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象徴天皇制のあり方探る 原武史氏・ルオフ氏対談  日経  2019/10/21 7:00 

2019年10月21日 20時29分19秒 | 時事問題(日本)

象徴天皇制のあり方探る 原武史氏・ルオフ氏対談

         
2019/10/21 7:00
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即位礼正殿の儀が行われる皇居・宮殿

「即位礼正殿の儀」が22日、約30年ぶりに皇居・宮殿で行われる。令和の新たな象徴天皇像などについて、ともに現代象徴天皇制を研究する放送大学教授の原武史氏と米国ポートランド州立大学教授のケネス・ルオフ氏に対談してもらった。(司会は編集委員 井上亮)

――天皇の即位儀式の意義をどう考えますか。

 

放送大学教授 原武史氏

放送大学教授 原武史氏

原 憲法に天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づくとありますが、実際には国民が必ずしも天皇制や皇室について関心をもっているわけではないですね。即位礼のような大きな儀式が行われることで、日常ではあまり深く考えていなかった天皇、皇室の存在を国民が自身の問題として考えるきっかけになればいいと思います。

ルオフ 3つのことが言えます。日本はどこから来たか、いまどこにいるか、これからどこに向かうのか。たまにはこういう話をすることも価値があると思いませんか? 天皇の即位儀式はこれらを考える機会ではないでしょうか。外国人は日本の政治家にはあまり興味はありませんが(笑)、皇室にはとても関心があります。このような儀式があると、多くの外国人が日本に関する知識を深める機会になります。

――儀式の形式についてはどうでしょう。

原 平成とほぼ同じ形で行われますが、これは京都で行われた旧憲法下の大正、昭和の前例をかなり忠実に踏襲しています。昭和末期から平成にかけて侍従を務めた小林忍が日記で、平成の形式は和式と洋式がごちゃ混ぜになっていると批判しています。彼は洋式で統一すべきだと考えていた。次の代では改めてもらいたいと書き残しています。でも、検討らしきものはほとんどなされなかったし、国民の側も関心が薄かった。

ルオフ 即位の礼や大嘗祭(だいじょうさい)は戦後の民主主義体制に合うような形になっているのか、少し疑問に思います。戦前の国家神道に皇室祭祀(さいし)が利用された歴史を考えると、その連続性を断ち切るような、戦後の日本社会に適合したやり方もあるのではないでしょうか。儀式と合わせて巡幸をしてみてはどうでしょう。天皇、皇后が1カ月くらい全国各地を巡って、国民の様々な声を聞くことは戦後の象徴天皇制にふさわしい形ではないですか。

――天皇のあり方は、時代や社会状況を反映する面がありますね。

原 今回、祝賀御列の儀が延期になりましたが、これは象徴的な気がします。代替わりから5カ月余りしかたっておらず、国民の脳裏にはまだ平成の記憶が色濃く残っています。その記憶とは、大災害があると天皇、皇后はそれほど時間をおかずに被災地を訪問し、直接人々を励ます、というイメージです。大きな災害があると、必ず自分たちのところへ来てくれるという期待があると思います。

台風被害の記憶が残っているときに、東京でパレードを行うことは、天皇、皇室だけではなく国民にも抵抗感があるでしょう。被災者の立場を想像すると、置き去りにされたような気持ちになるかもしれません。そう考えることはある意味、「平成の呪縛」なのかもしれません。新天皇、皇后がすぐに新しいスタイルを創りだそうと思っても難しい状況でしょう。元号は令和になりましたが、まだ平成が続いている感覚がありますね。

 

米ポートランド州立大学教授 ケネス・ルオフ氏

米ポートランド州立大学教授 ケネス・ルオフ氏

ルオフ 儀式のあり方について、今回はあまり議論がなかったと聞いていますが、前の世代に比べると現在の日本の若者は政治に興味を失っていると感じます。これは日本に限らず、どの国でも一般的な傾向です。政教分離が守られているかどうかは専門家にとっては重要ですが、一般の国民はあまり関心がないのかもしれない。

ところで、どこの国も、とくに政治家は大きなイベントが好きですね。日本は即位礼、大嘗祭、来年のオリンピックと大きなイベントが続きます。人々がこぞってそれを祝ったり楽しんだりする「祭り」が終わったあとに反動があるかもしれません。少子高齢化など、日本が抱える問題がより深刻に見えてくる、というように。

■公務・儀式、伝統とは何か

――即位儀式は長い伝統があるといわれています。

ルオフ 現代の即位儀式はずいぶん伝統といわれますが、実はそんなに古くない部分が多い。大部分は明治時代になって創られた伝統です。だから、伝統という言葉は気をつけて使った方がいいと思います。伝統を少しも変えずに続けた方がいいというなら、天皇は子孫を確実に残すために側室制度を復活すべきですね。これは冗談ですが。

伝統は捨てなければならないときもあるし、変えなければならない場合もあります。もちろん、守らなければならないときもある。でも、伝統だからといって、絶対に守り続けなければならないという考えは、ある部分で危険だと思います。

 

第70回全国植樹祭で苗木を植える両陛下(6月、愛知県尾張旭市)

第70回全国植樹祭で苗木を植える両陛下(6月、愛知県尾張旭市)

原 ルオフさんが言うように、明治維新後にそぎ落とされ、新たに創られた伝統があります。その後に旧皇室典範や登極令をはじめとする皇室令が明治中期以降に整備され、さらにもう一段変化しているんです。明治天皇と大正天皇の即位礼はかなり違う。大きな違いの一つは、大正では天皇が即位を宣言する高御座(たかみくら)と皇后の御帳台(みちょうだい)が新たに作られたことです。天皇の即位と同時に皇后の「即位」も内外に宣言する意味が加わりました。

明治に創られた伝統にこだわる人たちもいますが、あの時代は坂の上の雲を追うといいますか、栄光の時代という印象なのでしょう。大正は天皇が病弱、昭和は戦争に負けてしまった。成功物語としてくっきりと描きやすいのかもしれません。一方、平成で創られた儀式が祝賀御列の儀、パレードです。これは大正、昭和ではなかったものです。戦後の象徴天皇制の中で生み出された新たな伝統といっていいでしょうか。

――天皇のあり方も古代から現代まで変わってきました。

ルオフ 近世までは仏教が即位儀式では重要な要素でしたね。神仏習合ですか。ある意味で多宗教的な儀式だった。いまは難しいかもしれませんが、もしそのような形を認めたら、これから多様化していく日本社会にとって意味があることかもしれません。

私は日本の右派の研究もしていますが、彼らが「伝統」と言うとき、重視するのは明治時代に創られた皇室の伝統です。前の天皇の退位が議論になっていたとき、いわゆる右派といわれる人たちの大部分は退位に反対していました。歴代天皇の半数近くは退位しています。それこそが伝統だと思うのですが。

 

「即位後朝見の儀」に臨まれる天皇、皇后両陛下(5月、宮殿・松の間)

「即位後朝見の儀」に臨まれる天皇、皇后両陛下(5月、宮殿・松の間)

でも、伝統を定義するのは難しいですね。天皇、皇后が被災地を訪問することは、現代の多くの日本人にとって伝統になっているのではないですか。新しい天皇、皇后両陛下も同じようなあり方を目指しているでしょう。しかし、もし同じ形を継承したくないと思ったとき、それをやめることは非常に難しいことだと思います。国民の期待がありますから。伝統はどれほど長い期間を経たら伝統になるのか。人それぞれ考えが違うかもしれません。

■多様性・寛容、さらに深く

 ――これからの新天皇、皇后両陛下について、どうお考えですか。

原 皇太子夫妻時代にどういうことをしてきたかを見ないと分からないと思います。平成の天皇、皇后は皇太子夫妻として30年間行ってきた活動を、ある意味で即位後にそのまま踏襲したともいえます。いまの天皇、皇后も皇太子夫妻として26年過ごしてきたわけですが、大きな違いがあります。それは皇后の違いです。

美智子上皇后は大学を出てから就職はせずに皇室に入り、3人の子供を産み育てました。夫を支えて家事、育児に専念する、高度成長期に広く見られた核家族のモデルになりました。雅子皇后は外務省のキャリア官僚として活躍していた。働いた経験のない美智子上皇后とは違います。

体調問題もあり、活動は美智子上皇后ほど活発になれない。日本全国をくまなく回って、国民一人ひとりと接するようなスタイルは維持できなくなるかもしれません。

 

愛犬の由莉とともに、那須御用邸の敷地内を散策する天皇、皇后両陛下と長女愛子さま(8月19日、栃木県那須町)

愛犬の由莉とともに、那須御用邸の敷地内を散策する天皇、皇后両陛下と長女愛子さま(8月19日、栃木県那須町)

一方、雅子皇后は外国の賓客と堪能な英語で通訳を介さずに会話するなど、美智子上皇后にはなかった面も見えてきています。新しいスタイルを創り出そうとしているような気もします。これから先、外国語能力が活動にどう生かされていくか注目したいですね。

ルオフ 平成の象徴天皇のモデルは大きな影響力があり、次の時代も連続性があるでしょう。でも、新天皇の独自性も少し感じています。即位前2年間の記者会見に注目しています。新天皇は「社会の変化にともない、天皇の務めも変わっていく」という趣旨の発言をしています。皇室はなぜここまで続いてきたのでしょう。それは時代に合わせて変わってきたからです。その事実を踏まえた発言だと解釈しています。

私は新天皇が皇太子時代から強調してきた2つのテーマがあると思っています。一つは多様性と寛容です。明仁上皇も寛容を重視していましたが、新天皇はもっと直接的に日本社会が多様化していることと、寛容の大切さを考えているような気がします。

もう一つのテーマは水問題です。世界では多くの人々がきれいな飲み水を得られない状況です。平成の天皇、皇后は国内の一番弱い立場の人たちに手を差し伸べてきましたが、新天皇、皇后はさらに世界の一番弱い人々にも寄り添うのでは、との期待もあります。

原 平成の天皇、皇后はあれほど全国を回りましたが、在留外国人の施設、学校などにはほとんど行っていません。これからは在留外国人は確実に増えていきます。インバウンドもそうです。新天皇、皇后は海外留学経験があり、外国人とのコミュニケーション経験も豊富です。新しいあり方が時代に適合していく可能性があります。

ルオフ それから、皇室に入った女性が男子を産まなければならないプレッシャーで悩み、体調を崩すようなことを繰り返してはいけませんね。世界的に見て、人々の生き方の多様化は進んでいます。結婚しない人もいるし、結婚しても子供をつくらない人もいる。LGBTの人もいる。男子を産むことが宿命づけられている世界が、はたしていつまで続くでしょうか。

 はら・たけし 専門は日本政治思想史。「大正天皇」で2001年毎日出版文化賞。「昭和天皇」で08年司馬遼太郎賞。他の著書に「皇后考」「平成の終焉」など。57歳。
Kenneth J.Ruoff ポートランド州立大学日本研究センター所長。「国民の天皇」で2004年大佛次郎論壇賞。他の著書に「天皇と日本人」、共著に「天皇論『日米激突』」など。53歳。

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