山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

京大などが経営者団体に加入

2009年05月17日 08時00分22秒 | Weblog
 朝日新聞(09・5・12)によると、5月11日、京都大、大阪大、神戸大が関西経済連合会に加入した。国立大では初めてのことだという。私立大では慶応大、早稲田大、関西大、関西学院大など11学校法人が関経連の会員になっている。
 04年に国立大学が独立行政法人化されて以降、ついにこんなことをやるようになったかと、私はあきれている。国からの運営交付金は毎年1%ずつ減らされている。そのなかで、人文・社会科学・基礎科学などが冷遇され、産業界と結びつく分野への重点化がすすんでいる。ノーベル賞受賞者もこれに警鐘乱打している。
 京大などはみずからを大企業として位置づけ、経営者団体に加入するにいたった。加入すれば経済界との結びつきがよりつよまり、企業としての格があがると考えるのだろう。産学連携どころが、産学合体の段階に入った。
 教育・研究の論理の衰退、企業利益や経済の論理の浸透がここまできたとの感を強くする。教育・研究の論理とは、真理の探究を最高目標にすることであり、利益とは結びつかない人文・社会科学や純粋科学・基礎科学を重視してきた。すくなくとも1970年代前半までの研究の成果が今度の日本生まれのノーベル賞受賞者4名という成果に結びついた。だが、1990年代以降、日本の大学は文部省の指示のもと、財界との結びつきをより強め、応用科学に特化するように大転換をしている。
 戦時中までの抑圧の時代をぬけでて、学問の自由のもと、国家のための学問、道具としての学問から解放されて、真理探究に邁進し、大きな成果を挙げてきた。だがその道はねじまげられ、ついに大学が経済団体として自己規定するに至った。
 大学の新自由主義的経営、教員の目標管理、評価、大学自体の国による評価は、短期の目標を追い求めるように研究の萎縮をもたらしている。論文をそんなに書かなかった益川さんなんかは今の時代なら排除される。
 やがて道州制導入とともに、経営者団体の会員である主な国立大学は州立大学に移管され、弱小国立大学は廃止される。そんなことが透けて見える。
 
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山宣暗殺の黒幕がわかった

2009年05月17日 06時28分32秒 | Weblog
 1週間前、京都の「山城社会科研究会」において、「戦争に反対した人びと」に関する報告をする機会を与えていただいた。そこで会の中心メンバーの本庄豊さんから著書2冊をいただいた。そのうちの『テロルの時代 山宣暗殺者・黒田保久二とその黒幕』(群青社、2009年4月10日発行)をさっそく読んだ。
 山本宣冶は、いわずとしれた性科学者で労農党代議士だ。治安維持法の最高刑を死刑にする改悪に反対し、国会でただひとり民主と人権の論陣をはって時の政府を糾弾した。だがそれゆえに右翼のテロルの対象となった。
 治安維持法の授業では、山宣の国会での追及をよく使ったが、彼の生涯やテロの犯人について本格的に勉強したことがなかった。『テロルの時代』は、教員であり社会運動史研究家である本庄豊さんが、山宣暗殺の犯人・黒田保久二の生涯を究明するとともに、その背後で彼をあやつった黒幕を特定した労作だ。
 テロリスト黒田は、わずか6年で刑務所を出所。大連、満州に渡って戦中をすごす。戦後、門司で沖仲士などをした。日本に戻った黒田は、黒幕を訪ねたが門前払いされた。その後、失業対策事業で働くようになり、全日自労という労働組合にも所属するようになった。その組合事務所でポツリともらしたことばが、黒幕究明の糸口となった。
 その黒幕とは大久保留次郎。大久保は警視庁特高課長から同官房長、千葉県知事、東京市長となり、戦後は衆議院議員、国家公安委員長をつとめた。テロリストをあやつるに十分の経歴だ。
 恐るべき権力の暗黒部分を日の光の下にひきずりだした本庄さんの執念の調査研究を称えたい。関心を持つ人にこの本を薦めたい。
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