天地わたる手帖

ほがらかに、おおらかに

「鷹」と名付けて

2019-07-06 15:04:04 | 


山地春眠子著『「鷹」と名付けて 草創期クロニカル』(邑書林、本体価格1500円)が発売された。

第一章 「鷹」創刊前夜
第二章 「鷹」創刊号が出る
第三章 若手を育てる眼
第四章 「妙な気流」
第五章 二年目に入る
第六章 二周年へ向かう
第七章 湘子の馬酔木離脱
第八章 鷹独立宣言
第九章 両の手に


「あとがき」をみると、本稿は「鷹」平成28年7月号から同31年4月号まで連載されたという。
鷹同人として恥ずかしく、情けないことだが小生はこの連載をほとんど無視していた。今回一冊になったものを繙くと山地さんの論の展開する緻密さと読みの深さをあらためて感じ、一気に読み終えた。

「鷹」は明日、京王プラザホテルで「鷹」創刊55周年記念俳句大会を開催する。それに合わせての出版と思われる。
本書の内容以外のことへ言及して申し訳ないのだが、本書の出版は採算が取れるのか心配になった。なにせ鷹草創期の、簡単にいえば、秋桜子と湘子の確執が相当量核心にある。他結社の人がゴシップと見てそそられる内容といえなくもない。
鷹で本書を買う人が同人500名、よそで鷹に関心を持つ人が500名ほどとすれば、部数2000もあれば十分というところ。俳句入門書のように販路が広いわけではない。
それが謹呈としてぼくに届いた。いただいていいのかと思いつつ、もしかして鷹俳句会が本書上梓に出費したのかもしれないと考えた。結婚式の引き出物のような感覚で。
ならばぼくら鷹同人が払っている資金を使ったわけでいただいてもいいか……。
鷹同人、会員が学ぶべき資料を山地さんが奮闘してお書きになり鷹俳句会がテキストにしてくださったと。

邑書林の島田 牙城さんが本書に取り上げられている鷹の句はいいとおっしゃているのは外交辞令と思えない。
ぼくが鷹に入った平成2年、中央例会で知った先輩方の名前が出てきて懐かしい。
鷹創刊のスター飯島晴子はもちろんだが、石井雀子、後藤綾子、芝崎芙美子、蓬田節子、鳥海むねき、沼尻玲子らは顔と名前が結びつく方々。名前は存じ上げていて面識のない方もいて胸の中でふくらむものがあった。
草創期に活躍してつい最近まで鷹に在籍していた観音寺尚二はいちばん懐かしい。8年前、博多で句会をした後、中洲で飲んだことがあり、べろんべろんに酔っぱらったことが昨日のことのようである。

ぼくは「鷹」を「保守本流」と一般の方に説明している。ただし中身は新鮮ですよと。
それは間違っていないようで、昭和43年4月の「鷹50号記念西日本大会」にて湘子は「進歩的伝統派」というようなことを言っている。
湘子はかつて俳句は型は変えなくいいが内容は時代に合わせて積極的に新奇を取り込めとと言っていた。そのことはあらためて肝に銘じた。
春眠子さん、お疲れさまでした。


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追伸
7月7日、鷹55周年記念大会の受付で邑書林に勤める黄土眠兎に会った。幸運にも黄土はネット句会の長年の仲間にして訊きやすい。
訊きたかったのは山地さんの本『「鷹」と名付けて』を上梓するにかかった費用を誰が払ったかであり、単刀直入に訊いた。
本書は山地春眠子さんが自腹を切って出版したのであった。自費出版である。黄土によれば「(お代は)勉強しましたよ」ということだが、30~40万円はかかるだろう。
それを知って、あらためて、春眠子さんにお礼を申し上げる。春眠子さんは原稿料もなにももらっていない慈善事業(持ち出し)であり、頭が下がる。
それと同時に鷹俳句会が支払いに関与していないことを言っておきたい。鷹俳句会にそこまでの余裕はなかったのである。


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-07-07 11:38:40
不肖の弟弟子シロウです。

お家騒動には興味ありませんがブログのタイトルに「鷹と名付けて」と言われたら何故「鷹」なのか気になりますね。

ところで私のような素人俳句好きには年に一度のビッグイベントの結果発表がありました。
本格俳人であるわたるさんの講評を是非お願い致します。審査員賞まで目を通して頂けると有り難くぞんじます。

https://itoen-shinhaiku.jp/result/
Unknown (シロウ)
2019-07-08 00:43:59
落ち着いて今年の伊藤園新俳句大賞の結果を見ましたので私の感想を。

文部科学大臣賞
猫の載るヘルスメーター文化の日 田中 龍太 27歳

猫は自分の居心地の良い場所を求めて一日中移動し続ける生き物。それがたまたま人間が体重を計るヘルスメーターの上だったとしたらとても面白い。それに対して季語が文化の日なのだから余裕のある季語の選択をしたと思う。

金子兜太賞

今ここで蒲公英になれ種になれ 松本 大夢 15歳

俳句は今その瞬間を切り取る詞なので「今ここで」と言う必要はない。しかし、敢えて言う作者の想いは伝わってくる。

小学生の部大賞


たんぽぽがおそれ知らずに旅に出る 原田 悠生 11歳

小学生だけに拙い擬人法と思われるかも知れないが大きく物を見ていると思う。原田君の他の句も見てみたい。

中学生の部大賞

十五夜に飛ぶ蝙蝠よ眩しいか 田村 煌 14歳

昨年の一般の部B大賞に
梟よ星のない夜は退屈か 茂原 朱美 68歳

があり杜撰な選をしている印象があり。勿論、句と作者には罪がない。

高校生の部大賞

駅を出て街のかけらとなってゆく 西田 歩未 18歳

やや観念的な句。ただ、自らが街のかけらになってゆくと解釈すれば表現としてとても面白い。

一般の部A大賞

終電の吊り革引けば流れ星 黒岩 徳将 28歳

助詞の「ば」が理屈っぽい。

一般の部B大賞

まんぼうの口のくらがり雪降りぬ 今田 保雄 84歳

ユーモラスな姿のマンボウだが好んで食べる地方がある。港に揚がったマンボウの開いた口と降る雪の取り合わせが切なくていい。

以下は優秀賞と審査員賞の中から心に残った句

春寒やナウマン象の歯の化石 高橋 茉凜 17歳

去る人と一駅歩く春の雨 井上 隆裕 32歳

自由席大人一枚枯野まで 大賀 康男 67歳

まず海を見に行く帰郷白日傘 富士原 浩次 73歳

流れ星トルコ行進曲響く 中谷 はる 15歳

最後に紹介する句はいとうせいこう賞。一読して楽しい気持ちにさせてくれる秀句。本来の新俳句大賞らしさを感じた。

アネモネやピアノ教室みんなでラ 丸山 志保 48歳

各賞を授章の皆様おめでとうございました。

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