水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (6)逆

2021年12月12日 00時00分00秒 | #小説

 逆もまた真(しん)なり・・とは、よく言われる。暗いから暗い・・と決まった訳ではなく、逆に明るいからといって必ず明るいという訳でもない・・ということになる。小難しくなるが、表面の裏に隠された内容、そのものが明るいか暗いか? という本質の違いだ。
 長閑(のどか)だった昭和四十年代のある晴れた日である。とある商店街の一角で、この商店会主催による歳末商戦の福引が行われている。
『はいはいっ! 出ました、出ましたっ!! 一等、二泊三日っ!』
「おいっ、二泊三日って言ってるぜっ!」
「旅行クーポンだろっ! 行きたかったが、出ちまったもんは仕方がないっ!」
「三等のカセット・レコーダーは出たか…。すると、残りは二等の…二等はなんだったっ!?」
「二等? 二等は保温ポット!」
「ポット?」
「そう、ポット。ポットっ!! それにしても行きたかったなっ! 俺は、五等の茶碗セットだったからな…」
 その後、二等にも漏れた二人はブツブツと話しながら福引の場から去っていった。
 そして月日は流れ、晴れて元日となった。
「お前、行かなくってよかったよっ! 逆だ、逆っ!! あのクーポンのエアーバス、墜落で全員、即死だってよっ! 行ったら死んでたぜっ!」
「茶碗セットでよかった・・ってことかっ!?」
「まあ、そうなるな…。ゆっくり、茶でも淹(い)れて啜(すす)りゃいいさっ、ははは…」
 逆はいい場合だけでなく、悪い場合もある・・ということになる。逆に、悪い場合だけでなく、いい場合もある訳だ。逆は、ややこしいのである。^^

                   完


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