波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

窓灯り

2012-12-09 15:51:59 | 散文





雪は降っている。しんしんと降っている。

深い深い闇の宇宙からやって来て、いっとき室内からの灯りに彩られ、また暗い地面へ

と吸い取られていく、雪、雪、雪・・・・

そんな儚い雪の一生を、少女は窓に顔をくっつけるようにして、見とれている。

漆黒の闇の奥から現われ出て、ということは少女の部屋の灯りに映されてはじめて、他

者に認められ、といっても少女一人に見つけられ、瞬くうちに夜の地の底へと行ってし

まう雪……

少女はそんなことを繰り返し想ううちに疲れ果て、窓際に肘をついたまま寝てしまっ

た。

スチームに湯は廻っていて、ベッドにいなくても寒くはなかった。

ふと朝の光に目が覚めて外を見ると、雪はすっかり止んでいて、すぐ下に鹿の足跡がつ

いていた。帰った跡もある。そうしてガラス窓についた雪をきれいに舐め取っている。

少女にはピンク色した鹿の舌が見える気がした。夜ここに来た鹿は、私とキスするつも

りだったんだわ。そう思うと心臓のビクビクが速くなった。そうだわ、今日はクリスマ

スよ。

                             了



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