羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

ヤロカ火 10

2016-06-22 18:17:35 | 日記
 燃え上がらせて体をねじ曲げて飛び掛かってきた子供を叩き払った。
「大丈夫かっ?」
「うん」
 駆け寄った岳が確認すると寧々が持っていたのは扇子だった。岳同様、青い火はもう寧々の手も、寧々が持っていた扇子も焼いてはいなかった。
「何で扇子?」
「ダンスの授業で日舞を選んだ。ストリートダンスは練習が激しくて疲れるから」
「ああ、寧々がストリートダンス踊ってるのは想像つかないな」
「・・・どういう意味?」
「いやっ、いい意味で」
 等と二人が話していると、撃退されて倒れている燃える手を持つ物達の口、鼻、目、耳等からボトボトと様々な淡水の水棲生物の群体のようにも見えないではない流動物を垂れ流し始め、それらが抜けるに従い手の燃えていた手の火は小さくなっていった。
「う、ううう、ヤロカ、ヤロカ、ヤロカァアアっ、ううっ」
 それぞれが光る目を持つ流動物は蠢きながら弱々しく呟いていた。
「出てきたのが本体、か?」
「あの人達、まだ生きてるっ!」
 完全に流動物が抜けると手の火は消えた。その手は酷く焼け爛れて意識を失っていたが、全員呼吸はしているようだった。しかし抜けた流動物もまだ近くで蠢いていた。
「寧々、あのネバネバしてるのに止めを刺す。扇子を貸してくれ」
「御守りは?」
「自分のは自分で持っててくれ」
 岳は少し笑って扇子だけ受け取った。
「大丈夫」
 不安げな寧々の頬に一度触れて、

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