柴犬日記と犬の児童小説

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記者クラブ

2018-04-24 14:37:38 | おもしろい
財務省の福田淳一事務次官が、テレビ朝日の女性記者と会食中、「胸触っていい」「抱きしめていい」などの言葉を執拗(しつよう)に投げかけたというセクハラ騒動を受けて、さまざまな論争が巻き起こっている。
 「被害を訴えたのにネグったテレ朝のパワハラ体質にメスを入れるべき」
 「報道機関が会話を無断で録音して、週刊誌にネタを流しているほうが問題だろ」
 それぞれ大事な論点に違いないと思う一方で、この問題の本質をつくテーマについては、あまり論じられていないのが気にかかる。
 それは、なぜ福田氏が女性記者を「お店の女性」のように接していたのか、ということである。
 『週刊新潮』が音声データを公開した当初、普段から女性に対してこのような発言をよくするのかと質問された福田氏は以下のように答えている。
 「お恥ずかしい話だが、業務時間終了後、時には女性が接客をしているお店に行き、お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある。また、仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない」
 だが、音声を聞けば、女性記者に対してもバリバリに「言葉遊び」を楽しんでいる。福田氏本人や擁護派のみなさんは、全体をみればセクハラじゃないことが分かるとか、森友問題などについて探りを入れてくるのではぐらかしているだけだと反論をしているが、あのデータ自体が捏造(ねつぞう)とかでない限り、「胸触っていい」などと福田氏が発言した事実が覆ることはない。
●公務員のスキャンダルが相次ぐ
 では、なぜ福田氏は「お店の女性」としか楽しまない「言葉遊び」を、テレビ朝日の女性記者に対しても行ったのか。まずみなさんの頭に思い浮かぶのは、「人間性の問題」という言葉だろう。
 一般社会では、銀座の高級クラブやキャバクラ好きのおじさんが、会社の飲み会でも女性社員にお酒をつくらせたり、「ほら、ぼさっとしてないでキミたちは部長の横に座って」なんて注文をつけたりするセクハラシーンがよく目撃されている。福田氏も頭の中が「酒席の女性=ホステスさん」的世界観でこりかたまったおじさんがゆえ、こういう言動に出たのでは、と思う方も少なくないのではないか。
 ただ、筆者の考えはちょっと違う。
 そもそも、一部の官僚のなかには「女性記者=ホステスさん」くらいに思っているフシがある。このような「勘違い」を促進させる組織やシステムこそ、今回のような問題を招いたと考えている。
 「おいおい、いくらなんでもそりゃ官僚に失礼だよ」という声が聞こえてきそうだが、過去を振り返ってみれば、福田氏がかわいくみえるような「勘違い公務員」が山ほどいる。
 例えば今から28年前、東大卒で福島県警本部長だったエリート警察官僚が、女性記者の自宅に押しかけたり、官舎に招き入れコタツの中で手を握ったりしたというスキャンダルが週刊誌で報道された。
 1993年には、秋田地検の次席検事が、夜回りに来た女性記者を官舎にあげて胸に触ったことが写真週刊誌に報道された。
 2000年代になると、もっと露骨になってくる。高知県警の巡査長は、女性記者を呼びつけては抱きついた。帰ろうとする女性記者のタクシーに乗り込むと「ホテルへ行け」と言いだすなどやりたい放題をして論旨免職となった。
 2003年には大阪府警の副署長が女性記者と飲んだ後、「遅いからホテルに1人で泊まったら」とビジネスホテルへと連れていき、肩を抱き寄せたり、抱きついたりした、として懲戒処分を受けた。
 2007年には、長崎市の企画部長が、女性記者をホテルに連れていって性的関係を強要するというセクハラ疑惑も報道された。
●最上位は「女性記者」
 もちろん、報道されるのは氷山の一角にすぎない。大げさな話ではなく、日本の女性記者の歴史は、公務員のセクハラ史と言ってもいいくらいだ。
 なぜこうなってしまうのかというと、一部の公務員にとって、「女性記者」を口説き落とすということは、競争率の高いナンバーワンキャバ嬢をモノにして、周囲の男たちから羨望の眼差しで見られるのと同じくらい誇らしいことだからだ。
 2001年9月14日の『週刊朝日』には、外務省の課長補佐以上の官僚が、1年間で関係した女子の数を自慢し合うという秘密会合があるとして、女性をランク付けしているという記事が出た。ホステスさん、アルバイト、女性職員の順番で高得点で最上位は「女性記者」だと、同省の若手官僚が言っている。
 「それも新聞よりテレビ。最上位はキャスターですよ。なにしろ外務省はキャリア、ノンキャリのカースト制ですからね。何でもランク付けが好きなんですよ」(同誌)
 「つい最近も、ボクの知り合いが、ある民放の女性記者をゲットしたという情報が流れ、『あれは○点だ』とか『いや、○点だろう』とささやき合ったばかり」(同誌)
 「ゲットってポケモンかよ」と怒りに震える女性たちも多いだろう。あるいは、「こんな非人道的な会話を、外務省のエリートがするわけがない、週刊誌の捏造だ」と信じない方もいるかもしれない。だが、筆者も数年前、外務省ではないが、ある省庁の高級官僚たちと酒席を共にしたとき、これとほぼ変わらぬ「女性記者」の格付けトークを聞いたことがある。
 世の中にはドラマとかに出てくる真面目な公務員もたくさんいるが、それと同じくらい「女性記者」を「ホステスさん」のように扱い、あわよくば深い仲にと目論む「エロ公務員」も大勢いるのだ。
 だから、福田氏のやったこともそれほど騒ぐような話ではない、などと言いたいわけではない。個々の人間性だけでは、ここまで大量に、かつ安定的に、「女性記者へのセクハラおじさん」を世に送り出すことは困難である、ということを申し上げたいのだ。
 そうなると、「病巣」は官僚組織の中にあると考えるべきだ。福田氏のように対外的には「仕事のできる国家公務員」がアフター5になると、「女性記者へのセクハラおじさん」へと豹変(ひょうへん)させてしまう、構造的欠陥が官僚組織のどこかに潜んでいるとしか思えないのだ。
 このシステムエラーによって、一部の役人のおじさんたちは、若い女性記者たちを「自分が好きにできる存在」だと勘違いをしてしまう。無理もない。まっすぐ家に帰りたくないとき、電話一本すれば、家でパジャマ姿でくつろいでいてもタクシーを飛ばしてかけつてくれる。同僚ならば、すぐに大問題になるようなエロトークをしても、ちょっとしたボディタッチをしても役所のコンプラへと駆け込まず、「秘密」を守ってくれる。もちろん、女性記者からすれば「取材」という仕事のためなのだが、おじさんは「特別な関係」だと勘違いしてしまう。キャバ嬢の「営業トーク」を真に受けて、のぼせる構図とよく似ている。
●システムエラーの正体
 ここまで言えば、カンのいい方は「システムエラー」の正体にお気付きではないだろうか。そう、「記者クラブ」である。
 ご存じのように、日本の警察、検察、裁判所、そして官省庁には、クラブ加盟社だけが優先的に情報にアクセスできる、記者クラブという制度がある。ここに加盟した記者は役所から横並びで情報がいただける。が、それだけでは、どこの新聞、どこのテレビもみな横並びになってしまうので、クラブ記者たちは役所が終わった後、官僚の自宅に押しかけたり、秘密裏に会食をすることで独自情報を得ようとする。

© ITmedia ビジネスオンライン 官僚と記者クラブのビミョーな関係
 それこそが日本独特の「夜討ち」「朝駆け」という取材文化だ。
 情報を持っている高級官僚に呼び出されたら即座にかけつける。ライバルよりも気に入られて、ライバルよりもディープな内部情報を得る。そういう熾烈(しれつ)な競争がクラブ記者の間で、日夜繰り広げられているのだ。
 ――なんて話をドラマチックに描くと、元新聞記者である横山秀夫さんの『クライマーズハイ』みたいになるが、ミもフタもない言い方をしてしまうと、なんのことはない、閉ざされた「ムラ社会」のなかでライバルを蹴落としながら、いかにしてムラの権力者からかわいがられるか、そして「えこひいき」をされるかという競争に過ぎないのである。
 そう聞くと、「ん? なにか似てるな?」と思う方もいるかもしれない。高級クラブやキャバクラという、福田氏が「言葉遊び」を楽しむ店である。
 ホステスさんたちは「店」という閉ざされたムラ社会のなかで、ライバルを蹴落としながら、支払いのいい「上客」の心をつかもうとする。そのために、心にもない営業トークをして、同伴やアフターに付き合い、「指名」という「えこひいき」を勝ち取っていく。「取材」と「接客」という違いはあるものの、やっていることの本質はなにも変わらないのである。
 実はこれこそが、福田氏が女性記者を「お店の女性」のように扱った根本的な原因である。
●クラブ記者と官僚の関係
 クラブ記者と官僚の関係は、ホステスさんと客の関係とよく似ている。嫌な官僚でも情報をくれるなら我慢をしてエロ話の相手をしなくてはいけない。嫌な客でも指名をくれるなら、口説きもかわしたり、多少のおさわりも我慢をしなくてはいけない。
 人間関係がうりふたつならば、そこで行われるハラスメントが似るのも当然だ。酔った福田氏が、女性記者に「お店の女性」のような「言葉遊び」を始めるのは、彼のなかではまったく自然なことなのだ。
 こういう本質をズバリとつくような話をしてしまうと、「権力の監視」という尊い仕事をしている記者クラブを、夜のお店と重ねるとは失礼すぎる、と怒りの抗議が寄せられるかもしれないが、クラブ記者のみなさんが、高級クラブのホステスさんや、キャバクラ嬢並みに、上客に弱い立場にあることをこれ以上ないほど証明しているエピソードがある。
 2017年6月、国連人権理事会で「表現の自由の促進」の特別報告者であるデービッド・ケイ氏が、日本の政治ジャーナリズムについての報告書を発表した。マスコミは、ヒトラー安倍の恐怖政治で、いかに報道が萎縮しているかを必死にアピールしたので、その手の話もだいぶ盛り込まれたが、問題はそこではなく、日本のマスコミを調査した際、ケイ氏が直面した違和感である。それは、米テンプル大日本校教授のジェフ・キングストン氏が明かしている。
 「ケイ氏が驚いたのは、調査した記者たちが『匿名』を希望したことだ」(朝日新聞 2017年8月22日)
●ハラスメントの温床
 日本のメディア事情に疎いケイ氏はこれを安倍政権が怖いからだと勘違いしたが現実は違う。マスコミ記者は、選挙が落ちればただの人になる政治家などではなく、何十年も長い付き合いになる官僚から嫌われることを恐れて「匿名」にしたのだ。
 名指しで、安倍政権を叩く記者は山ほどいるが、官僚組織や記者クラブを面と向かって叩くマスコミ記者がいないのがなによりもその証拠だ。
 自分たちの労働環境の文句すら、面と向かって言えないから、自分が受けた「被害」を訴える人を見るとカチンとくる。なぜこいつは我々のようにじっとハラスメントを我慢しないのだと憎悪がこみあげる。
 セクハラを受けたのだからまずは財務省に駆け込むべきだとか、テレビ朝日で報道できるように戦うのがジャーナリストだ、みたいなもっともらしい感じで、女性記者がバッシングされているのはこれが理由だ。
 旧日本軍、相撲協会、レスリング協会などをみれば明らかだが、閉鎖された社会はハラスメントの温床となる。これ以上、「被害者」を出さないためにも、そろそろ記者クラブというまったく今の時代にマッチしない「ムラ社会的なキャバクラ」のあり方を見直すべきではないか。
(窪田順生)
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