波乱の海をぶじ目的地へ

現世は激しく変動しています。何があるか判りませんが、どうあろうと、そんな日々を貧しい言葉でなりと綴っていけたらと思います

無人駅

2012-03-07 12:48:29 | 散文




[無人駅]


悪魔の雄叫びにも似た災禍がふりかかって
この村でも一人の少女が
O157の食中毒で死んだ。
少女は無人駅から分校に通っていたから
この駅も寂しくなって
誰もホームにいない日も多くなった。

そんな誰もいないホームに
少女の代わりのように
一匹の兎が立つようになった。

人のいないホームに電車は停まらないが
兎の労をねぎらって
運転手は白手袋の手で
さっと挙手の礼をしていく。
兎は後ろ脚でぎごちなく立ち
おや、という顔を振り向けている。