自選
「借りてきた歌」五首
008:種
芝草に沈みつ思う空色の種の発芽をさせてはならぬ
-「そらいろのたね」
なかがわりえこ、おおむらゆりこ(絵本)
057:空気
そらをとぶ空気枕にまたがってさあ飛び立とう翡翠の森へ
-「耳をすませば」(映画)
060:キス
くちびるに赤黒い傷きざむただ君を罰するためだけのキス
-「ヨコハマ物語」大和和紀(漫画)
070:神
緑濁の沼から這いずり出たものに光が刺さる 神よ逃げるな
-「地獄の黙示録」(映画)
084:退屈
からからの蝉を真白きサンダルの底で砕いて蹴って退屈
-「ノルウェイの森」村上春樹(小説)
【五首についての感想】
自分の歌を読み返してみると、他の作品や親しい人の台詞などからイメージを広げていくものが多いなあと思います。
そういった歌たちを、個人的には「借りてきた歌」と呼んでいます。
「題詠100首2007」でも、数えてみたらその数は15を超えました。
そんな中から、自分でも比較的気に入っている五首を選びました。
はっきり言えば、盗作の群れなんだけれど…お許しください。
他にも、以前見た本や映画と同じようなモチーフを見つけたら、
「あ、ナカムラの野郎、こんなところから盗んでやがった」
と指摘してくださいね。
【全体についての感想】
「歌のどこかに色、模様を入れる。またはそれを連想させる歌作りをする」
ことを、縛りとしたため、結果としてかなりいびつな歌が多くなってしまいました。
でもそれはそれとして、改めて100首を読み返してみると、そこここに苦闘の跡が見られて(出来はともかく)けっこうおもしろいじゃないか、とも思えてきます。
とても勉強になりました。「縛り」も悪いもんじゃないですね。
これからしばらくは、ちょっと自由に詠みたいですが。
「借りてきた歌」五首
008:種
芝草に沈みつ思う空色の種の発芽をさせてはならぬ
-「そらいろのたね」
なかがわりえこ、おおむらゆりこ(絵本)
057:空気
そらをとぶ空気枕にまたがってさあ飛び立とう翡翠の森へ
-「耳をすませば」(映画)
060:キス
くちびるに赤黒い傷きざむただ君を罰するためだけのキス
-「ヨコハマ物語」大和和紀(漫画)
070:神
緑濁の沼から這いずり出たものに光が刺さる 神よ逃げるな
-「地獄の黙示録」(映画)
084:退屈
からからの蝉を真白きサンダルの底で砕いて蹴って退屈
-「ノルウェイの森」村上春樹(小説)
【五首についての感想】
自分の歌を読み返してみると、他の作品や親しい人の台詞などからイメージを広げていくものが多いなあと思います。
そういった歌たちを、個人的には「借りてきた歌」と呼んでいます。
「題詠100首2007」でも、数えてみたらその数は15を超えました。
そんな中から、自分でも比較的気に入っている五首を選びました。
はっきり言えば、盗作の群れなんだけれど…お許しください。
他にも、以前見た本や映画と同じようなモチーフを見つけたら、
「あ、ナカムラの野郎、こんなところから盗んでやがった」
と指摘してくださいね。
【全体についての感想】
「歌のどこかに色、模様を入れる。またはそれを連想させる歌作りをする」
ことを、縛りとしたため、結果としてかなりいびつな歌が多くなってしまいました。
でもそれはそれとして、改めて100首を読み返してみると、そこここに苦闘の跡が見られて(出来はともかく)けっこうおもしろいじゃないか、とも思えてきます。
とても勉強になりました。「縛り」も悪いもんじゃないですね。
これからしばらくは、ちょっと自由に詠みたいですが。
素粒子間のすきまはとても広いから紫の風だけがこぼれる
017:玉ねぎ
透きとおる狐色した玉ねぎはフライ返しにまとわりついて
027:給
給食を護衛してゆく白帽子つばめが渡り廊下くぐった
053:爪
泥岩に爪痕残し始祖鳥が羅目の鱗を光らせて飛ぶ
(泥岩=でいがん 羅目=らめ)
084:退屈
からからの蝉を真白きサンダルの底で砕いて蹴って退屈
純粋に惹かれるものから5首選びました。
とても素敵な歌が多くて絞るのが大変でしたが、
「この場面にはこの色じゃなきゃ駄目!」
という歌が集まったと思います。
この中でも特に好きな一首は退屈の歌です。
少女の無垢な残酷さが美しく表現されていると思います。
003:屋根
刷毛雲を見上げていると飛べそうな屋根の下地を赤く塗るとき
031:雪
膝を着く雪原はるか漆黒と見まごう濃き紅を目指して
060:キス
くちびるに赤黒い傷きざむただ君を罰するためだけのキス
065:大阪
青空に白 赤 金の顔が浮く大阪万博で会いましょう
097:話
貼り紙と乾いた薔薇と血のことが昔話になるときが来た
色を詠み込んだ歌を作られているということで、特に意味もなく「赤色」を連想する歌を集めてみました。
この中では特に「060:キス」がいいですね。
微妙な背徳感が百合っぽいな、と書くと失礼ですか?(^_^;)。
給食を護衛してゆく白帽子つばめが渡り廊下くぐった
071:鉄
鉄柵が揺すれてもげて汗ばんだ腕赤錆の粉にまみれて
077:写真
なかよしに挟まれ僕を待っていた日光写真の青揚羽蝶
084:退屈
からからの蝉を真白きサンダルの底で砕いて蹴って退屈
094:社会
青と黄の7系統のバスでゆく社会科見学(チョコのにおいだ)
色とりどりの100首の中から「しまった!先にやられちゃった!」5首を選びました。
先にこんなすてきなお歌がアップしていたのに「日光写真」ははずせなかったので使わせていただきましたが…
さんかくの赤いひこうきとんでいくくもり空ならもっといいのに
027:給
給食を護衛してゆく白帽子つばめが渡り廊下くぐった
038:穴
擦り生姜きいろく濡れて蓮根の穴ほろほろと舌にくずれる
064:ピアノ
黒鍵は左手薬指がすき消毒臭のするメゾピアノ
069:卒業
(東京は卒業したの)玉虫のアートネイルが這うさるすべり
「赤」・・・「くもり空ならもっといいのに」という発想が面白かったです。青空より、雲の白のほうが赤が映えるなぁ。
「卒業」・・・「玉虫のアートネイル」と「さるすべり」の対比が印象的で、好きなうたです。
すべすべした木肌に触れながら、
爪の先まで手入れをした都会的な女性が、どんな背景を背負って「東京は卒業したの」と独白したのか、などと、物語を感じました。
光を浴びて色あいを移り気に変える「玉虫」。百日紅の名前の由来(中国の伝説で、恋人と百日後に逢うことを約束した乙女が、約束の百日目の直前に他界、その死んだ日の後に咲いたという花)も連想され、想像が膨らみました。
単純に好きな色をあつめたのですが、並べてみると「視覚以外で感じる色」が選歌の中心になりました。
五首選、面白い企画ですね。ありがとうございました。
仕舞坂週末ごとにくだる坂角のケロヨンくんは黄みどり
011:すきま
素粒子間のすきまはとても広いから紫の風だけがこぼれる
035:昭和
しいちゃんが〔ここは小声で〕昭和ってそんな茶色な季節だったの
045:トマト
酒井屋のトマトのへたは深緑すぎるこいつは植物じゃない
076:まぶた
蜻蛉には見えない色が手のひらとまぶたと液を通過してゆく
紫なのか……。
きっと紫なんだな。
そんなふうに納得させられてしまった色たちをあつめてみました。
「週末」……まちかどのカエルを見ると(それがたとえ薬局のケロちゃんだったとしても・笑)「ケロヨン」と呼びたくなる世代としては外せません。
「まぶた」……これは「てのひらを太陽に」のおそろしい裏バージョンでは。
とても楽しめるカラフルな100首でした。
そして今年も五首選会の企画ありがとうございます。またいろいろあそんでください。ばははーい
027:給 給食を護衛してゆく白帽子つばめが渡り廊下くぐった
047:没 庭先のやがて水没するはずのほおずきの実はまだ色付かず
064:ピアノ 黒鍵は左手薬指がすき消毒臭のするメゾピアノ
077:写真 なかよしに挟まれ僕を待っていた日光写真の青揚羽蝶
色を詠み込んだ100首ということなので、色彩に惹かれたものを選ばせていただきました。ただ、「色彩」=「歌に詠み込まれた具体的な色」ではなくて、「一首全体から浮かび上がってきた色合い」という感じです。たとえば「020:メトロ」の歌は、梨の花の色と、緑の車体のコントラストに惹かれました。
「047:没」の歌は、なぜ水没するのか(幻想なのか、誇張表現なのか、何かの見立てなのかetc.)よくわからないまま、透明感のある色彩に惹かれて選んでしまいました。また、この歌は、「まだ色付かず」という言葉で、逆に色づいた状態を想像させたり、同様に「064:ピアノ」は、「黒鍵」を出すことで白いほうの鍵盤をも連想させたり、言外の色を想像させることで、色彩的な広がりが生まれていると思いました。
「077:写真」の「なかよし」は、少女マンガ雑誌の「なかよし」と読んだのですが、違っていたらすみません。
渦を巻き白蛇と化し道上に地紋を描くさくら地吹雪(025:化)
桃色の爪をうずめた砂浜があと千回の波で消え去る(063:浜)
からからの蝉を真白きサンダルの底で砕いて蹴って退屈(084:退屈)
この夏を知るはずだった人のためあおい器で汲む祝い水(093:祝)
すきなうたからさらに五首選ばせていただきました
風と水を感じるおうたが多かったです
夏のおうたは特にすきです
あ、水玉あなたといっしょネクタイとかばんの中のペンほら一緒
027:給
給食を護衛してゆく白帽子つばめが渡り廊下くぐった
056:タオル
板床にタオルを敷いて夢を見る金魚の群れに会えますように
076:まぶた
蜻蛉には見えない色が手のひらとまぶたと液を通過してゆく
084:退屈
からからの蝉を真白きサンダルの底で砕いて蹴って退屈
好きなお歌をあつめていたら、日々の瞬間を切りとって、真っ白な壁に飾っていくような気持ちになりました。
「一緒」のお歌がとても好きです。とにかくすごくかわいい(笑)なんか一生懸命で。でもべつにどうでもいいじゃんみたいな(笑)そこが無性にかわいい。
ひらがなから漢字にかわる「一緒」がそれをいっそう引き立たせている気がします。
「給」のお歌も「護衛」という言葉とつばめがすっと横切っていく感じがとても印象的でした。
あたらしいきれいなまっしろな壁
だけどなにかがたりなくて
飾ってみたら気がついたの
せかいはカラフルなんだって
色とりどりのわたしのまいにち
ようこそ、わたし展へ。
擦り生姜きいろく濡れて蓮根の穴ほろほろと舌にくずれる
061:論
『すご( )ックス論』子らが集いし水炊きの鍋に特太ゴチック敷かれて
064:ピアノ
黒鍵は左手薬指がすき消毒臭のするメゾピアノ
067:夕立
夕立のあっちに暗い紅を見る駅前長谷川書店軒先
093:祝
この夏を知るはずだった人のためあおい器で汲む祝い水
こうならべて読んでみて、「ない」ものを感知する歌たちだなあと思いました。
蓮根の穴という、本来はなにも「ない」ものをくずれると表現するところがすごいです。
『すご( )ックス論』にはおどろきました、そしてすっごくウケました。
「消毒臭のするメゾピアノ」「夕立のあっち」「この夏を知るはずだった人」の表現にやられました。
六月の緑は痛い気障りな光が庭の隅にかたまる
君さては外階段の12段目にある銀のSを踏んだね
緑濁の沼から這いずり出たものに光が刺さる 神よ逃げるな
なくしたといってるあかいこころならみつばとたまごとじにしました
いろんな色がこぼれるなかで、印象的な色を選ばせていただきました。
色が中心というより、ある情景のなかで指し色のような役割を果たしているものが気に留まりました。
たまごとじの作品は特に好きです。
昨年、印象的だったうつぼ作品など考えると、
中村さんの料理しちゃう作品にけっこうぐっと来ているかもしれません。