北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

こちらは手薄 あちらは手抜き ~原子力防災訓練~

2016-11-20 | 志賀原発
   

今日は志賀原発の防災訓練。
石川県平和運動センターと社民党県連合、そして社民党議員団は今年も監視行動を実施。
私は志賀町のオフサイトセンターと能越道県境PAを担当する。

例年、各訓練項目、訓練箇所に対応して、80人以上の参加態勢で調査班を編成し、訓練をチェックしているが、今年は構成団体に様々な行事が重なっており、残念ながら例年のような対応はできなかった。

しかし、それ以上に訓練内容も省略が多く、あえて見に行くほどでない箇所も増える。また住民参加の避難訓練も規模が年々縮小している。さらにヨウ素剤の配布訓練は今年も実施しないなど、訓練の手抜きも随所で目につく。

志賀原発が停止して5年8カ月。
原発直下の活断層問題があり、再稼働の目途は全く立っていない(もちろん、私たちは廃炉だと思っている)。
仮に活断層問題がなくとも、新規制基準適合に向けた工事が来年度も行われるため、来年度も再稼働ナシはすでに確定している。
止まったままということで住民の危機意識は確実に薄れている。
避難訓練への参加意欲も低下していることは容易に想像できる。
が、実は止まったままの原発でも原子炉の中には核燃料がある。
そしてその下には活断層がある。
残念ながら危機は全然去っていないのだ。

住民の危機意識低下の一因は行政にもある。
今回の事故想定も稼働中の原発の過酷事故である。当面、再稼働するはずがない原発が運転中に事故を起こしたらって想定しても、全くリアリティがない。停止中の原発による過酷事故の想定こそまずやるべきだ。

   

オフサイトセンター内。
去年は8時に地震発生。
今年は6時に発生との想定。
実際に訓練が動き出すのはどちらも8時からだが、先に地震が起きると想定したほうが、早い展開ができる。要するに終了時間を早められるのだ。

   

オフサイトセンター内の訓練については一昨年からブラインド訓練(訓練参加者に事前にシナリオを伝えない訓練)がかなり取り入れられている。訓練参加者はそれなりに緊張感をもって臨んでいる。
以前の「台本を読む学芸会」的な訓練とはかなり雰囲気が違ってきている。
しかし、オフサイトセンター外の住民の動きとの連動がなければ「アドリブで進行する学芸会」の域をでない。

   

今回の訓練の中の数少ない注目点の一つがこれ。
私もオフサイトセンターを10時に出て、能越県境PAに向かう。

   

まず驚いたのが北電社員の多さ。
自動車のスクリーニングや除染を担当する。

   

今回は避難住民を乗せたバス4台、自家用車4台が通るだけ。
それでも住民のスクリーニングも行うので一台当たり到着してから出発できるまでに15分ほどかかる。
今回は試験的に能越道をスクリーニングポイントとしたということで、車の水の除染設備のなければ、住民のスクリーニングの班編成も3班と少ないし、被ばくした住民のシャワー設備もない。

試験的な実施なんて言っても、いつ過酷事故が起こるかわからないじゃないか!なんてここで声を荒げるつもりはない。
それよりも、そもそもこの県境PAをスクリーニングポイントするには無理があるように思える。
一つは作民のスクリーニングや除染をすべて屋外でやるしかない場所だからだ。
規制庁のマニュアルでは原則は屋内。例外がるとしても、ここは冬季かなり強い風が吹き付ける場所だ。
さらにPAのスペースが十分でない。
今日は訓練なので半分のスペースしか使ってないが、全部使ったとしても、通過する車が渋滞を起こすことは必至。
最大で何台通過することを想定するのか、そのための人と機材を確保できるのか。
県は具体的な数字を示すべきだ。

   

いずれにしても5年8カ月、全く発電していない原発のために、そしてこれからもいつ発電するかそのめども立たない原発のために国や県、市町、自衛隊や海上保安庁など270もの機関が、何カ月も前から準備を重ね、今日の訓練を実施するという膨大な無駄をそろそろ常識に立ち返って冷静に判断すべきではないのか。
以下、今日平和運動センター、社民党県連合、社民党自治体議員団名で出した抗議声明である。ご一読いただきたい。
なお、今日実施した住民アンケートや各調査行動のまとめは後日発表したい。

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抗議声明

1.再稼働を想定した訓練実施に抗議する
本日午前6時から志賀原発の過酷事故を想定した原子力防災訓練が実施された。志賀原発1、2号機が停止して約5年8か月、この間に実施された5回の訓練はいずれも稼働中の志賀原発の過酷事故を想定したものである。再稼働を前提とした訓練はやめよと繰り返し要請してきたにもかかわらず、またもや同様の訓練が実施されたことに対して私たちは強く抗議し、国や県、北陸電力に対し、原子力災害への対応を抜本的に転換するよう要求する。

2.再稼働を前提とした訓練の問題点
(1)許されない再稼働への「地ならし」
志賀原発直下の断層について、有識者会合は全会一致で活断層の可能性は否定できないとする報告書をまとめた。しかしながら北陸電力は新規制基準の適合性審査の申請を取り下げることなく、再稼働の道を模索している。こうした中、県が繰り返し再稼働前提の訓練を実施することは、県が北陸電力の再稼働路線を容認、あるいは期待しているかのようなメッセージを県民に送ることとなる。「敷地内断層の問題の決着が最優先」という谷本知事のこの間の発言とも矛盾するものである。

(2)向き合うべきは停止中の原発の危険性
志賀原発は来年度も稼働しないことがすでに確定している。周辺住民の間では、停止しているのでとりあえず安心との誤解が広まり、訓練参加者は年々減少し、参加者の緊張感も低下している。先般の雨水大量流入、地絡・漏電事故は、停止期間の長期化によって、原発に向き合う緊張感が現場から薄れつつあることを浮き彫りにした。しかし、原発は停止中であっても核燃料が存在する限り「過酷事故」も起こりうる危険な施設である。原発再稼働という県民にとってリアリティのない事態を想定した訓練ではなく、県民が日々直面している原発の危険にこそ向き合うべきである。

3.最優先の「防災」対策は活断層上にある核燃料の移動
   核燃料が原子炉内、あるいは燃料プール内に保管されている限り、運転中であろうと停止中であろうと、私たちは事故に備えなければならない。しかし原子力災害は、地震災害や台風災害など自然災害と異なり人災である。有識者による活断層評価がまとめられた今、北陸電力や国、自治体に求められる最優先の「防災」対策は、災害の発生を未然に防止する発生源対策、つまり活断層上から使用済み核燃料や新燃料を撤去することである。

4.またもや「実効性なし」
   私たちは今回の訓練も含め、過去の過酷事故を想定した訓練に対して毎回調査行動を実施してきた。これらの訓練を一言で評価するならば「フクシマの教訓を全く踏まえない訓練」と言わざるをえない。
以下、今回の訓練の問題点を指摘する。
(1) 避難行動要支援者の切り捨て
今回の訓練の特徴の一つは、在宅の避難行動要援護者の屋内退避施設への退避訓練の拡大である。しかし、実態は数人の元気な模擬要援護者によるスムーズな避難訓練である。絵に描いた餅を何枚重ねようと実効性はない。このままでは事故時には真っ先に避難行動要支援者は見捨てられていくこと必至である。30キロ圏に暮らす要援護者約1万2千人を限られた時間内で移動させために必要なマンパワーや福祉車両、車椅子などの台数、各施設の収容可能人数、施設内で生活の維持するための人の配置と設備の整備状況、さらにはその後の30キロ圏外への移動手段などについての現状と課題こそまず明らかにすべきである。
(2) 課題を隠す小規模な訓練
今回の訓練では、住民参加1000人とされているが、その多くは自宅退避訓練に参加を見込んだ住民と思われ、避難訓練に参加した住民は200人に満たないのではないか。
しかし今回想定された風向きに基づく避難区域には数万人の住民が暮らしている。住民の参加人数が二桁増えると避難指示の不徹底、避難バス確保の遅れ、自家用車移動による混乱、スクリーニングポイントでの渋滞、ヨウ素剤配布時の混乱など全く違った問題が発生する。一時滞在者も数千人規模を想定しなければならない。2年前の国主催の防災訓練に対して私たちは、計画は破たんし現場は大混乱に陥ることを指摘した。その後、新たな対策として車両簡易スクリーニングと代表者のみのスクリーニング、つまり手抜き方針が示された。それ自体問題であるが、その検証すら行わない手抜きの訓練が繰り返されている。
(3) 住民不在の訓練
住民の動きと連動しないブラインド訓練や放射線モニタリング、現実から二桁以上少ない避難住民数によるスクリーニングや除染。このような住民不在の訓練に実効性はない。特にヨウ素剤のスムーズな配布と服用支持のタイミングは原子力防災の重要なポイントであるが今回も訓練項目に盛り込まれなかった。フクシマの教訓を踏まえない「安全神話づくり」の訓練であり、このままでは多くの新たな被ばく者が生まれると断言せざるをえない。

5.今こそ常識に立ち返れ
電気を生み出す一手段に過ぎない原発、しかも今後、稼働する可能性はほとんどないと思われる志賀原発のために多くの県民が命や暮らしを脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように実効性のない訓練を繰り返していることに対し、すべての原子力防災関係者に常識に立ち返ることを強く求めたい。避難させるべきは住民ではなく活断層上にある核燃料である。北陸電力には、今こそ志賀原発の廃炉を決断し、脱原発電力会社として先頭を走るよう求めたい。

2016年11月20日
                          
石川県平和運動センター
                          社民党石川県連合
                          社民党自治体議員団




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