まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

大正の近代和風建築旧安田楠雄邸を訪れました

2009-07-23 20:15:11 | 建築まち巡礼東京 Tokyo

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旧安田楠雄邸は大正8年竣工の木造2階建て近代和風建築です。親切な「建物応援団」の方の案内で昼休みに見学してきました。

全体的な雰囲気は写真でなかなか伝わりませんが、間口が狭く奥に深い雁行配置が特徴的です。玄関側(東)と奥の蔵側(西)の両面接道ということもあり中央部の座敷に向かって両側から格式の等高線が高くなってきます。中央部1階の残月の間、2階の客間が等高線の最高部となり、そこからの眺めに対応して南庭がつくられているようです。

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デザイン、材料など見るべきものが多いのですが、私はとくに台所(上左写真)の斬新さに驚きました。昭和の初期にお嫁さん(最後の御当主安田幸子さん)が来たのを期に土間式だったものを当時の最新式キッチンの「鈴木式高等炊事台」に改装したものです。ただしトップライトは竣工時のものです。トップライトは明治時代から室内での高照度を必要とした写場(写真館)で多く用いられましたが、ここでは「近代的な明るい台所」をお嫁さんのためにつくったことと思われます。上右写真はガラスの丸棒の食器棚です。なかなかモダンです。建築におけるガラスは意外にも手吹きの時代が20世紀初めまで続いたのですが当然これも手吹きの製法だそうです。

 

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安田邸は千駄木の団子坂上を北に入る細い道(地元で言う保健所どおり)に面しています。「細い道」とかきましたが、10年ぶりに訪れてみると、歩道も整備され地域センターも出来ていて、すっかり表情を一変していました。沿道の建築も変わってしまったようにも見えましたが上左写真のようなスパニッシュな雰囲気の住宅など以前と変わらぬものも多いようでした。須藤邸の屋敷構えも変わっていません。上右のようなちょっと野心的な造形もあります。なかなか良いと思いました。

以前団子坂上に事務所があったときには昼休みにこの道をよく通りました。また団子坂上を保健所どおりと反対の南に行くみちは藪下通りと呼ばれています。もう30数年前になりますが大学から根津神社を抜け車の来ない静かな藪下通りを通って鴎外図書館に通っていたことを思い出します。

 

 

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高谷時彦記 Tokihiko Takatani


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