「住民の住民による住民のためのテレビ」、平成8年春、住民ディレクター講座と同時にはじめたのが熊本ケーブルネットワーク(現在、J:COM熊本)での住民ディレクター番組「使えるTV」です。当時は毎月2時間番組を数年間作っていました。今は30分番組です。自分で企画し、撮影、編集、番組構成、キャスターのすべてをまずは自分が実践しました。制作会社の協力も得ましたが、時には一人自宅でリモコンで撮影もしていました。14年間続く住民制作の長寿番組です。
一回目は熊本市内のケーキ屋さんの2階をお借りして「何故この番組を作るのか?」「どんな番組を目指しているのか?」を一人で語りました。「使えるTV」という番組名は平成7年に民放を退職してすぐにやるべきことと考えていたので一直線でした。これまでの見るテレビではなく住民が生活の中で使っていくテレビ、やみくもに何でも出来るというものではなくて「地域づくり」に関して先を創っていく動きを伝えていくものという位置づけでした。
市民には発信する権利があるという「パブリック・アクセス」という発想ではなく、あくまで98市町村の地域活性化を考え、「実践し、交流していくテレビ」がコンセプトでした。当時は勿論自分自身がパブリック・アクセスという概念は知らなかったのです。のちのち元立命館大学の津田正夫さんら大勢の研究者や先進的?なテレビ局ディレクターさんなどがやってきて「これぞパブリック・アクセス」といわれてから「なるほどそういう見方もできるのか」と考えはじめたというのが本当です。
そうい場に先端モデルとして紹介いただくケースが一気に増えましたが「使えるTV」でやっていたことは人吉球磨広域行政組合の皆さんが地域を歩きレンズを通して住民と交流をすすめていく映像やその姿を追ったメイキングが主でした。講演会でも必ず山江村の農家の松本佳久さんの映像を見てもらい、20年余り完全無農薬で米作りを続けてきたのにそのお米が売れない現状を何とかするために発想したという原点を伝え続けました。使えるTVです。松本さんが精魂込めて作った完全無農薬の米作りがいかに大変な作業であるかを実際に弟子入りして一緒に田んぼに入り、2年間田んぼから松本さんの声を伝え続けました。
同時に熊本市内の中年女性の井戸端会議のような会話や生活情報を発信する地元経済誌の記者のリポート等様々な立場、分野、年齢の方々に使ってもらいました。しかし、まだまだ住民がテレビを使うという発想は一般的にはピンと来ない時代でした。そういう意味で山江村をはじめとする人吉球磨広域行政組合の「住民ディレクター養成」と「使えるTV」での発信はセットとなって様々な試みがカタチになっていきました。使えるTVのこの写真も何回か活用していますが、松本さんの農業と同じく住民ディレクターの原点なので転換点には必ずここに戻ります。「初心忘るべからず」
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