雪は降っている。しんしんと降っている。
深い深い闇の宇宙からやって来て、いっとき室内からの灯りに彩られ、また暗い地面へ
と吸い取られていく、雪、雪、雪・・・・
そんな儚い雪の一生を、少女は窓に顔をくっつけるようにして、見とれている。
漆黒の闇の奥から現われ出て、ということは少女の部屋の灯りに映されてはじめて、他
者に認められ、といっても少女一人に見つけられ、瞬くうちに夜の地の底へと行ってし
まう雪……
少女はそんなことを繰り返し想ううちに疲れ果て、窓際に肘をついたまま寝てしまっ
た。
スチームに湯は廻っていて、ベッドにいなくても寒くはなかった。
ふと朝の光に目が覚めて外を見ると、雪はすっかり止んでいて、すぐ下に鹿の足跡がつ
いていた。帰った跡もある。そうしてガラス窓についた雪をきれいに舐め取っている。
少女にはピンク色した鹿の舌が見える気がした。夜ここに来た鹿は、私とキスするつも
りだったんだわ。そう思うと心臓のビクビクが速くなった。そうだわ、今日はクリスマ
スよ。
了
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