徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「サイド・エフェクト」―男と女の危険な心理ゲーム―

2013-09-17 10:00:00 | 映画


 この映画は、まだ50歳になったばかりのスティーヴン・ソダーバーグ監督の、最後の劇場映画という触れ込みだ。
 26歳の時「セックスと嘘とビデオテープ」史上最年少パルムドール受賞して、37歳の時「トラフィック」アカデミー賞監督賞受賞し、世界中にその名を知られるようになった。
 彼の作る純粋な劇場映画としては、これが最後だと明言した作品だ。

 作品は、ヒッチコック風の愛憎のサスペンスである。
 濃密でスリリングな内容で、タイトルの意味は薬物の「副作用」で、現代的な社会問題を取り上げ、独特の作風で味付けしたドラマとなっている。
 ソダーバーグ監督の幕引きにふさわしい、一作だ。















      
あらゆる情報が行き交う都市、アメリカ・ニューヨーク・・・。

28歳のエミリー(ルーニ・マーラ)は、最愛の夫マーティン(チャニング・テイタム)をインサイダー取引の罪で収監され、幸福の絶頂から絶望のどん底に突き落とされる。
マーティンの出所により、その数奇な人生は好転するかと思われたが、エミリーは彼が不在の間に鬱病を再発させ、自殺未遂を起こしてしまう。
そこで精神科医バンクス(ジュード・ロウ)は、彼女に新薬を処方するが、今度は薬の副作用で夢遊病を発症してしまった。
しかしエミリーは、その薬のおかげで夫の関係も回復したと言い張り、服用を辞めようとしなかった。

ある日、彼女はついに夢遊病状態となって、眠ったまま自宅でマーティンを殺すという、殺人事件を起こしてしまった。
バンクスは主治医としての責任を問われ、キャリアも家庭も失いかねない状態に追い込まれる。
彼は、自らの名誉のため、独自の調査に乗り出し、センセーショナルな殺人事件の背後に渦巻く、衝撃的な真実に迫っていくのだった・・・。

危険な“副作用”(サイド・エフェクト)を招く、男と女のサスペンスフルな心理ゲームだ。
ドラマは、意外な真実が明らかにされていくが、薬と精神科医に頼るアメリカの都会人、薬害副作用の恐ろしさ、薬剤メーカーと医師との共犯関係、殺人事件に絡む様々な要素を、かなりわかりやすく取り入れた物語だ。
ドラマのテンポも程よく、前半では心理サスペンス、後半になって二転三転のミステリーとなる。
この転換劇は、ソダー・バーグ監督独特の職人芸のようだ。

バンクス役のジュード・ロウは誠実なファミリーマンで、ミステリアスな女性たちに魅せられていく、精神的な葛藤を迫真の演技で表現し、バンクスを惑わせるエミリーに扮するルーニ・マーラ、可憐なルックスに似合わぬ大胆な振る舞いは、魔性の女を想わせるに十分だ。
そのマーラと艶やかさを競う、女医シーバート役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズはこの物語のキーパーソンだが、さてバンクスの味方なのか敵なのか。

スティーヴン・ソダーバーグ監督アメリカ映画「サイド・エフェト」は、はかなげな美しさをまとった精神疾患を持つヒロインと、気鋭の精神科医との危うい関係を描いており、興味尽きない。
この作品は、ソダー・バーグ監督の野心的な冒険作だ。
幸せを取り戻したい、悩める患者を救いたいという男女の切実な想いが、全く動機の見当たらない殺人事件によって強烈にねじれてしまい、二転三転のミステリーへと展開していく。
人間の心とは、こんなにも謎だらけで、妖しく胸をざわつかせるものか。
スコット・Z・バーンズの、ひねりの効いた、斬新なオリジナル脚本も功を奏している。
人間関係のつながりには少々無理筋も感じるが、才気煥発のソダー・バーグの作家性十分で、いかにもアメリカ映画らしい作品だ。
     [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点


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2 コメント

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アメリカの (茶柱)
2013-09-17 21:52:53
医療・保険は惨憺たる様子だそうですね。聞く所によれば。
保険会社と医師,製薬会社が結託して患者を食い物にするようなこともあるのだとか・・・。

恐ろしいことですね・・・。
アメリカと・・・ (Julien)
2013-09-19 20:51:56
比べると、日本はまだまだ良いほうで・・・。
願わくは、いつまでも病人(患者)にとって、どこまでも優しい医療を目指してほしいものです。
映画は、そんなアメリカ社会の現実にも目を向けて、チクッと来るような作品ですね。はい。

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