映画批評ってどんなモンダイ!

映画批評と映画自身について、映画批評に触れながら考えてみようなんて志高くの映画考察の映画部屋。完全ネタばれ。でも読んで!

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

『一命』

2011年10月24日 20時26分09秒 | 新作の批評部屋(2011~2012)
『一命』 監督:三池崇史.出演:市川海老蔵.瑛太.満島ひかり.役所広司
松竹
松竹


『一命』 2011年(日)監督:三池崇史

●時代劇サスペンス
 恥を最も嫌う武士道。武士の面目にかけて切腹することは武士の名誉であり、誇りである。なぜ彼らがそこまで面目にこだわるのかと言えば、それは彼らが未だに武士道を守り抜く武士であり、それは泰平の世であっても武士道を捨ててはいない立派な武士であることを証明する行いでもあるからだ。
 そんな武士道を軸にしたドラマを展開していく本作だが、「命の重み」などといったメッセージや安易な解釈論を本作自体が望んでいないように思える。むしろ本作の方向性はその真逆であり、エンターテイメントとして愉しめる重厚な時代劇ドラマではないだろうか。しかもそこにサスペンスといった娯楽主義を時代劇ならではの手法で魅せているから巧い。
 序盤、瑛太演じる侍が狂言切腹をしてしまったが故に本当に切腹が許され、「武士に二言はない」という武士道の掟を突きつけられるシーン。侍たちの視線と張りつめた空気感が長い長い間によって表現され、瑛太がゆっくりと引きぬく木刀に見える震えが、彼の危機的状況を反映し、死ぬほど長い切腹シーンは、徹底したリアリズムでサスペンスフルに描き切っている。こうしたシリアスで暗黒気質の世界観が本作を娯楽主義に仕向け、「武士道」や「皮肉」といったテーマ性を排除し、後の海老蔵の告白に繋がっていた。
 このように徹底した画面作り(陰湿な美術装飾と暗く重苦しい質感にこだわったライティング)や生々しい痛々しさを極端に魅せる演出によって、あくまで〝映画的〟な、テーマ不在の娯楽性で魅せていく宣戦布告、すなわち勢いがある面は、肯定派と否定派にわかれるだろうが、原作を一切排除して本作を体感すれば、これらのダイナミズム演出が観客のエモーションを掻き立てる映画的な感覚を持っていることを感じさせられるのではないだろうか。
 
●瑛太 満島 海老蔵 演技の限界
 隙間風が入り込む我が家。日々生きていくことがままならない貧しさの中で展開する不幸のどん底は、あくまで瑛太と満島ひかり、海老蔵の三人の演技合戦を繰り広げるための土俵にすぎない。彼らの演技はそれぞれが一人芝居をやっているかのような熱心さと狂気的な空気を醸しだし、ただの「きっかけ」だけでなく、一つの躍動的なドラマとして重厚感があった。
 だがその一方で彼らが個人芝居に走っていたのも事実だ。海老蔵の眼力は語るまでもないが、歌舞伎役者としての台詞回しが呪いのように染みつき、どうにも演技がかっている。また満島ひかりは赤ん坊を抱いて和菓子を食べさせようとする個人演技においては光を見せるが、瑛太や海老蔵との関わり合いの演技になると途端に間が取れなくなってしまい、まるで素人芝居のようである。そこに彼らの関係性の深みが薄れてしまう。本来、厚い絆で結ばれている設定の彼らだが、希薄に満ちた個人演技のおかげで、どう見ても彼らは家族には見えないし、瑛太と満島ひかりは夫婦には見えない。
 豪華な俳優陣を配置し、決してミス・キャストではないが、彼らの「今」の演技には個人演技が光り輝くばかりで、「関係」と「対話」の演技においては三人のうち三人とも一種の限界を抱えていたように思える。彼らが一皮むけて、それぞれが対話の演技ができる役者になった時、素晴らしい化学反応が生まれそうに思えるが、それはまだ先のことのようだ。
 しかしながら緊迫の間を重視し、美術造形や照明にも力を入れた映像美学と重厚感のある世界観は三池映画の持つ「ダイナミズムの闇」そのものであった。3Dは「時代劇初の3D」という宣伝文句を組み入れるための装飾にすぎないが、本作の持つ充分すぎるドラマやサスペンスフルなエンターテイメントは映画的な力量として評価したい。


この記事が気に入りましたら、
下記のバナーをポチッと押して、投票お願いいたします(・∀・)♪
    ↓
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
『映画DVD(レビュー感想)』 ジャンルのランキング
コメント   トラックバック (6)   この記事についてブログを書く
« 『台北の朝、僕は恋をする』 | トップ | 『ゴースト・ハウス』 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

新作の批評部屋(2011~2012)」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事

6 トラックバック

一命 (LOVE Cinemas 調布)
『十三人の刺客』、『クローズZERO』の三池崇史監督最新作。滝口康彦の「異聞浪人記」をベースに作られた武士の世界を批判的に描いたヒューマンドラマだ。1962年に仲代達矢主演で公開された『切腹』と同一原作でもある。主演は歌舞伎俳優・市川海老蔵。共演に『まほろ...
三池崇史監督 「一命」 (映画と読書とタバコは止めないぞ!と思ってましたが……禁煙しました。)
公開初日という事で、前々から観たかった三池監督の「一命」、仕事明けの今日(2011年10月15日)、仕事をとっとっこ切り上げ営業所に帰庫、もよりの映画館に朝一番で観てきました。 http://www.ichimei.jp/ 映画を観終わり家に帰って一睡した今も、まだ興奮醒め...
映画「一命」感想 (タナウツネット雑記ブログ)
映画「一命」観に行ってきました。滝口康彦の小説「異聞浪人記」を原作とし、江戸時代初期に蔓延したと言われる「狂言切腹」を題材に「武士の生き様」に対し疑問を投げかける作品。...
一命 (映画的・絵画的・音楽的)
 『一命』を吉祥寺のバウスシアターで見ました。 (1)原作の滝口康彦著「異聞浪人記」(注1)を映画化したものとしては、小林正樹監督の『切腹』(1962年)があり、それに甚だ感銘を受けたことがあり、また『十三人の刺客』の三池崇史監督の作品ということもあって、映画...
[映画『一命』を観た(すまん、短信)] (『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭)
☆『十三人の刺客』を見たとき、ノリ気じゃない姪っ子だったが、観終えて、「悔しいけど、面白かった^^;」と言った。  で、今回、半ば無理矢理に彼女を、 「名作『忍たま乱太郎』と同じ監督だからさ^^」  と言って、連れて行ったら、観終えて、「『忍たま乱太郎...
『一命』| 武士道はあれど、その道を歩く者なし。 (23:30の雑記帳)
「『一命』を一名ください」と チケット売り場で言えなかった小心者です。 まだまだ修行が足りません(泣) まずは簡単なあらすじ紹介から。。。 (ネタバレあります!) ...