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【石井 幸孝さん】JR九州元社長が示す北海道鉄道再生の道(北海道新聞、どうしん電子版より)

2018-07-30 | 日記
ほんとうに不採算路線は切り捨てるしかないのか?
いや、まだ道はあるはずだ。
ここで、JR九州を見事に軌道に乗せた元社長の力強い言葉を聴きたい。


北海道新聞 2018年7月28日付記事より
「【石井 幸孝さん】JR九州元社長が示す北海道鉄道再生の道」
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/213095?rct=n_jrhokkaido

JR九州の元トップが、北海道の鉄路の将来を案じている。
不動産や飲食店事業など同社の多角経営を軌道に乗せ、
2年前の株式上場につながる土台を築いた初代社長の石井幸孝(よしたか)さん(85)だ。
JR北海道は今、経営難で大幅な路線見直しを迫られている。

何が彼我の差を分けたのか。
北海道の鉄道再生の道筋はあるのか。
国鉄時代に道内勤務経験があり「北海道が大好き」と言う石井さんに聞いた。(報道センター 吉田隆久)


■赤字の根っこは人口密度の低さ。国策で収益調整しないと   
――JR北海道が2016年11月、10路線13区間を「単独では維持困難」と発表しました。
「ごく当然だと思いますよ。むしろ遅きに失したくらいですよ」

――JR北海道の経営は失敗したのでしょうか。
「違いますよ。 構造的な問題ですよ。
鉄道事業の損益は、営業エリアの人口密度に決定的に左右されるんです。
つまり、人口密度が1平方キロあたり350人を超えれば黒字を確保でき、350人未満なら赤字。
JR東海エリアの人口密度は511人で、100円売り上げれば40円の利益が出ます。
比べて北海道は68.2人で100円売り上げたら赤字が60円ですよ。
九州はまだ恵まれていて307人。100円の収入に対し7円損します」

――鉄道事業の赤字を埋めるため、JR北海道には6822億円の経営安定基金が設けられ、運用益を得られる仕組みができました。
九州も四国も同様です。
「でも当時想定した年7.3%という金利は、バブル崩壊でダダっと落ちちゃった。
北海道の目減り分は、30年間で総額5000億円近い。
国も多少基金の積み増しをしているけれども、ほとんど補填(ほてん)していない。
赤字の根っこですよ。
基金というストック、つまり一時金だったのがまずいんです。国は収益調整の義務がありますよ」


――収益調整とは。
「鉄道でもうかってしょうがないJR東日本、JR東海、JR西日本が利益の一部を出し合って、
北海道など赤字の会社を支援するということですよ。
鉄道事業の営業利益は東海が6000億円、東日本が3500億円。 ごく一部でいいんです」


――3社はいずれも上場企業です。株主の理解を得られますか。
「だから国が政策としてやらなきゃだめですよ。
国会や国民の議論も必要です。
線路は明治以来、国と国民が営々と作ってきたのであって、株主が作ったわけじゃない。
イギリスは鉄道民営化の時、地区を分けて列車の運行会社を入札で決めました。
もうかる地区を受託した会社の利益の一部で、人口密度が低い地区の会社を補助しています。
鉄道の公共性を認めているからです」


――国はJR北海道に対し2019、2020年度の2年間で400億円規模の財政支援をする見通しです。
「あとは地元で努力しろ、ということでしょ。
JR北海道の経営努力を求めるのはよく分かるけど、国の仕組みがおかしいから現状がある。
対症療法では根本的な問題解決にならないと思います」


――もし現役のJR九州社長だったら、北海道への支援を決断できますか。
「九州の鉄道事業は赤字だから“支援してもらう側”ですよ。
ただ多角経営のノウハウ提供や経営への助言は喜んでやります」


■札幌圏での多角経営、道新幹線の貨物輸送を増収の柱に
――JR九州は不動産事業など多角化で黒字を確保しています。
「努力しましたよ。社員をホテルや飲食店に出向させ、帰ってきたら『何でもやりたまえ』と。
アイスクリーム店やパン店、焼き鳥店。いろいろやりました。『ダボハゼ経営』と言われながらね」

――なぜ成功したのでしょう。
「優秀な社員に関連事業を経験させたからですよ。
関連事業が2番手扱いでは一流にならんですよ。

『(本体の)社長候補が来る』となれば、関連会社の社員も頑張るじゃないですか。
唐池(恒二・現会長)には、焼き鳥店も高速船事業もやらせた。
豪華観光列車ななつ星の食事なんかには、飲食業の経験が生きていますよ」

――JR北海道も関連事業の売り上げが連結ベースで5割近く、力を入れているとの立場です。
「比率より中身が大事です。 JR九州のマンション事業は九州トップですよ。
まだ北海道は本物じゃない。 関連事業の8割方は札幌圏に集中しているでしょう。
僕はJR北海道は三つの事業部に分けて経営するべきだと考えています」

――と言いますと。
まず札幌圏事業部。 200万人都市圏で快速“エアポート”など鉄道を目いっぱい便利にして、
マンション事業や飲食業など多角経営をやる。 

少なくとも札幌圏の赤字は埋める。

次に、その他の北海道事業部。 
鉄道は絶対にもうからないですよ。 上下分離して線路や施設の維持費は国なり道なりが負担する。
原資に鉄道が黒字のJR他社の収益を充てるわけです。
 極端に利用が少なく社会構造に合わない路線は廃止もやむを得ない」

――三つ目の事業部は。
「北海道新幹線事業部です。 柱は新幹線による貨物輸送。 
北海道新幹線は1日13往復しか走ってない。 
東海道新幹線は1時間に14往復もしていますよ。 高い金をかけて整備したのにもったいない。
さらに青函トンネルでは、貨物列車とのすれ違い時に時速140キロの減速運転をしています。
コンテナを在来線の貨物列車から新幹線車両に積み替えれば、本来の260キロで走れます。
コンテナ新幹線は200時速キロで十分。
フランスでは高速鉄道TGVの車両を使って貨物輸送を始めましたよ。

日本でも東海道新幹線の開業直前まで新幹線物流は検討されていた。建設費高騰でやめちゃったけど」

――JR北海道と、JR貨物にとってのメリットは何ですか。
「JR北海道は、線路の使用料が期待できます。
新幹線と在来線貨物列車が共用走行するための特殊なレール『三線軌条』もいらなくなるから保守費が安くなる。
北海道新幹線の札幌延伸時には、札幌~新青森間が従来の7時間半から2時間半に短縮されます。
速達性の向上はJR貨物にとって利益になるでしょう。
食糧基地であり、海を挟んで国境と接する北海道の鉄道は守らないとだめですよ


――道内でも勤務しましたね。
「最初は国鉄に入った直後の1956年、岩見沢駅の助役や小樽築港機関区の機関士の見習いをやりました。
馬そりが走っていた時代でしたよ。 
1971年からは苗穂工場の技術次長。 前任者が汚職でクビになった後だったから『元気を出そう』って励ましてね。
手稲山にもよくスキーに行きました」

――実習の頃は、まだ石炭輸送が盛んでしたね。北海道の鉄道は役割を終えたのでしょうか。
「あまりにお客さまの少ない路線はそうかもしれない。
でも、稚内とか網走とか根室とか国境に近い所の鉄道は、採算性が悪くても守らなきゃ。 貨物や観光に活用するべきです。 
日本の鉄道には『土俵』と『行司』が必要だって言ってるんです。
土俵はみんなが一堂に会して旅客も貨物も議論する場。
行司は、鉄道の現場も経営も分かっていて議論を主導する人です。
交通を制する者は天下を制する。 今、日本の英知が問われています


<略歴> いしい・よしたか 
1932年、広島県呉市生まれ。
東大工学部卒業後の1955年、国鉄に就職。
ディーゼル車両の開発を8年間担当後、札幌の苗穂工場次長に。
その後、首都圏本部長や九州総局長を歴任。
JR九州が発足した1987年に社長、1997年から会長を務め2002年に退任。
現在は、まちづくりNPO法人「福岡城市民の会」理事長を務める。
近著に「人口減少と鉄道」(朝日新聞出版)。福岡市在住。

<ことば>経営安定基金 
JR発足時、赤字が見込まれる北海道、九州、四国の3島会社に対し国が創設した計約1兆3000億円の基金。
各社が基金を元手に運用し赤字を穴埋めする。想定金利は当時の過去10年分の国債利回りの平均値から7.3%に設定。
JR北海道の場合、年間498億円の運用益が得られるはずだったが、
金利低下で2017年度は国による下支えを含めても310億円にとどまっている。

 <後記>
インタビューは3時間に及んだが、最後まで言葉は力強かった。
「鉄道問題のシンポジウムの講師で呼んでよ。いつでも行きますよ」と北海道への愛着の深さをにじませた。
記者が持参した著書に「弁慶号です」と言って、明治期に道内を走った蒸気機関車の絵を描いてくれた。
道内と九州では気候も人口密度も違う。 
ただ、一から多角経営の礎を築いた人の言葉は、北海道にも参考になるはずだ。
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