に該当する問題箇所は、序章の著作権侵害行為及び創作者誤認惹起行為など、6箇所と認定した。」というのだ。
 過失による不正は「不正の方法」にならないが、それでも、序章の盗作など6カ所は「不正の方法」よる不正だと認定した。

 ところがところが。
 「不正の方法」と「学位授与」との間に因果関係が必要だが、「『上記問題箇所は学位授与へ一定の影響を与えているものの、重要な影響を与えたとはいえないため、因果関係がない。』と認定した。その結果、本件博士論文に関して小保方氏が行った行為は、学位取り消しを定めた学位規則第23条の規定に該当しないと判断した。」というのだ。

 まったくむちゃくちゃな論理だ。本来なら博士号が授与されることは到底考えられない論文で、不正の方法で学位授与を受けたことが判明した場合に学位取り消しがなされるが、この論文は不正の方法による不正が6カ所数十ページあるとはいえ、不正の方法による不正は学位授与へ重要な影響を与えたとはいえず、因果関係がなく、学位取り消しに該当しない、というのだ。何度読んでも論理的につながらない。法律家的文章によるごまかし文だ。調査委員会が平気でこんなことを発表するその神経をうたがう。早稲田大学の信用を失墜させるあらたなパフォーマンスだ。
 
 報告書は最後の付言で、小保方氏に対して、盗作・剽窃は研究者の論文では決して許されない、学位取り消しに該当しないと判断したことはこのことの重要性を決して低めるものではないといい、早稲田大学に対しては、ひとたび学位を授与したら取り消すのは容易ではない、学位審査者はその重みを十分認識すべきであると苦言を呈する。おとがめなしにしたから、以後注意するようにということだ。
 やった方も、これを調査した方も、同じ程度であることだけは確かだ。
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