原著は乳酸桿菌(LGG)を使ってマウスの母親から胎児への免疫成熟への影響を調べたドイツ、ベルリン、マールブルグ大学での実験; Clin Exp Allergy. 2007 Mar;37(3):348-57.:Blümer N, et al: Perinatal maternal application of Lactobacillus rhamnosus GG suppresses allergic airway inflammation in mouse offspring. であります。
母親がプロバイオティクスを飲むことは生まれてくる子供の免疫成熟に良い影響を与え、アレルギーの発病から守る効果が有ることが臨床的に指摘されています。そこで動物実験で母親が摂取したプロバイオティクスが子どものアレルギー発病阻止に与える影響を調べることにしました。
メスのマウスに妊娠前+妊娠中+授乳中、あるいは妊娠前と妊娠中のみ乳酸桿菌を経口投与しました。胎盤中のサイトカインの発現状況が分析されました。生まれた子どもたちを卵の抗原(オボアルブミン:OVA)で感作した後にOVAのエアゾールで抗原吸入試験を実施しました。喘息症状発現の有無は気管支肺胞洗浄液分析、肺の組織学検査、肺機能検査で確認されました。脾臓の単細胞からのサイトカイン産生能が in vitro の検査で測定されました。
腸管への乳酸桿菌の定着はマウスの母親だけに認められて子どもには認められませんでした。TNF-alpha, IFN-gamma, IL-5 およびIL-10 の産生低下が妊娠前+妊娠中+授乳中に乳酸桿菌投与を受けた母親から生まれた子マウスに認められました。しかしながらIL-13とIL-4には変化がありませんでした。そしてさらに、プロバイオティクスの投与を受けた母親から産まれた子マウスは、投与を受けなかった母親の子マウスに比べると、気道と気管支周囲の炎症所見、杯細胞の過形成所見が有意に減少して観察されました。それに対してメタコリン(非特異的刺激)に対する気道過敏性は影響を受けていませんでした。妊娠期間中に乳酸桿菌投与を受けた母親では胎盤中のTNF-alpha上昇だけが有意に観察されました。
今回の実験では胎児期に母親が乳酸桿菌(LGG)投与を受けた場合に、その子どもでは実験的に引き起こした喘息症状が緩和され、この免疫的な影響は、少なくとも一部は胎盤を通過して、おそらくは炎症をコントロール(誘発)する細胞のシグナルによって引き起こされていると考えられます。
さて、また難解な動物実験データが提示されましたが、この実験のポイントは、母マウスに投与した乳酸桿菌は子マウスには伝搬していないにも関わらず、子マウスの実験的な喘息誘発に阻止的に働いたという点です。この実験結果は小生が提示している《周産期環境衛生仮説》の骨子である《母親から子どもへの腸内細菌伝搬が阻害されたことが子どものアレルギー増加原因》という仮説に対抗する新しい学説を提案しているからです。
乳酸菌不足はただ単に新生児期の腸内環境として子どもが自分で免疫を成熟させることに悪影響を与えるだけではなく、母親の胎内にいるときから既に胎盤を通じて胎児の免疫調節に関与しているという学説が生まれることになります。このことは、北欧の多くの実験が主張している妊娠末期からの母親へのプロバイオティクス投与では遅い可能性があり、妊娠がわかった時点あるいは妊娠を準備する時点で母親がプロバイオティクスを飲み始める方が、より確実に子どものアレルギーを防ぐ効果に結びつく可能性が有ると考えられます。
小生が提言している《母親は出産前1ヶ月に生きた乳酸菌粉末を飲みましょう》ではなく、《お母さんは未来の子どものために、妊娠がわかった時点から、あるいはお母さんになる準備として妊娠前から、生きた乳酸菌粉末を飲みましょう》という提言が将来的にはより現実的な《子どものアレルギー撲滅キャンペーン》となるのかも知れません。
母親がプロバイオティクスを飲むことは生まれてくる子供の免疫成熟に良い影響を与え、アレルギーの発病から守る効果が有ることが臨床的に指摘されています。そこで動物実験で母親が摂取したプロバイオティクスが子どものアレルギー発病阻止に与える影響を調べることにしました。
メスのマウスに妊娠前+妊娠中+授乳中、あるいは妊娠前と妊娠中のみ乳酸桿菌を経口投与しました。胎盤中のサイトカインの発現状況が分析されました。生まれた子どもたちを卵の抗原(オボアルブミン:OVA)で感作した後にOVAのエアゾールで抗原吸入試験を実施しました。喘息症状発現の有無は気管支肺胞洗浄液分析、肺の組織学検査、肺機能検査で確認されました。脾臓の単細胞からのサイトカイン産生能が in vitro の検査で測定されました。
腸管への乳酸桿菌の定着はマウスの母親だけに認められて子どもには認められませんでした。TNF-alpha, IFN-gamma, IL-5 およびIL-10 の産生低下が妊娠前+妊娠中+授乳中に乳酸桿菌投与を受けた母親から生まれた子マウスに認められました。しかしながらIL-13とIL-4には変化がありませんでした。そしてさらに、プロバイオティクスの投与を受けた母親から産まれた子マウスは、投与を受けなかった母親の子マウスに比べると、気道と気管支周囲の炎症所見、杯細胞の過形成所見が有意に減少して観察されました。それに対してメタコリン(非特異的刺激)に対する気道過敏性は影響を受けていませんでした。妊娠期間中に乳酸桿菌投与を受けた母親では胎盤中のTNF-alpha上昇だけが有意に観察されました。
今回の実験では胎児期に母親が乳酸桿菌(LGG)投与を受けた場合に、その子どもでは実験的に引き起こした喘息症状が緩和され、この免疫的な影響は、少なくとも一部は胎盤を通過して、おそらくは炎症をコントロール(誘発)する細胞のシグナルによって引き起こされていると考えられます。
さて、また難解な動物実験データが提示されましたが、この実験のポイントは、母マウスに投与した乳酸桿菌は子マウスには伝搬していないにも関わらず、子マウスの実験的な喘息誘発に阻止的に働いたという点です。この実験結果は小生が提示している《周産期環境衛生仮説》の骨子である《母親から子どもへの腸内細菌伝搬が阻害されたことが子どものアレルギー増加原因》という仮説に対抗する新しい学説を提案しているからです。
乳酸菌不足はただ単に新生児期の腸内環境として子どもが自分で免疫を成熟させることに悪影響を与えるだけではなく、母親の胎内にいるときから既に胎盤を通じて胎児の免疫調節に関与しているという学説が生まれることになります。このことは、北欧の多くの実験が主張している妊娠末期からの母親へのプロバイオティクス投与では遅い可能性があり、妊娠がわかった時点あるいは妊娠を準備する時点で母親がプロバイオティクスを飲み始める方が、より確実に子どものアレルギーを防ぐ効果に結びつく可能性が有ると考えられます。
小生が提言している《母親は出産前1ヶ月に生きた乳酸菌粉末を飲みましょう》ではなく、《お母さんは未来の子どものために、妊娠がわかった時点から、あるいはお母さんになる準備として妊娠前から、生きた乳酸菌粉末を飲みましょう》という提言が将来的にはより現実的な《子どものアレルギー撲滅キャンペーン》となるのかも知れません。