第八芸術鑑賞日記

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スパイダーマン3(5/1公開)

2007-05-21 20:53:35 | 07年5月公開作品
 5/1、渋東シネタワーにて鑑賞。7.0点。
 この『スパイダーマン3』を観て最も強く感じたことは、映画は進歩するのだ、という事実である。といっても、本作における何かが映画史に全く新たな頁を記すような革新性を持っていたというわけではない。そうではなくて、むしろこれだけの大作があまりにもさり気なく作られてしまっているという事態への驚きである。
 このシリーズ三作目は、139分という長尺にもかかわらず「詰め込みすぎ」と批判される程に多数の要素が注入されている。『スター・ウォーズ』さながら人間をダークサイドへ堕ちさせる黒い蜘蛛。破壊されてもすぐに自己修復し果ては巨大化までする砂男(サンドマン)。主人公を父の仇と思い込んでいるかつての親友は、空中を飛び回るエアボードで襲いくる。本作でスパイダーマンが対峙することになるのは、これら3人の強敵である。それぞれをメインの敵に据えてじっくりドラマを描けば、3本の映画が撮れるところだ。しかし全ては139分で消化される。物語は早いテンポで進み、無駄なシーンは皆無、わかりにくくもなければ説明過多でもない。では何が犠牲にされているのかといえば、人物描写をはじめとするドラマの深さである。特に、親友ハリーが記憶を取り戻し、主人公が「黒く」なる中盤の展開は、これが低予算のB級映画だったならカルト的扱いを受け(て爆笑され)かねない迷走ぶり。終盤で執事が吐く台詞も衝撃的な唐突さを誇る。
 しかしそんなことは娯楽映画として玉瑕に過ぎない。真に驚かされるのは、スパイダーマン+三人の敵が次々と登場して戦い、ハイレベルのVFXを見せつけることに対して、(俺も含め)現代映画の観客はそれをごく自然なこと、当たり前のこととして捉えているという事実である。映画の売り手側も、驚異の映像をウリになどしない。スパイダーマンという人気ヒーローシリーズの見せ場として当然の仕事をしたまで、といった程度の気負いしか感じられない。
 ちょうど本作を観た日、俺はその直前に2本の映画を観た。キム・ギドクの作家性が強く発揮されたアート志向の『悪い男』と、フランスの低予算インディーズ映画『ザメッティ』とである。ミニシアターを二つハシゴした後、公開初日の本作上映劇場を訪れたわけだ。映画が始まって間もなく、主人公が蜘蛛の巣をハンモックのようにして恋人と寝そべっているシーンがある。カメラはそれを俯瞰で捉え、それからグルッと横から回り、ハンモックの下から見上げる。すると空に何か飛来するものが……というのを、ワンカットで見せてしまう。先に観た2本の映画で同様の表現をしたければ、俯瞰のショットと仰角のショットとを編集で繋いだだろう、間違いなく。こんな何気ないシーン一つで、俺は何か愕然とした気分になった。
 もし百年前の映画人たちが、四人の超人が入り乱れる本作クライマックスのアクションシーンを目撃したなら、その驚愕はいかばかりだろう。少なくとも、優れた映画人ならば、「映像技術は進歩したかもしれないが、物語が酷い。こんなのは進歩ではなく退化だ」などとは、決して言わないだろう。映画はもともと技術の進歩によって生まれた産物だ。技術に支えられてハードウェアが進歩することは当然である。表現しうる領域が増えたということは、まぎれもなく映画という容器が大きくなったことを意味する。もちろん無意味に無駄にVFXを使用することが必ずしも正しいわけではないが、使うことで優れた表現が可能になる場合は確実にある。それを認めないことは誤りだ。別の言い方をしよう。映画は進歩する。それを拒否することは罪である。
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