自遊空間、 ぶらぶら歩き。

日々見たこと、聞いたこと、読んだこと、考えたこと

甃(いし)のうへ

2006-04-16 | 日常・身の回り
甃(いし)のうへ

あはれ花びらながれ

をみなごに花びらながれ

をみなごしめやかに語らひあゆみ

うららかの跫音(あしおと)空にながれ

をりふしに瞳をあげて

翳(かげ)りなきみ寺の春をすぎゆくなり

み寺の甍(いらか)みどりにうるほひ

廂(ひさし)々に

風鐸(ふうたく)のしづかなれば

ひとりなる

わが身の影をあゆまする甃(いし)のうへ






サクラの花びらが、
ほんのかすかな風でもひらひらと舞う明るい春の日の午後、
セーラー服を着た高校生たちが、3人、5人と、
はずむような足取りで通り過ぎていくのを、少し高い位置から見ている。

そんな情景が思い浮かぶ、三好達治の詩「甃のうへ」です。
私の大好きな詩で、去年もちょうど今ごろ記事にしました。

今年の2月、日経新聞夕刊のコラム「ひとスクランブル」に、
詩画作家・星野富弘さんのシリーズが載りました。

事故で手足の自由を失った星野さんが絶望のふちに立った時、この詩のことをふと思い出したそうです。繰り返しイメージしているうちに、嫌なことが全部洗い流され、自分が花びらの舞う中を漂っているような気持ちになったのだそうです。

手足が不自由でもイマジネーションの世界ではどこへでもはばたけます。
星野さんがその後、素晴らしい絵と詩を発表し続けているのは、彼を力づけた詩があったからなんですね。




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