徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「万引き家族」―社会性と芸術性の両立という複雑な挑戦がこの世の不条理や偽善を炙り出して―

2018-06-11 10:15:00 | 映画

 家族が絡んだいろいろな事件の報道から、着想を得たといわれる。
 それが善であれ悪であれ、「家族」の持つ絆については一考させられる。
 是枝裕和監督、原作、脚本、編集による最新のオリジナル作品だ。
 今回、カンヌ国際映画祭最高賞パルムドール獲得した。

 これまでもずっと家族を描き続けてきた是枝監督が、今までの問題意識や作劇手法のすべてを注入した迫力が伝わってくる。
 大体犯罪を生活の糧にしていて、決してほめられたものではない。
 ところが、この映画の一家は幸せそうで楽しそうなのだ。
 何故なのだろうか。
 是枝監督は、犯罪を重ねる家族の姿を通して、人間の真のつながり、絆とは何かを問いかける。




高層マンションの谷間にぽつんと取り残された古い平屋・・・。
いまにも壊れそうで、ごみ屋敷のようなぼろぼろの家に、家族6人がひしめきあって暮らしている。
少年祥汰(城桧吏)はそこに住みながら、学校には行かせてもらえず、父親の治(リリー・フランキー)から、万引きの手口を教わりながら、スーパーや駄菓子店で犯行を重ねている。
家の持ち主は祖母の初枝(樹木希林)だが、クリーニングで働く母信代(安藤サクラ)とその妹の亜紀(松岡茉優)も、祖母の年金をあてに暮らしていて、足りない分を治と祥汰の万引きで補っているのだった。

ある冬の日、祥汰と「仕事」を終えた治は、近くの団地の廊下で、寒さに凍えていた5歳の少女ゆり(佐々木みゆ)を、思わず連れて帰った。
彼は少女をすぐにも返そうかと考えたが、親による虐待の影も見え、彼女を家族の一員に入れたのだった。
こうして、一家6人は、貧しいながらも仲良く暮らしていた。
しかし、秘密を抱えていては世間には背を向けざるを得ない。
やがて、祥汰は盗みに疑問を抱き始め、ゆりが行方不明になったことがニュースで報じられ、年金を頼りにしていた祖母の死は家族の日常を一変させることになった・・・。

ドラマ全体を眺めたとき、社会の不条理、たとえそれが反社会的であれ、血のつながりの不確かなものであるとしても、負の部分を含めて人間をあぶり出し、生きることの切なさと厳しさを感じさせる。
世の中、決してきれいごとではない。
贅沢な生活をしているわけではない。
美味しいものを食べているのでもない。
でも貧しいものは貧しい。
そうした現代のひずみに光をあて、子供たちの繊細な表情や感情の機微に、格差社会に取り残された声なき人々のすがたをスクリーンに描いた。

文学でいえば、芥川賞と直木賞の、いわばほどよい商業主義を取り入れた、純文学作品の趣きも少なからずあって、圧倒的な生々しさが感性として伝わってくる。
決して同情を得る家族の話ではないのだが、見終えてから思い出すと、何だか少し目頭が熱くなるような作品だ。
出演者は、誰もが自然体で好感が持てる。
子役にしても、演技が演技のように見えない。
監督は、決して細かい指示を与える人ではないそうだ。
指示しなくても、こんなに自然の演技ができるのだろうか。
これを、是枝マジックというのか。
雑多な登場人物がいて、雑駁な群像劇のようでもあるが、せせこましさも含めたこの「雑駁」がとらえどころのない大きなテーマ「絆」とつながっている。
格差社会の底辺で暮らす、ある家族の物語である。

誰もが抱える過去の傷や影、誰かに何かしらつながりを求めようとする心象・・・。
正義とは何か。
通り過ぎ、見過ごされている人たちの存在、家族のつながり、人が人を裁くことの意味・・・。
どこか息苦しい、いまの社会の空気を突き破るかのような新鮮な衝撃がある。
是枝裕和原案、監督、脚本、編集日本映画「万引き家族」は、都会で生きるある普通でない、異端の家族を通して、人と人とのつながりを掘り下げており、今回のカンヌ国際映画祭最高賞パルムドールに輝いた。
21年ぶりの日本の快挙だ。
        [JULIENの評価・・・★★★★☆」(★五つが最高点
映画は現在全国シネコン他で上映中。

―追記―
是枝裕和監督は、「公権力とは距離を置くべきだ」として、林文科相の祝意などを固辞する意向でいる。
安倍首相が何らの祝意をも伝えていないことを野党が批判しているが、そんなことを是枝監督はさらさら気にする様子はなく、あくまでも自身の正しい振る舞いから、公権力からの祝意を辞退する方針だそうだ。
是枝監督は、自治体からの顕彰などの申し出でも全て辞退しているそうだ。
う~ん、是枝監督のその気持ちは痛いほど理解できる。
フランスの有力紙フィガロ」は、パルムドール受賞は日本政府にとっていかにもきまりが悪いらしく、そもそもこの作品自体日本政府への強烈な批評が評価されて受賞に結び着いたと分析している。
是枝監督の、日本の政治、文化についての強い風刺が作品ににじみ出いるからだ。
今回の日本映画パルムドール受賞は、いろいろな問題を投げかけている。

次回は日本映画「Vision ビジョン」を取り上げます。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 映画「軍中楽園」―幸せを望み... | トップ | 映画「Vision ビジョン」―山... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事