「ここから出してやるよ」と彼は言った。
細められる目がとても優しい。
次の新月の夜が待ち遠しくなった。未来が待ち遠しいのはいつ以来だろう。
私は青空を飛べるようになった。
あれからどれくらいの月日が経っただろうか。彼に出会うまでの私はどんな風に生きていたっけ。どうやって息をしていたんだっけ。
今日も一日の始まりは二人分のコーヒーを淹れて、一日の終わりには幸せねって思いながら彼の腕の中で眠りにつくの。
という小説が書きたかったけど、その途中とか脱出方法とか思い浮かばなくて挫折した話。
「ここから出してやるよ」と彼は言った。
細められる目がとても優しい。
次の新月の夜が待ち遠しくなった。未来が待ち遠しいのはいつ以来だろう。
私は青空を飛べるようになった。
あれからどれくらいの月日が経っただろうか。彼に出会うまでの私はどんな風に生きていたっけ。どうやって息をしていたんだっけ。
今日も一日の始まりは二人分のコーヒーを淹れて、一日の終わりには幸せねって思いながら彼の腕の中で眠りにつくの。
という小説が書きたかったけど、その途中とか脱出方法とか思い浮かばなくて挫折した話。
知らない男と結婚することになった。
嫌だと抵抗したけれど、男の家に無理やり連れて行かれた。
ここに来てどれくらいの月日が経った?
今の私にあるのはいつのまにか用意されている清潔な洋服と温かいご飯、読んでしまった本と1人でいるには広い部屋。まるで鳥籠の中の鳥みたいだ。
あの男は毎晩私を蹂躙していく。悔しくて涙が出ることを初めて知った。
今夜も私はあの男の下で喘ぎながらいつか殺してやると思うしかなくて。
彼との出会いは突然で。
窓から見える景色で時間の経過と何もできない悔しさからもう長いことしめきっているカーテンをなんとなく開けてみた。
外の光に目が眩んだけど、彼だけは最初からはっきりと見えていた。
日に当たって透き通っているブラウンの瞳と見つめ合う。
あれからどれくらいの時が経ったのだろう
あなたに出会うまで
私はどうやって生きていたのか
どうやって息をしていたのか
忘れてしまったわ
二人分の洋服と
温かいコーヒーと
まだ知らない感情と
二人で暮らすのにちょうどいい広さの部屋
あなたから与えられる愛
今の私にあるのは数え切れないほどの幸せで
あなたに出会うまで
私はモノクロの世界にいたのね
今日も私
あなたの手の中で
幸せだと思いながら
眠りにつくの
あれからどれくらいの時が経ったのだろうか
貴方に出会うまで
私はどうやって生きていたのか
どうやって息をしていたのか
何も思い出せない
清潔な洋服
温かい食事
読み尽くしてしまった本棚の本
15メートル四方の部屋
貴方から与えられる快楽
今の私にあるのはそれだけで
貴方に出会うまで
私はどうやって生きていた?
今日も私
貴方の手の中で
殺してやるわと思いながら
喘ぐの。