水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第百二十回)

2010年10月24日 00時00分02秒 | #小説
  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百二十回
だが、瞑想(めいそう)の途中に声をかけるというのも憚(はばか)られ、私は静かにドアを閉じた。
「これは…、塩山さんでしたか。来られることは玉のお告げで分かっておりました。しかし、予想より三十分ほど早かったですなあ」
 沼澤氏は座禅の姿勢を崩さず、そのまま両の眼を静かに見開いて云った。
「なんだ…お気づきでしたか。いや、実は私も玉のお告げがあったのです。会館へ行きなさい、って云われまして…」
「ほう…、すでに塩山さんにも霊力が宿ったようですなあ。この前、お会いした時は、すごく気になさっておられましたが…」
「いえ、今も気にはなっているんです。っていうか、この先、自分がどうなるかという漠然とした不安は相変わらず有ります。それに、異変が今後、起こるとして、それがどういう内容か、ということも…」
「そう気になされず、自然に身を任せればよろしいでしょう。明日(あした)は明日の風が吹くと…」
「はい、そうすることにします。それにしてもお告げが初めて会った時は驚きましたよ」
「ははは…そうでしたか。この前、お電話で自覚できるのかって心配されておられましたが、そのような次元の低い話でないことは、お告げを体験され、分かって戴けたと思います」
「はあ、それはもう…」
 思わず私は、そう答えていた。

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