水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第百二十七回)

2010年10月31日 00時00分02秒 | #小説
  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百二十七回
あとから気づいたことだが、会社で何げなく話していた時、それは発覚した。
 早希ちゃんとの初詣も終わり、数日すると新年の初出勤となった。
「いやあ、参りましたよ。お邪魔になるだろうと思い、早々に退散しましたが、まさか課長が若い娘(こ)と歩いてるなんて、思ってもいませんでした」
「ははは…、私だってまだひと花、咲かせるつもりなんだ。まさか、とは聞き捨(ず)てならんぞ」
 私は笑いながら、児島君に冗談めかして云った。
「あの時は云ってなかったんですが、妙なことがありましてね。それで私は新眠気(しんねむけ)の友人を訪ねたんですよ」
「なんだい? 妙なことって」
「いや、それがですね。あの日は、正月二日でしたよね?」
「ああ、そうだったな」
「それが…」
「どうした?」
「信じてもらえないでしょうが、お話しします。実は、あの日の朝はいい気分で一杯、飲んでたんですよ」
「そりゃ、正月だからね。…それで?」
「銚子を一本ばかりチビリとやってますと、急に友人の顔が浮かびましてね。無性に会いたくなったんですよ」
「そりゃ、そういうことだってあるだろうさ。仲がいいなら尚更(なおさら)だ。思い出した訳だなあ。…完璧に信じられるられる話だが、それがどうかしたの?」
 私は児島君がなぜ云い渋るのか不思議で、しようがなかった。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 残月剣 -秘抄- 《残月剣④》... | トップ | 残月剣 -秘抄- 《残月剣④》... »
最新の画像もっと見る

#小説」カテゴリの最新記事