オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

歌劇「道化師」

2009年04月23日 09時20分51秒 | オペラ
この前のフィギュアスケートの国別対抗戦でペアの川口悠子さん&スミルノフの演技のフリーの演技をやっと見ることが出来ましたが、イタリアの作曲家レオンカヴァルロ作曲の歌劇「道化師」の音楽が使用され本当に嬉しかった。とくにイタリアオペラとなると本当に血が騒ぎます。
この作品は19世紀の末頃、名も無い庶民を題材とした写実的、現実的なオペラが作られ、それらは「ヴェリズモ・オペラ」と呼ばれ新しい潮流となった。イタリアオペラの歴史の中でヴェルディの存在はたいへん大きかった。そのヴェルディの影から逃れる為、当時の若い作曲家は歴史や貴族の愛や葛藤を扱う事を避け身近な出来事をストレートに訴える作品を発表していった。その一番の代表作が「道化師」とマスカーニ作曲の「カヴァレリア・ルスティカーナ」である。

レオンカヴァルロの父親は司法官であったが父親が担当した裁判で旅回り一座の芸人が嫉妬から舞台で妻を刺し殺した事件があり、この事件をヒントに作曲者自身が台本を書いた。
南イタリアのある村。旅回りの一座の座長カニオ(テノール)は幼い時に拾って座員として育てたネッダ(ソプラノ)を妻としている。一座にはぺぺとせむしのトニオ(バリトン)がいて、トニオはネッダに横恋慕しているが、ネッダは村の若者シルヴィオ(バリトン)と忍ぶ恋仲である。

幕が上がる前に演奏される「プロローグ」は管弦楽の短い前奏のあと幕の間からトニオが登場して「前口上」を歌い始める。
「舞台の上では、おもしろおかしく演じていますが道化役も血も涙もある人の子です。その人間としての苦しみや悲しみこそ真実のドラマであることをおくみとり下さい。」
そして「さあ、始まり!始まり!」と歌い終わりトニオが姿を消したあと冒頭の前奏がくりかえされ、幕が上がる。
第1幕
村の広場で村人たちは大騒ぎしながら旅回りの一座を大喜びで迎える。そして一座の座長カニオがロバに引かせた車に乗って登場し、太鼓をたたいて村人を静めて、今夜の芝居の宣伝をする。短いがここがカニオをうたうテノール歌手の最初の聴かせ所である。
その後、村人たちによって「鐘の合唱」が歌われる。
その村人たちも誰もいなくなりネッダが一人、舞台に残る。そして大空を飛び交う鳥たちを眺めながら、幼いころ母親が歌ってくれた歌を口ずさみ、ネッダの自由な生活への憧れが歌われる。ネッダの聴かせ所、鳥の歌「大空を晴れやかに」である。
「鳥の歌」の後、トニオが登場。トニオはネッダに思いを打ち明け迫ろうとするがネッダは鞭を取り上げトニオを打ちのめす。トニオは怨みの言葉を残して去っていく。
トニオと入れ替わるようにネッダと恋仲である村の若者シルヴィオが登場し、情熱的な愛の2重唱となる。この2人の密会を物影からトニオが発見し、怨みを晴らすチャンスとばかり秘かにカニオを呼んで来る。去っていくシルヴィオにネッダは優しく言う。
「今夜またね。あたしはいつまでも、あんたのものよ!」
それを聴いてカニオが逆上しシルヴィオを追いかけるが逃げられ、ネッダに詰め寄るが開演の時間が迫ってきているので、ぺぺがカニオに支度をうながしカニオを残してトニオと姿を消す。
涙をぬぐいながら化粧するカニオであるが、現実の悲しみや怒りも笑いの下にかくさなければいけない悲しさ、心情を歌う。有名な「衣装をつけろ!」である。そして幕が下りる。
有名な間奏曲のあと、第2幕の幕が上がる。
村の広場で一座の芝居が始まる。客席にはシルヴィオの姿もある。
恋人同士を演じるネッダとぺぺ。ぺぺが去るときネッダは叫ぶ。
「今夜またね。あたしはいつまでも、あんたのものよ!」
舞台に出る前にこのせりふを聞いた亭主役のカニオは先ごろの記憶を思い出す。
舞台で亭主役としてネッダに問い詰めていくうちにカニオは舞台と現実の見極めがつかなくなり劇的な「もうパリアッチョじゃないぞ」を激情的に歌う。そしてカニオは逃げ出そうとするネッダをナイフで刺し、そして舞台に飛び出してきたシルヴィオも刺す。
そしてぼう然として舞台にたったままカニオが言います。
「喜劇は終わりました」そして幕が下りる。

上演時間約1時間15分のオペラなのでCD1枚に収録されているので購入しやすいかもしれません。
このオペラの主役はやはり座頭カニオです。カニオ役と言えば私はやはり往年の大テノール歌手で「黄金のトランペット」と呼ばれたマリオ・デル・モナコを1番に思い浮かべます。
デル・モナコにはデッカでのスタジオ録音も残されて、モナコの声は素晴らしいのですが他のキャストと指揮が今一つなのが残念です。ただ、かなり以前、NHKの放送で昭和36年に開催されたNHKイタリアオペラの公演に来日してカニオに扮したモナコの映像を見ることが出来、ビデオでも録画していましたが今はDVDにデーターを移して大切にしています。
たいへん昔の映像で白黒で映像状態も鮮度に欠きますが、まさに最高のデル・モナコが記録されていると思います。声も全盛時代だけに素晴らしいのですが、顔の表情も本当に凄い!第2幕の「もうパリアッチョじゃないぞ」は鬼気迫るものがあります。当時、世界最高のテノールによる最高のカニオといってよいでしょう。
現在では世界でも一流の歌劇場が世界的なオペラ歌手を伴って来日するのも当たり前の時代ですが、まだそんな時代ではない昭和36年に、現在では考えられない悪い条件の中で来日してまさに至芸と言ってもいいものを日本の聴衆に見せてくれたデル・モナコ。なおこの映像はDVDとして発売されているので、このオペラに興味ある方はぜひ見て欲しいものです。
CDでは、その他パヴァロッティやホセ・クーラが歌っている録音も持っていますが一度聴いただけで、そのままです。
その中でけっこう気に入っているのが輸入盤(ORFEO)ですが1985年ウィーン国立歌劇場でのライブ録音です。カニオがプラシド・ドミンゴ、ネッダがエレアナ・コトルバス、指揮はアダム・フィッシャーである。ウィーン国立歌劇場のコーラスが素晴らしく、またライブならではの熱気もあり気に入っています。