癒しの森 湯布院(仙人の健康相談室)  


人を、そして自分を癒し真なる喜びをもたらす
   
        人生の生き方を学ぶ 癒しの森湯布院

NO277・・・7.世界でいちばん幸福な人

2021-06-11 | エンジェルスティック
スピリチュアル寓話集

ひとりの男が偉大な聖者にたずねた。
「私は裕福で世間的には問題ないのですが、どうしても心が落ち着きません。心の平安を見つけて、幸せを得たいのですが、それにはどうすればよいでしょうか?」
聖者が言った。

「ある人間に見えないものが、ほかの人間にはよく見えるものだ。私はおまえの病を治す方法を知っているが、それは通常の治療法ではない。それでもやってみるか?」
絶望している男は言った。
「どんなことでもする用意はできています」
聖者の助言はこうだった。

「その方法とは、旅に出て、世界でいちばん幸福な人を捜し出すことだ。その人を見つけたなら、彼の着ているシャツをもらって、それを身につけなさい。それがこの病の治療法だ」

 男は、その後すぐに、世界でいちばん幸福な人を捜す旅に出た。幸福な人はつぎつぎと見つかったが、彼らは口をそろえたように、こう言った。
「私が幸福なのは事実だが、私より幸福な人がいます」
こうして、長い間、多くの国を旅したあげく、男はついにだれもが「世界でいちばん幸福だ」という人の住む森にたどりついた。
森までくると、森の奥の方から大きな笑い声が響きわたってきた。男は笑い声のする方向へ足をいそがせた。笑い声の主は、森のなかの小さな広場に座っていた。

「世界でいちばん幸福な人というのはあなたですか?」
と男が聞くと、
「そのとおりだ」
と彼は言った。

 男は自分自身について話し、旅の目的について説明したあと、
「この病を治すには、あなたのシャツを着ることが必要なのです。どうか、それを与えてください」
と頼んだ。

 世界でいちばん幸福な人は、じっと男の顔をみつめて、それから大声で笑いはじめた。彼は、笑って、笑って、笑いつづけた。
笑いがおさまったあとで、男が言った。

「私が真剣に頼んでいるのに笑うなんて、あなたはおかしな人だ」
「そうかもしれない」と幸福な人は言った。「しかし、おまえがちょっとでも注意して見たなら、私がシャツなど着ていないことがわかりそうなものだがね」
なるほどよく見ると、聖者は腰布(ルンギ)をまいているだけだった。

 男は、途方に暮れてなげいた。
「それでは、私はどうすればよいのでしょうか?」
すると、世界でいちばん幸福な人が言った。

「どうもする必要はない。達成しがたい何かのために努力することが、おまえの望みを達成するために必要な修行であったのだ。意をけっして急流に飛び込む人は、自分のなかの驚くべき力を発見して、川を横切ってしまうものだ。おまえの病はすでに治っている」
そう言うと、彼は頭にまいたターバンをほどいて、顔をあらわした。

 それは偉大な聖者その人だった。
驚いた男が言った。
「あなたでしたか! それなら、なぜあのときそう言ってくれなかったのですか?」
聖者は微笑みながら言った。
おまえには用意ができていなかった。だから、一定の準備が必要だったのだ。その試練を通過するなかで、治療薬がもたらされたというわけだ」

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