羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

いつかこの恋を~ 4

2016-02-10 22:28:34 | 日記
軽い調子で名刺をしっかり凝視する晴太。小夏は荷物を持って立ち上がり「行こう!」晴太から名刺を乱暴に取り、練を見ないようにして部屋から出ていった。「晴太」練は小夏のミシンと炬燵の上の菓子を取って去ろうとする晴太を止めた。「ん?」「小夏、大丈夫なのか?」「練君、ここ禿げてきているよ?」晴太ははぐらかして右側頭部の辺りを示した。気にする練。「ほら、ここ」晴太がさらに練の禿げを示そうとすると、練のケータイに着信が入った。「なんかあった?」「なんも無い」練は小夏の話は今回も案外簡単に忘れてしまい、晴太から離れケータイを確認した。木穂から声を聞きたいというメールだった。晴太は練を少し見ていたが、部屋から去っていった。
音は部屋の窓にガムテープを張って、すきま風を防ごうとしていたが、メールで風邪だという同僚の背の高い西野に明日の早番の交替を頼まれていた。朝、練は木穂子に出勤をメールで伝えつつ、バス停に走ったが、1本逃してしまった。と、バス停のベンチで音が眠りこけて、横に倒れそうになって慌てて起きいるのに気付く練。固く会釈だけして、構わないように、時刻表の傍に立つ練。音は居たたまれない様子だった。バスに乗ると、隣に乗っていた母親が連れていた赤子が泣き出し、傍の中年の会社員が悪態を吐き始めた。平謝りの母親。「うるせぇのはお前の方だろ?」さらに近い席の若者が子供が泣くのはしょうがないといったことを言ったが口が悪く、苛ついていた会社員と口論になり、しまいに「死ねっ」と言い出し、会社員も「警察呼べよっ!」等と返し、酷い有り様になった。それを見て見ぬフリをする練を見ている音。
やがて厄介な客達は降り、赤子も泣き止み、母子は音からも離れた席に座っていた。眠りながらも苦し気にしている音。バスは練が降りるバス停に停まったが、音は座席で倒れ、
     5に続く

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