ジャパンオープンでの浅田真央さんの「蝶々夫人」の静かな余韻が、まだ残っている。
もう、録画を何度、見直したであろうか?本当に素晴らしかった。
今、私の手元には歌劇蝶々夫人」の全曲盤CDが11組ある。それなりに聴き込んでいるので、このオペラに関しては、かなり知り尽くしているつもりである。
しかし、そんな私ですが、今回、浅田真央さんの演技を見て心から素晴らしいと思いました。オペラの全曲の時間と比べてはるかに時間の短いフィギュアスケートのフリープログラムで、オペラの全曲を聴いた時と変わらない感銘を残すとは、心から浅田真央さんを絶賛したい。
ジャパンオープンは競技会。得点を競う場。しかし、浅田真央さんの演技を見ていて、競技会というのを忘れて、彼女の演技の世界に浸るのみ。繰り出される難度の高い技の数々も、技術の高さを感じさせない。ただただ、そこには、ひたすらプッチーニの音楽に乗って演じ切る浅田真央さんが存在するのみ。単にプッチーニの音楽を使って演技しているのではない。オペラのヒロインになりきっている浅田真央さんの姿を見た。
改めてフィギュアスケートという競技は技術面だけではなく、芸術面も高い要素の持ったものであると痛感しました。
現在、世界の女子フィギュアスケート界は10代の若い選手が大活躍していて、どんどん難度の高い技を披露していますが、その中で今回の浅田真央さんの演技は、一石を投じるものがあったに違いありません。技術だけではない、もっと大切なもの。心の持ち方、そして芸術に触れることの大切さ。それらが、あってこそ高い技術も生きて行くということ。
浅田真央さんの演技を見て多くの若いスケーターの皆さんが何かを感じ、これからの競技生活に生かしていってくれるものと信じています。
昨晩、CSのTBSチャンネルで放送されたお宝映像、2002年全日本選手権を録画で見ました。
この時、浅田真央さんはまだ小学6年生のノービスでしたが、特別推薦で全日本初出場。本当に貴重な映像でした。
そして、当時の実況で「(浅田真央さんは)近い将来、世界のフィギュアスケート界を牽引するであろう関係者が述べています」と言うコメントが、たいへん印象に残ります。
浅田真央さんは、まだまだ世界のフィギュアスケート界を牽引する存在で、あり続けるでしょう。
まだ、あどけなさが残る小学生の浅田真央さんの演技。そして、今、正に成熟した女性に成長した25歳の浅田真央さんの演技。偶然にも、この2つの演技を続けて見ることが出来たことは本当に感慨深いものがありました。
9月30日の夜、NHK・ニュースウォッチ9で浅田真央さんの特集を見ました。
一年間の休養中に多くの日本文化に触れて、自分が日本人であることを強く意識したそうである。
その中で、演技の冒頭の表情に注目してほしいとコメントがありました。
あの表情!そして演技を終えた直後の真央さんの表情。
けっして帰ってこない愛する人を、ひたすら待ち続ける蝶々さん。
そして、過酷で悲劇的な運命を予感しながら、ひたすら希望を捨てないで待ち続ける蝶々さん。
そんな運命を背負った蝶々さんを、あの表情だけで表現した浅田真央さん。
シーズンは始まったばかり。
浅田真央さんの「蝶々夫人」が、これから、どのように変化、深みを増していくのか本当に楽しみです。
さて、浅田真央さんのフリーの曲目が発表された時から、プログラムにどの楽曲が使用されるのか楽しみにしていました。
私の予想では、演技の最初は第1幕の冒頭の音楽でしたが、見事にハズレ。
使用された楽曲は2曲
①(第1幕より)「晩になった・・・」(トリプルアクセルまで)
②(第2幕より)「ある晴れた日に」
①は第1幕の中盤、蝶々さんとピンカートンの結婚式に叔父の僧侶ボンゾが乱入。仏教を捨てた蝶々さんを責め、勘当を言い渡して母親や親類を連れ去った騒ぎのあと、静けさを取り戻した舞台に流れてくる美しい旋律。身寄りを無くした蝶々さんをピンカートンが優しく声をかける。
ピンカートン 「晩になった・・・」
蝶々さん 「・・・暗くなり静かになりましたわ」
ピンカートン 「そして君はここにひとりきり」
蝶々さん 「ひとり、見捨てられて。見捨てられても幸せです」
歌劇「蝶々夫人」の中で私の大好きな旋律です。この旋律が、今回のプログラムに含まれているのは本当に嬉しい。
「ある晴れた日に」は前半、ドーナツスピンまでオーケストラの演奏のみ。そして後半が歌唱入り。
最後に「ある晴れた日」の歌詞を記しておきます。何かの参考になれば幸せです。
第2幕冒頭。第1幕から3年後、長崎港を見下ろす蝶々さんの丘の家。
お手伝いのスズキが多くの日本の神様に祈るのを見た蝶々さんは、アメリカの神様が知れば助けてくれるだろうと言う。お金の蓄えが乏しくなり心細くなっているスズキが、外人の夫が帰ってこないと口をすべらしたので、蝶々さんは憤ってスズキを叱りつけ、「駒鳥が巣を作る季節に帰ってくる」と言ったピンカートンの帰りを信じて歌う。
ある晴れた日、
海の彼方にひとすじの煙が上がるのが見えるでしょう。
やがて船が姿を見せます。
その白い船は
港に入り、礼砲を轟かせます。
見える?あの方がいらしたわ!
私は迎えにでないの。出ないわ。
あそこの丘の端にたって待つわ、長い時間
待つわ。長い時間待っても
なんともないわ。
すると、人々の群れから離れ
小さな点のように見えるひとりの人が
丘に向かって来るわ。
誰でしょう。誰でしょう。
どんなふうにして着いたのかしら。
何と言うかしら。
遠くで蝶々と呼ぶでしょう。
私は返事しないで隠れているわ。
冗談でもあるし、出会った途端に
死なないでいたためでもあるのよ。あの人は少しばかり心を痛めて
叫ぶでしょう。
「かわいい妻よ、
美女桜の香りよ」
これは、あの人が来た時に私にくれた名前なの。
すっかりこのとおりになるのよ。約束するは。
あなたは心配してればいいわ、
私は心から信じきって待っているわ。
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