羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

ヤロカ火 12

2016-06-22 18:17:51 | 日記
「ヤロカ火の本体は手強いち、そっちは聡に任せて結衣は分離体を狩るのに専念するぜよ。あっちは聡に殺らせるち」
「ほうほうね。ヤロカ火、マジヤバいよ。話、通じない。真淵(まぶち)の兄(あん)ちゃが片すよ」
 夜雀とオンボノヤスに口々に制され、結衣は渋い顔をしたが、
「わかった。とにかく騒ぎが大きくなる前に事態を収めよう」
 結衣は、息のあるヤロカ火の分離体に取り憑かれていた物達を介抱したりスマホで救急車を読んでいる岳と寧々を一瞥し、面を被り直すと、持っていた人形を全て宙に放った。一枚の人形は7~8羽のよく見るとデフォルメされた蝶に変化し、蝶らしからぬ高速で方々へと散って行った。
「これ以上、私の街の人達を傷付けるのは許さないっ!」
 結衣はどこからともなく取り出した手斧を青白い炎と共に三枚刃の大鉞に変化させた。


 部活の後で落ち合い、野間宏一と八木貴代はカラオケボックスに来ていた。歌う為ではなく、恒例になっている霞ヶ丘青年会館での演劇部の福祉公演の台詞の練習に貴代が宏一を付き合わせていた。
「大陸なら、僕達は南米に流れついたんだ」
 台本のコピー片手に棒読みの宏一。
「ほらねっ! 僕の考えた通りさっ」
 熱演する貴代。
 宏一は欠伸をした。
「ふわっ」
「ちょっと宏一ぃっ!」
「いやさ、部活の後だよ? 十五少年漂流記とか眠いって。もう帰ろうよ貴代」
「もうっ、心が無いんだよ、あんたはぁ」

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