波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

つるはしを振るう男

2012-03-08 15:39:39 | 散文詩



[つるはしを振るう男]


少年がそこを通ると
村の男がつるはしを振るっていた。
何のためにつるはしを使っているのかは
分からなかったが
風に靡く夏草を挟んで
何時も何時もつるはしを振り下ろしていた。
多分道をつけてでもいたのだろう。

間もなく少年は村を離れ
二十年ほどして訪れてみると
道など何処にもなく
男も他界してしまい
枯れ切った草のなかを
鶴が餌を物色していた
丁度あの男がつるはしを振るう恰好で。

少年は理解した。
つるはしの名が 鶴がくちばしを振り下ろす
ところからきているのだと。
男が生きていれば老人になって
力瘤を入れずにつるはしを使うように
鶴はゆったりと自然に地をつついていた。