① ""イプシロン大解剖[2] 、試験機から強化型へ…""
(試験機から強化型へ)
試験機の打ち上げを成功させた後に、機体性能の最適化を図るために更なる改良開発に取り組みました。これを強化型開発と言います。
強化型開発の大きな目的は「打ち上げ能力の向上」と「搭載可能な衛星サイズの拡大」です。 試験機では 🚀フェアリングの中に覆われていた2段モータを大型化してフェアリングの外に出すことによって推進薬(燃料)を約1.4倍に増加させることが可能となりました。 また、フェアリング内部に衛星と3段のみを格納することで、より大きな衛星が搭載できるようになります。 更にロケット構造や電子機器の軽量化を図っています。
🚀 フェアリングとは?
フェアリングはロケットの最先端部に位置し、このフェアリングの中に搭載している衛星などを打ち上げの際の大きな音響や振動、大気中を飛行する際に生じる摩擦熱から護る役割を果たしています。 役目は卵の中身を守る"殻"と同じですが、軽くて丈夫で、かつ振動や熱に強い構造でなくてはいけません。
② 2段機体の改良.
(強化型イプシロンロケット2段モータ 真空地上燃焼試験の様子 )
★ 高性能化.
M-Vの引退後も固体ロケットモータの研究を継続的に行い、技術を進歩させてきました。強化型の開発では、より効率の良いモータにするべく、耐熱材と機体構造の改良に取り組みました。
固体ロケットは機体の中で火薬が燃えることになるため、機体を傷めないよう内部に耐熱材を施しています。 これまで複数の層だった、この耐熱材を単層にしました。また機体には炭素繊維を用いていますが、繊維の積層方向を見直しました。 これらの改良により機体の軽量化及び製造コストの低減につながりました。
(大型化)
★ 大型化
試験機の2段機体はM-Vの3段機体を活用したもので、直径約2.2m、衛星フェアリングの中に収納されていました。
強化型開発では直径を約2.6mに拡大し、フェアリングの外に出すことによって、2段に搭載できる推進薬(燃料)量を約1.4倍(約10.7t→約15t)に増加させることが可能となりました。これにより、打ち上げ能力が向上しました。
(電子機器の改良.)
★ 電子機器の改良.
打ち上げ能力向上のために、2段機体と3段機体に搭載される電力シーケンス分配器(PSDB)の小型化・軽量化を行います。 ロケットではこれまで機械式リレーを用いていたものを半導体リレーに変えることで、PSDB一基あたりの重量を20kgから12.5kg以下へと約半減することに成功しました。