水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (33)疲れ

2022年01月08日 00時00分00秒 | #小説

 疲れが増せば、体調は悪くなる。さらに悪くなれば、過労となってバッタリ倒れてしまう・・ということだって起こりかねない。先だって観ていた大河の明智十兵衛さんが倒れられたのも、たぶんこの過労を含んだものだったろう。^^ 過労は命にかかわるから看過(かんか)出来ない。とはいえ、社会はどうしても仕事上の過労を人々に与えるから困りものだ。^^
 とある官庁である。
「毛鼻(けばな)君、もう書類のコピーは出来たのかいっ!?」
「はあ、出来たことは出来たんですが、書類にミスがありまして…」
「ダメじゃないかっ! 明日から担当課長会と管理者会だよっ! 残業してでも完成させてくれよっ!」
「はいっ!!」 
 毛鼻は三日後に発令される人事異動[内示]の課長補佐候補だったこともあり、疲れてます…とも言えず、従順な大声で返した。
 そして、その夜の七時過ぎ、ようやく書類は完成し、コピーが開始される運びとなった。だが、不運なことに、積る疲労が毛鼻の意識を遠ざけていった。
 気づけば毛鼻は病室のベッドに横たわっていた。結果、数日後の人事異動の内示はなく、毛鼻は万年係長の道を、ひたすら邁進(まいしん)させることになったのである。
 疲労は明るい出世を妨(さまた)げ、気分を暗くさせるから、程度モノ!! という戒(いまし)めの一話である。^^

                   完


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