赤ちゃん、子供のアトピーをスキンケアと乳酸菌で治療、小児科・皮膚科、西焼津こどもクリニック(静岡県焼津市)

西焼津こどもクリニックの林隆博医師(小児科・皮膚科)が乳酸菌でアトピー性皮膚炎を予防・治療する方法で特許を取得しました。

妊娠中にお母さんが生きた乳酸菌を飲むと胎盤を通じて赤ちゃんの免疫力を高める

2010年07月25日 | 健康
 原著は乳酸桿菌(LGG)を使ってマウスの母親から胎児への免疫成熟への影響を調べたドイツ、ベルリン、マールブルグ大学での実験; Clin Exp Allergy. 2007 Mar;37(3):348-57.:Blümer N, et al: Perinatal maternal application of Lactobacillus rhamnosus GG suppresses allergic airway inflammation in mouse offspring. であります。

 母親がプロバイオティクスを飲むことは生まれてくる子供の免疫成熟に良い影響を与え、アレルギーの発病から守る効果が有ることが臨床的に指摘されています。そこで動物実験で母親が摂取したプロバイオティクスが子どものアレルギー発病阻止に与える影響を調べることにしました。
 メスのマウスに妊娠前+妊娠中+授乳中、あるいは妊娠前と妊娠中のみ乳酸桿菌を経口投与しました。胎盤中のサイトカインの発現状況が分析されました。生まれた子どもたちを卵の抗原(オボアルブミン:OVA)で感作した後にOVAのエアゾールで抗原吸入試験を実施しました。喘息症状発現の有無は気管支肺胞洗浄液分析、肺の組織学検査、肺機能検査で確認されました。脾臓の単細胞からのサイトカイン産生能が in vitro の検査で測定されました。
 腸管への乳酸桿菌の定着はマウスの母親だけに認められて子どもには認められませんでした。TNF-alpha, IFN-gamma, IL-5 およびIL-10 の産生低下が妊娠前+妊娠中+授乳中に乳酸桿菌投与を受けた母親から生まれた子マウスに認められました。しかしながらIL-13とIL-4には変化がありませんでした。そしてさらに、プロバイオティクスの投与を受けた母親から産まれた子マウスは、投与を受けなかった母親の子マウスに比べると、気道と気管支周囲の炎症所見、杯細胞の過形成所見が有意に減少して観察されました。それに対してメタコリン(非特異的刺激)に対する気道過敏性は影響を受けていませんでした。妊娠期間中に乳酸桿菌投与を受けた母親では胎盤中のTNF-alpha上昇だけが有意に観察されました。
 今回の実験では胎児期に母親が乳酸桿菌(LGG)投与を受けた場合に、その子どもでは実験的に引き起こした喘息症状が緩和され、この免疫的な影響は、少なくとも一部は胎盤を通過して、おそらくは炎症をコントロール(誘発)する細胞のシグナルによって引き起こされていると考えられます。

 さて、また難解な動物実験データが提示されましたが、この実験のポイントは、母マウスに投与した乳酸桿菌は子マウスには伝搬していないにも関わらず、子マウスの実験的な喘息誘発に阻止的に働いたという点です。この実験結果は小生が提示している《周産期環境衛生仮説》の骨子である《母親から子どもへの腸内細菌伝搬が阻害されたことが子どものアレルギー増加原因》という仮説に対抗する新しい学説を提案しているからです。
 乳酸菌不足はただ単に新生児期の腸内環境として子どもが自分で免疫を成熟させることに悪影響を与えるだけではなく、母親の胎内にいるときから既に胎盤を通じて胎児の免疫調節に関与しているという学説が生まれることになります。このことは、北欧の多くの実験が主張している妊娠末期からの母親へのプロバイオティクス投与では遅い可能性があり、妊娠がわかった時点あるいは妊娠を準備する時点で母親がプロバイオティクスを飲み始める方が、より確実に子どものアレルギーを防ぐ効果に結びつく可能性が有ると考えられます。

 小生が提言している《母親は出産前1ヶ月に生きた乳酸菌粉末を飲みましょう》ではなく、《お母さんは未来の子どものために、妊娠がわかった時点から、あるいはお母さんになる準備として妊娠前から、生きた乳酸菌粉末を飲みましょう》という提言が将来的にはより現実的な《子どものアレルギー撲滅キャンペーン》となるのかも知れません。

赤ちゃんの肌のトラブル;アトピー・アレルギーの原因は乳酸菌不足

2010年07月19日 | 健康
今までの記事で既にお解りの通り、赤ちゃんと子どものアトピー・アレルギーが近年増加している一番の原因は赤ちゃんの腸内で共益性乳酸菌が減っていることであります。このことは私が一人で提唱しているのではなく、世界の小児・新生児アレルギー専門家が認めていることです。

私たち人類の腸に棲む乳酸菌は、遺伝的に決まった部分と環境から受け継ぐ部分の両方があります。世界の医師たちが主張しているのは、環境因子として赤ちゃんが人類に特有の乳酸菌叢を母親から受け継がないで育っていることが、アレルギー・アトピーの発病原因だということです。

アトピーアレルギーの発病原因である乳酸菌の不足を補うために、妊婦さんと乳児には乳酸菌の投与が不可欠ですが、乳酸菌なら何でも良いわけではありません。
(1)何よりも赤ちゃんに有用な菌でなければなりません。生きたビフィズス菌と乳酸桿菌が赤ちゃんには一番有効です。
(2)赤ちゃんの腸内でアレルギー性炎症を防ぐには生きた乳酸菌でなければ効果は現れません。死んだ菌をいくら飲んでも無駄なことです。このことは医学実験で証明されています。
(3)生きたままで腸内まで届いて最大の効果を発揮する菌はブレーベ菌です。
(4)アシドフィルス菌が腸内で作るビオチンは美肌効果が大きいビタミンで、美肌ビタミンとも呼ばれています。
(5)ビフィズス菌を育てるオリゴ糖が赤ちゃんとアトピー児の腸内環境を正しく整えることがわかっています。

 以上の根拠から現時点では《ベストトリム乳酸菌》が赤ちゃんと子どものアトピーに最適の乳酸菌だと私は考えています。

赤ちゃん・子どものアトピ-・アレルギーの原因は腸内の共益性乳酸菌不足で根本治療が可能です

2010年07月18日 | 健康
 アトピー・アレルギーが赤ちゃんと子どもたちで増加したのは1950年頃からで、それ以前は人口の3%程度と当時の小児科医学の中では稀な病気でした。なぜこのようにアトピーとアレルギーが子どもたちの間で急激に増加したのかを考えることが、赤ちゃん・子どものアトピーを原因から治療して完治させる原動力となります。1998年に私が世界で最初に提唱して特許を取得した《腸内細菌不足》こそがアトピーとアレルギーの本当の原因だったのです。

 人類の腸内には約百兆個の微生物が棲息していますが、その一部は細菌培養で特定できて、残りの多数はいまだに培養特定が出来ていません。この事実が腸内環境を病気と結びつける上での障害となって、混乱とガセネタの素になっています。医学文献から検索する限り、1996年から1998年に私が西焼津こどもクリニックで行った共益性乳酸菌(プロバイオティクス)とアレルギーについての人体での大規模な実験が世界最初の実験でした。この特許の結果、世界の目がアトピーと乳酸菌の関係に向けられて、2001年のLancetでのプラセボ対照試験の結果、子どものアトピーとアレルギーは共益性乳酸菌の投与で予防・治療が可能だと科学的に証明されたのです。

 最近になって過去10年間でアトピーとアレルギーの医学研究が大幅に進歩しました。アトピー・アレルギーはTh2/Th1細胞を中心とした白血球の一種であるTリンパ球の機能異常であることが確認されると併行して、このT細胞が機能異常を起こすのは、腸内のリンパ組織であるパイエル版での免疫寛容状態コントロール機構の異常な発達のためだと判明したのです。

 動物の腸は外部から体内に侵入しようとするウイルスや病原性の異物を排除しながら、その一方で身体に必要な栄養源は積極的に吸収するという、2つの相反する仕事を24時間、同時に行わなければなりません。このメカニズムに共益性乳酸菌が不可欠な要素であることが、無菌飼育されたマウスでは食べ物に免疫が反応してしまう事、それらの動物に共益性乳酸菌を投与すると食べ物に免疫が反応しない寛容状態が得られる等から確認されてきました。最近ではこのメカニズムがさらに細かく実験的に確認されて来ています。

 動物の腸管免疫を調節しているのはパイエル板と呼ばれる腸管のリンパ組織です。パイエル板で免疫の調節が行われるメカニズムを簡単に模式化したのが下の図です。



 この図で示したように、共益性乳酸菌(プロバイオティクス)はパイエル板のM細胞に菌体の一部および産生物質を供与します。M細胞はそれらを分析して粘膜内のマクロファージと樹状細胞に情報として供与します。樹状細胞は情報に基づきT細胞の分化を促進・調節します。マクロファージはT細胞機能を強化して、抗アレルギー作用のあるインターフェロンγ、インターロイキン4、インターロイキン5を誘導します。これらの過程の結果動物の腸内では、インターロイキン10、インターフェロンγ、TGF-βの作用が増強されて、アレルギーを抑制するつまり食物を受け入れる方向に免疫反応が向かうのです。

 この機能に異常があると、体内でTh2型のアレルギー反応を起こすリンパ球が増える結果となり、動物はアレルギー性炎症を起こす体質に向かって発育してゆくのです。総括すれば、赤ちゃん・子どもの腸で共益性乳酸菌等のいわゆる善玉菌が減少すると、アトピー・アレルギーは腸から全身へと広がる炎症反応として発症するという、アトピー性皮膚炎発病原因のメカニズムが見えてくるのです。

 このような発病メカニズムから、妊娠後期の母親および赤ちゃんと子どもにベストトリム乳酸菌乾燥粉末を与えることは、T細胞異常を修正するアレルギーの根本的な原因治療として大いに役立つことが理解できます。

 小生が開発したベストトリム乳酸菌乾燥粉末が、日本中、世界中からアトピー・アレルギーを撲滅するために人類に貢献できることを心から願っています。 

妊婦と赤ちゃんへのプロバイオティクス投与が、子どものアトピー・アレルギー治療に有効な理由

2010年07月17日 | 健康
 医学論文から赤ちゃんのアトピー・アレルギーの予防に乳酸菌乾燥粉末が有効であることを伝えてきました。今回は少し解りやすく、なぜ妊婦と乳児への乳酸菌乾燥粉末投与が、子どものアトピー・アレルギーの予防と治療に役立つのかを解説いたします。
 私が提唱している《周産期環境衛生仮説》の概要は、出産と育児環境の衛生操作の普及により新生児の感染症死亡率が劇的に低下した反面、母親から赤ちゃんへの共益性腸内細菌の伝搬が阻害され、これが先進諸国におけるアトピー・アレルギー増加の一因であるというものです。
 この仮説に従って1996年以来、西焼津こどもクリニック(静岡県)では乳児のアトピ-治療に乳酸菌を応用してきました。その結果は素晴らしいもので、現在では西焼津こどもクリニックでは、赤ちゃんと幼児のアトピ-・アレルギーは100%近くステロイド無しまで完治させることが出来るようになりました。わたしはアトピーで困っている人を苦しい症状や痒みから救うために、この技術を公開して日本中から子どものアトピーを撲滅する助けとなることを願っています。

 赤ちゃんのアトピー発病のメカニズムは次の図のように考えられています。



 すなわち、赤ちゃんは本来Th2細胞が優位で生まれてきますので、①清潔すぎる養育環境では乳酸菌などの共益性の腸内細菌が不足してTh2細胞優位のまま育っていまい、その結果として赤ちゃんはアトピー・アレルギーを発病します。②逆に病原性の高い細菌・ウイルス・真菌等に接触すると、感染症を起こし、その結果Th1細胞が異常に高いレベルとなり、自己免疫性炎症を起こします。この炎症がさらにTh2細胞の高い状態を作り出して、結果的にはやはり赤ちゃんはアトピ-・アレルギーを発病してしまいます。③このような状況を予防して治療に結びつける方法は、乳児期にビフィズス菌、アシドフィルス菌など共益性の乳酸菌を投与することで、腸管免疫を正常な発達に導きアトピー性皮膚炎を発病阻止できるのです。

 多くの医学論文で証明されているのは、アトピーアレルギーの心配な人、すなわち①両親・兄弟の1人以上いずれかにアトピー・アレルギー体質がある赤ちゃん、②母親が妊娠中に鼻炎などのアレルギー症状を持っていた子ども、では妊婦(妊娠35周以降)と赤ちゃんに共益性乳酸菌乾燥粉末を投与するとアトピーアレルギーの発病率が半分以下に低下したというものです。

 この場合に大切なことは、乳酸菌なら何でも良いのではないと言うことです。まず思いつくのがヨーグルトや乳酸菌飲料ですが、これは治療と予防には役立ちません。アトピーに有効な乳酸菌の数は1日に500億個以上が必要で、ヨーグルトですと1日に600g程度、乳酸菌飲料ですと毎日1L以上を飲み続けなければなりません。これは赤ちゃんには物理的に不可能で、もし仮に実行したら、まちがいなく牛乳アレルギーを起こしてしまいます。牛乳中のリンと蛋白質浸透圧過剰が腎臓と骨の発育を傷害することも小児科医学的には目に見えています。

 ですから、牛乳を使わないで培養した純粋な乳酸菌乾燥粉末が必要なのです。ところがビフィズス菌なら何でも良いわけではありません。ビフィズス菌にも多種類有って、生きて腸まで届いてアトピーとアレルギーの予防と治療に役立つ乳酸菌は数種類しかなくて、悪い菌を飲むと逆にアレルギーが悪化することも解っています。ビフィズス菌と同時にアシドフィルス菌を投与することがビオチンの供給を通じてアトピーの症状改善に役立ちます。アシドフィルス菌単独では、ごく稀ですが感染発病の報告もあるので、アシドフィルス菌は過剰になると赤ちゃんには危険であります。

 手前味噌ではありますが、今回発売されたベストトリム乳酸菌はこの全ての条件をクリアーしている本邦唯一の理想的製剤です。医学的に最も強い抗アレルギー効果を持つブレーベ菌に赤ちゃんの腸に多いビフィズス菌であるインファンティス菌とロンガム菌をミックスして、ビフィズス菌の10分の1量のアシドフィルス菌(ビオチンを産生する)を使っています。他の製品がベストトリムに比べるにも値しないくらい劣っているのは、この製品は特許を持っているので真似が出来ないためです。他の製品が過剰な広告に頼っているのは私の持つ特許に対抗できない悲しい定めと感じます。特許の乳酸菌ベストトリムが赤ちゃんのアトピー治療に役立つことを期待しています。

 くれぐれも変な乳酸菌製剤には手を出さないことが、大切な赤ちゃんを傷害させないために何より肝心な事です。

腸内細菌が産生する多糖類がTh1/Th2バランスを正常化し、赤ちゃんのアトピー・アレルギーを予防する

2010年07月10日 | 健康
乳酸菌乾燥粉末(プロバイオティクス)によるアトピー、アレルギーの治療と予防;世界の最新医学報告(1)
 原典は、Per Brandtzaeg, Erika Isolauri, Susan L. Prescott 編、”Microbial-Host Interaction: Tolerance Versus Allergy”2008年11月シドニーで行われた第64回《Nestle Nutrition Institute Workshop Series: Pediatric Program》での国際医学会から、乳酸菌(共益性乳酸菌乾燥粉末:プロバイオティクス)によるアトピー、アレルギーの治療と予防に関する世界最新の医学報告を集めた書籍である。
 同書籍のダイジェスト版で今回は第1編《共生のシナリオ:腸内細菌が産生する多糖類が健康に果たす役割》について解説する。

《要旨》ヒトの腸内にはおよそ100兆個の微生物が棲息しており、そのうち或るものは有益であり、或るものは病原性を秘めている。腸内細菌 Bacteroides fragilitis が産生する双性イオンの多糖類は(host)ヒトの免疫機能を発達させる共生菌が持つ原型的な分子構造だと見なされている。腸内細菌 Bacteroides fragilitis が産生する双性イオンの多糖類(PSA)にはCD4+細胞のTh1/Th2バランスの正常化に寄与し、無菌的に飼育されたマウスの脾臓と胸腺に見られる組織学的欠陥を正常化させる作用がある。PSAは新生児の免疫機能をToll-likeレセプター2リガンド(特定のタンパク質や細胞膜の各種受容体などと特異的に結合する物質)発現の方向に刺激する事により、T細胞の活性化に必要な免疫機能内の相互作用を進展させる。PSAは病原性を持つ腸内細菌 Hericobacter hepaticus が引き起こす腸炎から動物体を守っている。Bacteroides fragilitis を除外された実験動物ではPSAが発現せず、Hericobacter hepaticus が病原性を発揮して腸管組織内で炎症誘発生のサイトカイン産生が高まる。PSA精製物質を実験動物に投与すると、腸管免疫細胞から放出される炎症誘発生のサイトカインであるインターロイキン-17の産生が抑制される。PSAはインターロイキン-10産生CD4+T細胞への機能的な必要条件を通して動物体を炎症性疾患から守っている。総括すると腸内細菌の微生物叢からの多糖類はヒトの病気と健康の決定的なバランスに関与していると言える。実験的実証を集約するならば、この考え方は免疫が担当する分野・範囲の重要な一面を反映していると受け入れられる。

 さて、非常に難しい専門的な内容でありますが、要するにこの報告の言いたいことは、新生児の腸内が無菌的であると免疫発達が阻害され、アトピーやアレルギーなどの炎症性疾患を発病する。アトピーやアレルギーの予防と治療に共益性腸内細菌から出る多糖類が必要であると言うことであります。この論旨は小生が1998年に提唱した《周産期環境衛生仮説》すなわち、母親から新生児への腸内細菌垂直伝搬が衛生的な育児操作で阻害されたことが、近年のアトピーやアレルギーの増加を引き起こした根本的な原因であり、乳児期と離乳食期に赤ちゃんに乳酸菌プロバイオティクスを乾燥粉末で投与することが、赤ちゃんや子どものアトピーとアレルギーの予防と治療に有効であるという論説を支持するものであります。

2010年6月に発売されたベストトリム乳酸菌が、日本中から赤ちゃんと子どものアトピーとアレルギーを撲滅する一里塚となることを心から願っている次第であります。

離乳期の共益性乳酸菌(Probiotics)投与がアトピーの発病率を低減する(3)

2010年07月04日 | 健康
原著はWest G.E.,et.al: Probiotics during weaning reduce the incidence of eczema. Pediatr Allergy Immunol 2009: 20: 430-437: Umea University, Swedenのグループによる乳酸桿菌を用いたプラセボ二重盲験ランダム試験の報告である。今回は、実験の概要と結果について述べられた部分をダイジェスト版で紹介します。

本実験系は離乳期に投与された乳酸菌とアレルギーと免疫の発達を調べるためにプラセボ対照・無作為・二重盲験試験で2000年8月から2003年11月の期間に、2500g以上の経膣分娩正期産児を対象に医学倫理規定に沿って実施された。参加した両親は毎日の母乳の回数と皮膚と呼吸器の状態を記録し、月に一度の看護士によるアレルギー症状等に関する訪問インタビューが行われた。乳児には乳酸桿菌LF19を1億個含むシリアルが月齢4ヶ月から13ヶ月まで与えられ、対照群と非対称群は結果解析の終了まで両親および実験実施者には秘匿にされた。

月齢5ヶ月半と13ヶ月で採血を行い、血清中の総IgEと特異IgEのレベル、末梢血単核球(PBMCs)中のインターロイキン4(IL4)mRNA発現に対するインターフェロンγ(IFN- γ)の比率をポリクローナルなT細胞刺激に付随して測定した。

実験の対象者は180名で、帝王切開の1名を除外して、乳酸桿菌投与89名、非投与90名のうちそれぞれ84名と87名が実験を完結した。月齢13ヶ月でのアトピー性皮膚炎の罹患数は乳酸菌投与群では84名中9名、(11%、95%信頼区間 4-17%)プラセボ群では87名中19名(22%、95%信頼区間 13-31%)と有意な差が見られた。(離乳期の乳酸菌投与がアトピー性皮膚炎の発病率を半分に低減したともいえる;訳注)

ハイリスク児でのアトピー発病率は乳酸菌投与群で11%(95%信頼区間 2-19%)、プラセボ投与群で26%(95%信頼区間 14-39%)で危険率=0.038と強い有意差を示した。(離乳期の乳酸菌投与でアトピー性皮膚炎発病ハイリスクグループでは、実に60%もの発病阻止効果が得られたことになる;訳注)

両グループ間で月齢13ヶ月時の血液中の総IgEレベルには有意差が見られなかったが、ポリクローナルなT細胞刺激に付随して測定した、末梢血単核球(PBMCs)中のインターロイキン4(IL4)mRNA発現に対するインターフェロンγ(IFN- γ)の比率は共益性乳酸菌投与群で危険率=0.04と有意に高かった。(この比率はTh1タイプとTh2タイプの免疫応答バランスの指標の代表である。)

前回に続き、離乳食中に乳酸菌を添加することで、アトピー性皮膚炎の発病を全体で50%、ハイリスクグループでは60%も低減する効果があり、Th2/Th1バランスも改善することが実証されたことになるが、この実験も小生の1998年に提出した《アトピー性皮膚炎を防ぐ保健食品》の特許での臨床実験報告を支持するものであると言えます。

離乳期の共益性乳酸菌(Probiotics)投与がアトピーの発病率を低減する(2)

2010年06月05日 | 健康
原著はWest G.E.,et.al: Probiotics during weaning reduce the incidence of eczema. Pediatr Allergy Immunol 2009: 20: 430-437: Umea University, Swedenのグループによる乳酸桿菌を用いたプラセボ二重盲験ランダム試験の報告である。今回は、実験の目的・背景と実験系の概要について述べられた部分を紹介します。

 乳幼児期に微生物群と接触する機会が減っていることが、先進諸国でのアレルギー疾患増加と関連しているらしいとの意見が提唱されてきた。腸管の細菌叢は免疫系への主要な刺激要素で免疫反応をTh1方向に誘導する作用があることが示唆されている。乳幼児期には腸管細菌叢の大きな変化が起こり、出産と離乳食期は栄養方法と生理学的な状況に根底的な変化が起きるため、この時期が決定的な分岐点となる。母乳栄養はビフィズス菌と乳酸桿菌の成育を促進するのに対し、人工栄養児ではもっと複雑な細菌叢を伴う。

 腸内細菌叢の変化はアレルギー性疾患の兆候に先立って起こることが科学的に証明されてきている。特定の微生物を接種された動物実験から、腸内細菌叢は腸管のみならず全身の免疫反応の発達に必要不可欠であることが示されている。この事実が主としてビフィズス菌と乳酸桿菌の共益性乳酸菌(Probiotics)を、乳幼児の免疫を介する疾患の治療と予防に実用する計画を後押ししている。共益性乳酸菌(Probiotics)がIgE関連のアトピーを予防するとの医学報告がある一方で、否定的な意見もある。

 共益性乳酸菌(Probiotics)はアレルギーの予防には打って付けの手段である可能性がある。しかしながら、共益性乳酸菌(Probiotics)の免疫刺激効果については、より一層進歩的な無作為統制による臨床試験が必要とされる。そこで、我々は健康満期産児の離乳期に乳酸桿菌paracaseiF19株(LF19)を投与して、アトピーの発病率を調べた。さらに我々は、血清中の総IgEと特異IgEのレベル、末梢血単核球(PBMCs)中のインターロイキン4(IL4)mRNA発現に対するインターフェロンγ(IFN-γ)の比率をポリクローナルなT細胞刺激に付随して測定した。この比率はTh1タイプとTh2タイプの免疫応答バランスの指標の代表である。




離乳期の共益性乳酸菌(Probiotics)投与がアトピーの発病率を低減する(1)

2010年05月09日 | 健康
原著はWest G.E.,et.al: Probiotics during weaning reduce the incidence of eczema. Pediatr Allergy Immunol 2009: 20: 430-437: Umea University, Swedenのグループによる乳酸桿菌を用いたプラセボ二重盲験ランダム試験の報告である。

《要旨》
 乳幼児期における微生物との接触機会の低減が先進工業国でのアレルギー疾患増加に関係していることが示唆されてきている。数々の医学報告でプロバイオティクスの投与がアトピー性皮膚炎の発病予防に効果的であると有望視されている。In vitro の実験系はプロバイオティクスが免疫正常化機能を発揮することを指摘している。

 本研究において我々は乳幼児の離乳期における乳酸桿菌F19の投与がアトピー性皮膚炎の発病率とTH1/Th2バランスに及ぼす効果を評価した。このプラセボ二重盲験ランダム方式のコントロール試験は、生後4ヶ月から13ヶ月までの乳幼児で、乳酸桿菌F19配合の食事を投与した乳幼児群89名と非投与乳幼児群90名で実施された。評価は生後13ヶ月時点でのアトピー性皮膚炎発病率の計測でおこなわれた。ポリクローナル抗原刺激による末梢血T細胞のインターロイキン4-mRNA発現に対するインターフェロンγの比率(IFN-γ/IL-4 mRNA exp)が免疫バランスの指標に用いられた。血清の総IgE量と抗原特異IgE量も同時に測定された。

 生後13ヶ月時点でのプロバイオティクス投与群でのアトピー発病率累積は11%(95%信頼区間、4-17%)、非投与群でのアトピー発病率累積は22%(95%信頼区間、13-31%)で、危険率p<O.O5と有意な結果であった。治療を必要とした被験者の比率は9%(95%信頼区間、6.5-11.5%)であった。生後13ヶ月時点でのIFN-γ/IL-4 mRNA exp比率はプロバイオティクス投与群で非投与群に対して危険率p<O.O5と有意に上昇していた。それに対して、両方のグループ間では血清IgE量には 有意な差は見られなかった。

 総括すると、乳幼児の離乳期における乳酸桿菌f19の投与はアトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患の早期発病徴候に対する有力な予防対策候補であると思われる。プロバイオティクス投与群の非投与群に対するth1 th2バランスの高さは乳酸桿菌F19がT細胞を介した免疫反応に影響力を及ぼしていることを示唆している。

 この研究の結果は、小生が1998年に提出した《アトピー性皮膚炎を防ぐ保健食品》の特許での臨床実験報告、すなわち
【両親あるいは兄弟にアレルギー歴が有る事から将来かなり高い確率でアトピー性皮膚炎を発症すると予想された乳児湿疹を持つ2歳未満の子どもの対象群=この将来40%以上の確率でアトピー性皮膚炎を発病すると予想された子どもの群、に対して本発明のアトピー性皮膚炎を防ぐ食品を、発明の実施の形態のところで述べた方法で毎日与えて観察を続けたところ、半年以上の観察期間で、対象群105中でわずか9名8.6%の子供の皮膚にアトピー性皮膚炎の症状が見られただけで、他の大多数の子供のアトピー性皮膚炎の発病を予防できた。】という結果を強く支持する、プラセボ二重盲験ランダム方式のコントロール試験として国際的に認定されたものと言えるだろう。 

  

アレルギー・アトピーと花粉症

2010年04月24日 | 健康
  私が静岡でアトピー・アレルギーの治療を初めて20年以上になります。静岡はスギ・ヒノキ花粉症などアレルギー病の多い地区でも有ります。アトピーと花粉症などは同じアレルギー病でお互いに深く関係があります。私のクリニックの外来アトピー患者数も、花粉症の悪くなる1月・2月から増加し始め、花粉症の収束する4月5月にはいったん減少傾向があらわれます。アトピー性皮膚炎を長期罹患している患者さんにとって、花粉症の時期はかゆみで夜眠れない、炎症が拡大して浸出液でパジャマがベタベタに汚れるくらいひどい症状があらわれる等の苦しい時期でもあります。花粉症がアトピー性皮膚炎にとって辛いのは、かゆみで掻き壊した皮膚にスギ・ヒノキの花粉が昼間に付着すると、夜間にアレルギー症状が出現して強烈なかゆみを喚起して、さらに皮膚を掻き壊してしまうという悪循環を作るからです。

 子どもと乳幼児の間にアレルギーの発病を予防することは、このような苦しみから子どもたちを未然に守る大切な親の心得だと思います。食事アレルギーとアトピー性皮膚炎・アレルギー鼻炎・花粉症を未然に防ぐ、あるいは根本的に治療するには、抗炎症薬だけに頼らない治療、すなわち日常生活でストレスとアレルゲンを避け、成長と共に自然に治す生活指導がとても大切です。特にストレスは副腎皮質からのステロイドホルモンの分泌を増加させ、免疫力を低下させるので、感染症の合併や抑鬱状態の誘発で、成人のみならず子どもに対しても強いアレルギー悪化要素となります。私のクリニックでの高い治療率は、実はこのような患者さん一人一人にあった日常生活指導を、20年以上の治療経験から適切に行えることにあるのだと自負しています。

 ビフィズス菌・乳酸桿菌(アシドフィルス菌)の投与で子どものアトピー性皮膚炎・食物アレルギー・さらには花粉症の発病を予防的に治療できることが、主として北ヨーロッパの医学会で広く認識されるようになってきています。北ヨーロッパでは、生まれてくる子供の四人に一人がアレルギーを患い、国家的規模での危機と受け止められています。それに対して、数字での検証に躍起になっているアメリカの医学会では、このビフィズス菌・乳酸桿菌の投与には統計的な有意差が少ないことでいまだに否定的な意見も多く見られますが、これこそは《医師であること=患者主体の医療を行うこと》の大切さを忘れて、数学者のやりたい放題に翻弄されている惨めな下請け研究者の姿にしか見えません。

 さて、肝心の花粉症対策ですが、これに関しては、何よりも花粉を避けることが一番大切になります。目は花粉症ゴーグルで保護し、鼻と口はマスクで保護する。皮膚は外出時に露出を避け、帰宅時にすぐシャワーで付着した花粉を洗い流す。そして忘れてはならないのが皮膚を保護するスキンケアの重要性で、花粉の抗原が肌に直接付着しないような皮膚のバリア機能を補助するようなスキンケア剤を毎日使うことが症状の軽減に役に立ちます。





子どもの紫外線対策;第3回

2010年04月16日 | 健康
 これからの季節、子どもたちには太陽の下で思い切り遊ばせようとお考えのお父様、お母様に、以下の警告が発せられています。外出時には紫外線の怖さを思い出して、ぜひ大切なお子さまの皮膚を紫外線から守るようにお願いいたします。

 子供の頃に強い日焼けをした人は、しなかった人に比べて皮膚の前癌症(日光角化症)の有病率が有意に高いことが明らかになっています。また、逆に太陽紫外線を浴びれば四歳頃に発癌する色素性乾皮症患児でも、生まれて一度も直射日光を浴びなければ、七歳になってもソバカス様の小色素斑もなければ、脂漏性角化症(色素性乾皮症では一歳頃に多発する)もみられません。

  つまり、乳幼児期に無駄な日焼けをしなければ、遺伝子DNAの変異も少なく、光老化を著しく遅らせることができるのです。また、太陽紫外線を浴びると約一週間は免疫能が低下します。したがって、保育園や幼稚園の炎天下のプール遊びは、皮膚の光老化を早める大きな誘因であるだけではなく、感染症にかかりやすくするともいえるでしょう。六-九月は特に太陽紫外線(UVB)が大量に降り注ぐので、子供のよりよい健康維持のためには、屋根のあるプールでの水泳教室を提言いたします。特に日焼けで遺伝子DNAに傷が付きやすいスキンタイプの子供では、プール遊びをする時にはTシャツを着用するか、あるいはサンスクリーン剤を塗ることが必要であります。また、プールサイドでは当然のこととしてパラソルの下で、肩からタオルなどを掛けて直射日光を避ける必要があります。夏休みともなると子供たちは家族や友だちと海やプールあるいは山へ出かけ、太陽光をいっぱいに浴びる機会が多くなります。光老化を少しでも遅くするために最も注意すべき点は、真っ赤になって皮膚が膨れ上がるような強い日焼けを避けることであります。

  21世紀に向け、子供の皮膚の健康を守るためには、まずは乳幼児を育てる母親が日焼けの害を知ることが大切です。さらに保育園、幼稚園や小学校などの団体教育の場で教師が太陽紫外線の有害性を理解した上で、子供たちの戸外活動に対して無駄な日焼けをさせないよう指導することが重要であります。幼稚園や小・中学校で毎年実施される運動会では、父兄代表や学校関係者はテントの下で子供たちの競技を見物していますが、これなども太陽紫外線が子供の皮膚に悪影響を与えることを認識していない証拠であるといえます。 (神戸大皮膚科教授 市橋正光 参考文献:平成10年8月29日号 日本医事新報・質疑応答P106~107)




子どもの紫外線対策:第2回

2010年04月11日 | 健康
 日焼けしてからの治療では遅い!
 日焼けしてからローションな どで肌の手入れをすることは、ひりひりとした日焼けの痛みを押さえるなどの効果はあるとされています。しかし、皮膚の老化や皮膚ガンの発症を防ぐなどの長 期的な予防効果は、日焼けしてからのお手入れでは効果が少ないといわれています。

<対策>
 ①紫外線の強い時間帯を避ける。
  紫外線は、時刻別にみると正午前後に最も強くなります。紫外線の強い時間帯を避けて戸外生活を楽しむことを第一に考えて下さい。

 ②日陰 を利用する。
外出したときなどには、日陰を利用するのもよいでしょう。しかし、体に当たる紫外線には、太陽からの直接のものだけではなく、空気中で散乱したものや、地 面や建物から反射したものもあります。直接日光の当たらない日陰であっても紫外線を浴びていることは忘れないようにして下さい。

 ③日傘 を使う、帽子をかぶる。
夏の日中など、日差しの強いときの外出には、日傘の利用も効果的です。最近は紫外線防御機能を高めた日傘もあります。ま た、帽子は直射日光をさえぎってくれます。特に、幅の広いつばのある帽子は、より大きな効果があります。わが国で古くから使用されている麦わら帽子などつ ばの幅が広い帽子は、日差しの強いときの外出時における紫外線防止に非常に効果的です。 ただ、日傘や帽子も、太陽からの直接の紫外線は防げますが、大気 中で散乱している紫外線まで防ぐことはできません。

④衣服で覆う。
 七分袖や襟付きのシャツのように、体を覆う部分の多い衣 服の方が、首や腕、肩を紫外線から守ってくれます。 また、皮膚に到達する紫外線を減らすための衣服としては、しっかりした織目・編目を持つ生地を選ぶこ とです。生地を透かして太陽を見てみれば簡単にわかります。衣服の色は濃い色調のほうが、淡い色や白い色調のものよりも着ている人に反射させる紫外線が少 なくなります。素材としては木綿、およびポリエステル・木綿混紡の生地は、紫外線防止の目的に適しています。

 ⑤サングラスをかける。
  最近、紫外線から眼を守ることにも関心が向けられるようになってきました。サングラスや紫外線カット眼鏡を適切に使用すると、眼へのばく露を90%カット することが出来ます。最近では普通のメガネにも紫外線カットのレンズが多く使われるようになってきています。サングラスを使用する場合は紫外線防止効果の はっきり示されたものを選びましょう。
 しかし、眼に照射される太陽光は正面方向からの光だけではありません。上方、側方、下方、さらには後方か らの光も目を直接、間接に照入射します。 レンズサイズの小さな眼鏡や顔の骨格にあわない眼鏡では、正面以外からの紫外線に対しては十分な防止効果を期待 できません。強い太陽光の下で目を守るためには、ゴーグルタイプとまではいかなくても、顔にフィットした、ある程度の大きさを持つ眼鏡をかけ、帽子もかぶ るとよいでしょう。
 なお、色の濃いサングラスをかけると、眼に入る光の量が少なくなるため瞳孔が普段より大きく開きます。そのため、紫外線カッ トの不十分なレンズでは、かえってたくさんの紫外線が眼の中へ侵入し、危険な場合があります。

⑥日焼け止めクリームを上手に使う。
  日焼け止めクリームは、いつ、何をする時に使用するのかによって選びましょう。日常の洗濯物を干したり買い物をするためならば、それほど数値の高くない日 焼け止めで十分です。日焼け止めクリームとはうたっていなくても日中用の乳液・クリームなどでSPF・PA 表示のあるものも有効です。一方、紫外線の強い季節にかなり長時間外戸外に出る場合(炎天下でのスポーツ、ハイキング、海水浴など)には高い効果を持つも のを、汗をたくさんかいたり、水に入るような場合には耐水性の高いものを使いましょう。


 長期的な健康への悪影響予防のために は、紫外線の浴びすぎを防止することが重要です。日焼け止めクリームは紫外線を浴びることが避けられない時に、防止効果を高めるものですが、太陽に長時間 あたるために使用するのは間違いです。基本的には、春分の日から秋分の日まで、《太陽が北半球に来たら》日焼けを避けさせる生活が大切になります。



こどもの紫外線対策:第1回

2010年04月05日 | 健康
 太陽の日を浴びる時間の短い北欧の国では肌の色の白い人達は夏になると海辺で肌を焼くのが健康の象徴だと長期間信じていました。しかしオーストラリアの日焼けによる皮膚癌の発生率が世界一になり、毎年約400名が死亡し、増加する傾向にあることが分かり事態は逆転して、白い肌の北欧人の憧れだった《褐色の肌=健康的》神話は崩れ去ったのです。

 オーストラリアとニュージーランドで10歳以前にヨーロッパから移住してきた人達に特に皮膚癌発生のリスクが高く、この地区の白人移民に皮膚癌が多発したのは、どうも子供の頃から肌を太陽にさらけ出すライフスタイルに有ったと反省されて、オーストラリアのガン防止協会は、1980年代から全国的な皮膚癌予防キャンペーンとして、スリップ(長袖の上着を着て)、スロップ(日焼け止めクリームを塗り)、スラップ(つばの広い帽子をかぶる)の標語を使用しており、現在では、ラップ(サングラスをかけて)が追加されて有害紫外線対策と教育を徹底しています。

 紫外線は赤道近くで標高の高いところで集中的に増加します。紫外線量の比較データーは手元に有りませんが、地理的には、オーストラリア連邦の首都キャンベラは南緯35.3度で北緯35.6度の東京とほとんど同じ、大都市シドニーは南緯 33.52度で 高知市33.5度とほぼ同じです。ニュージーランドの首都ウェリントンは南緯-41.2度で函館市北緯41.7度、大都市オークランドは南緯37度で北緯37度15分の新潟県中越地方と同じで紫外線量的に日本とオーストラリア・ニュージーランドは同じと考えるべきでしょう。

プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の初期予防(3)

2010年04月02日 | 健康
原著は Ji G.E.: Probiotics in primary prevention of atopic dermatitis : Forum of nutrition 2009; vol.61, pp117-128 で、主として2000年以降に発表された、プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の初期予防に関連する約40編あまりの英文医学論文のレビュー(総説)記事である。全体が2部構成になっていて、前半がヒトでの治験データを収集し、後半が細胞分析手技(in vitro)と動物実験のデーターを収集している。今回はビフィズス菌、アシドフィルス菌等をヒトに使用してアトピー性皮膚炎を予防、あるいは治療する根拠となる Probioticsの免疫調節メカニズムについて、後半の細胞マーカー分析手技と動物実験のデーターに関するレビューから概説する。

腸管のリンパ系組織には、免疫反応の入り口としてはパイエル板と個々のリンパ濾胞が、免疫応答の出口としては粘膜固有層が挙げられる。これらの免疫組織にはB細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージが含まれている。樹状細胞とレギュラーT細胞は、粘膜組織のみならず全身性の免疫反応に置いても、脱感作・体制確立についての決定的な役割を担っていると考えられている。腸管上皮細胞、リンパ系細胞、樹状細胞はバクテリアの菌体やその一部分であるペプチドグリカン、リポ蛋白、リポ多糖類などを、TLR(toll-like receptor)を含むパターンレセプターシステムを駆使して常時監視・認識すると共に、それらと相互に影響を及ぼし合い、先天的および後天的な免疫応答を調節している。
腸管の粘膜層ではプロバイオティクス(善玉菌)と、その一部分であるペプチドグリカン、リポ蛋白、リポ多糖類、菌体の分泌物、細胞壁の一部などが腸管上皮細胞、パイエル板中のM細胞、その下流に位置する樹状細胞およびマクロファージとと相互に連繋を持つことが報告されている。善玉プロバイオティ久菌と腸管上皮細胞の相互連繋は腸管のバリア機能を一層強化すると共に、サイトカインや信号科学物質の放出を含む粘膜免疫細胞の直接的な調節に関与している。(この解説は下図に集約されている)



乳酸桿菌ペントサス株の経口投与では、IL-12産生の活性化によりIFN-γ分泌細胞が誘導される等の知見がある。その一方で、細胞分析系(in vitro)の研究については、先に結論を書いてしまうと、これらの系でのプロバイオティクス善玉菌と樹状細胞間の相互作用は、菌株の種類とTLK細胞、樹状細胞の系統の違いによりマチマチである。この相互作用が極めて重要で決定的な役割を演じているとしても、他種類の菌株が、無数ともいえる複雑な経路を通して免疫系に影響を及ぼしていることが知られており、細胞マーカー分析によるin itroの実験結果が 実際の生体内でのin vivoの観察結果と矛盾することも少なくない。プロバイオティクスの菌株種類、投与量、投与のタイミングと投与経路などによる免疫調節作用の差を理解するためには、より精巧で進歩的なin vitroの実験モデルが開発されることが待たれる。

動物実験においては、さまざまな実験モデルがプロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の抑制メカニズム解明に用いられてきた。動物実験系は細胞分析系(in vitro)の研究よりも有用性が高いと思われる。動物実験系でもプロバイオティクスの投与はTh1細胞のTh2細胞に対する優位性を強化し、レギュラーT細胞の働きを高める結果が得られている。

オボアルブミン(卵白の抗原物質)で経口感作された実験動物に対して、プロバイオティクスを経口投与したときの効果がいくつかの実験で調べられている。これらの実験では、プロバイオティクスの経口投与で、血清中では抗原特異的なIgEとIgG1の産生が抑制され、糞便中では抗原特異的なIgAの分泌が抑制された。さらに、脾臓でのIL-4産生が抑制され、INF-γとIL-10の産生が増強され、皮膚や粘膜に見られたアレルギー性炎症の改善が観察された。

生きたビフィズス菌の使用は、破壊された菌体や熱処理された死菌よりもアレルギー症状を抑制する効果が高い。プロバイオティクスの抗アレルギー効果は、炎症反応抑制の局所的効果から全身的効果にかけて、また炎症反応の最初の部分から引き続く増悪部分にかけて広範囲に出現すると思われる。IL-4の抑制はTh1細胞の強化につながり、IL-10の分泌増強は、レギュラーT細胞による経口的耐性獲得に貢献しているように思われる。さらに、ビフィズス菌による特異的なIgE抑制効果はレギュラーT細胞のIFN-γ産生によって中継されている事を示唆するデータがある。

動物実感系の結果にはまだ結論はないが、ほとんどの報告はプロバイオティクスの使用がアレルギー症状を緩和することを主張している。今までの報告を総括すれば、ヒトの治験においても動物実験においても、局所的・全身的の両方において、プロバイオティクスの経口摂取はアレルギー反応を緩和する方向に作用することが強調され、ヒトにおいてアレルギー発病の予防にプロバイオティクスが利用されることの正当性を証明しているように感じられる。


手前味噌なコメントで恐縮ですが、私が1996年以来追求してきた、ビフィズス菌を利用したアトピー性皮膚炎の乳児期第一次予防手技が、さまざまな方面からその正当性を検証されたのではないだろうかと再確認でき、過去20年の自分の仕事の方向性が正しかった事を、何よりもうれしく思います。生涯このアトピー撲滅の仕事を続けられる自分を幸せだと、運命に感謝しています。


<保湿について:第3回>

2010年03月29日 | 健康
<保湿について:第3回>
 お肌の水分測定は本当かな??良く皮膚の水分量を測定します…とテレビで見ましたね。保湿性を証明するために電気の流れ易さを測っていましたが、この測定機械には、落とし穴(裏技)があります。電気伝導度を上昇する塩分が入っていると良い結果が出てしまうので、水分測定を売り物にするスキンケアは注意が必要です。水分量が多い事を売り文句にしている化粧品も有りますが、以前の記事の通り水分を取り込んだり逃がしたり両方向に効くことの出来る、半油性半保湿性で安全性の高い【エモリエント成分】で肌を保護することがスキンケアの一番の目標です。

近年、セラミドの研究が進み脂質二重層を構成し、水分の蒸散を抑制するとして、アトピー性皮膚炎など乾燥肌に用いられています。セラミドには保湿以外に意外な働きが有ることが分かってきました。「長年にわたり、細胞膜に存在するセラミドとその他のスフィンゴ脂質は単なる脂質膜の構成要素であると思われてきたが、現在ではこの考えが完全に正しいわけではないことが分かってきている。セラミドの生体作用のうち最も魅力的であると思われるのは、酵素群により細胞膜からセラミドが遊離し、これがシグナル伝達物質として作用する機能であろう。セラミドの細胞シグナル伝達物質として、分化、増殖、プログラム細胞死(PCD)、アポトーシス(タイプI PCD)を制御することがよく知られている。この機能のため、セラミドはしばしば「細胞死のメッセンジャー (messengers of cell death)」と呼ばれる。」(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

セラミドには肌の新陳代謝で古くなった角質を剥がし、危ない生体物質を無毒化して外に押し出していると言う別の働きがあるように思えます。どうもここら辺の物質を追って行くとアレルギーとは本来生体を守るべき作用が何かの切っ掛けで自己破壊に転じている気がしてなりません。
アレルギーを起こす白血球Th2細胞も、しばしば一方的に悪玉扱いされていますが、本来生体に必要な免疫機能ですから暴走を起こさせないように治療することが大切だと感じています。

プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の初期予防(2)

2010年03月28日 | 健康
原著は Ji G.E.: Probiotics in primary prevention of atopic dermatitis : Forum of nutrition 2009; vol.61, pp117-128 で、主として2000年以降に発表された、プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の初期予防に関連する約40編あまりの英文医学論文のレビュー(総説)記事である。全体が2部構成になっていて、前半がヒトでの治験データを収集し、後半が細胞分析手技と動物実験のデーターを収集している。今回はこの論文中に掲載されている図版を元に、ビフィズス菌、アシドフィルス菌等をヒトに使用してアトピー性皮膚炎を予防、あるいは治療する根拠となる Probioticsの免疫調節メカニズムについて概説する。



ヒトを含む哺乳類の腸管内には、いわゆる善玉菌として宿主と共存している腸内細菌叢が存在する。これらの細菌類は宿主に与える利益を期待して、 Probioticsとして使用されているが、その免疫調節作用メカニズムが明らかになってきた。
上図に示されたのは、Probioticsが腸管上皮のパイエル板で免疫担当細胞に影響して、アレルギーの発病を阻止・予防する、端的に言えば食物等の外来異物を攻撃標的と認識しないメカニズムに関与するモデルである。

図の中に書き込んだように、Probioticsは、①腸管上皮細胞に接触して細胞内シグナル伝達に影響を与えて、 TGF-β,IL-8,PGE2の分泌を促進する。②さらに腸管上皮の免疫調節機能中心であるパイエル板のM細胞にその生産物質と共に取り込まれ、免疫担当細胞に提示される。③樹上細胞が提示された情報を受け取り、未分化・未成熟のT細胞をレギュラT細胞(Th3,Tr1)へと分化・成熟させる。④同じくマクロファージがM細胞から情報を受け取り、IFN-γ,IL-4,IL-5を調節してTh細胞の機能分化に影響をあたえる。⑤IL-10,TGF- β,IFN-γのシグナル誘導により、T細胞の分化・成熟が正常に発現してアレルギー炎症の発病を抑制すると共に、食物への経口的脱感作を獲得する。

以上が上の図で示された、善玉菌が腸管内でどのように作用しているかを示す免疫システムのモデルである。次に乳児のアトピー性皮膚炎を善玉乳酸桿菌の経口投与で予防するメカニズムを提示する。



新生児は本来がアレルギー反応を誘発するTh2細胞優位で生まれてくる。この状況のまま無菌的・超衛生的に育てられると、Th2細胞優位のアレルギー性体質に育ってしまい、アトピー性皮膚炎を発病する。

従って、生後の微生物類との接触が必要なのだが、病原性のある微生物類と接触して乳児期に感染症を発病すると、Th1細胞の活性が強化されすぎて、結果的にやはりアレルギー性炎症を誘発・悪化させることになる。これはアレルギー炎症が、①極端に強化されたTh1細胞機能、②さらにレギュラーT細胞の機能低下でTh2細胞がTh1細胞以上に増加する、に見られるT細胞の分化・成熟の異常による免疫機能調節障害として位置づけられることと一致している。

乳児期に病原性のない、いわゆる善玉腸内細菌叢と接触した場合には先の図で示したような、腸管上皮パイエル板での腸管免疫調節システムの正常化を通じて、レギュラーT細胞の活性強化とTh1/Th2細胞比率の正常化を獲得して、アトピー性皮膚炎の発病が阻止・抑制される。

プロバイオティクスによるアトピー性皮膚炎の初期予防(1)でも述べたように、 ビフィズス菌、アシドフィルス菌等のプロバイオティクスのアレルギー疾患予防効果は、これらの菌の生きた状態での凍結乾燥製剤を、1種類の菌よりも多種類の菌を混合した製剤として、乳幼児期早期に、両親にアレルギー素因があり、母親が周産期から授乳期を通じて内服した場合に最も効果的であるとの暫定的な結論が導かれると思われるので、①両親にアレルギー体質がある場合、②両親あるいは兄・姉のいずれか一人がアトピー性皮膚炎を罹患していた場合、③母親が妊娠中に何らかのアレルギー症状を示していた場合、はアトピー性皮膚炎発病の危険性が高いので、母親は妊娠後期の35週目頃から、生まれた乳児には生後2ヶ月目頃から、Probioticsを投与することでアトピー性皮膚炎の発病が予防できると期待されている。