水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

甘辛(あまから)ユーモア短編集 (95)妨害(ぼうがい)

2021年08月23日 00時00分00秒 | #小説

 今日は少しも面白くない話で恐縮です。^^;
 人はなぜ人の行為を妨害(ぼうがい)しようとするのか? が私には分からない。客観的に観ていると、そうしようとする意図(いと)がよく見えるからである。辛(から)く考えれば、作為のある犯罪だし、甘(あま)く捉(とら)えるなら、善意のために思わず良かれと思って成した行為となる。これとて、その人が果たして有難い…と思ってくれるかどうかは不透明なのである。迷惑に思っているかも分からないのだ。^^ だから、妨害するのはやめよう! という結論が導けることになる。妨害しても自分の値打ちを下げるだけで、何一ついいことはない筈(はず)である。^^
 とある病院の再診受付機の前である。一人の男が病院の中に入ってきた。目の前に見えるのは再診受付機である。男は瞬間、思った。
『あっ! 今日は、もう稼働しているな…』
 この男は土・日・祝祭日を除き、日々、病院へ通う患者だったから、再診受付機のことはよく知っていた。男は前に並ぶ人がいなかったから、馴れた手つきで診察券を受付機へと入れた。そのとき、一人の女性の声がした。
「おっちゃん! そんなことしたらあかんでっ! 待ったはる人があるんやから…」
 こんな経験をお持ちの方も、たぶんおられることだろう。^^ 男は、[1]並んでいる人がいない、[2]受付機が動いている・・という目の前の光景を瞬間、確認し、診察券を入れたのである。要は、何も間違った行為をしていた訳ではないということになる。座って待っていた老人、声をかけた女性を男は見たのだろうが、受付機が稼働しているのだから、もう受付を済ませた人か…と思っても致(いた)し方ない訳だ。
「すみません…」
 男は老人に謝(あやま)る必要がないにもかかわらず、思わず謝っていた。こうした場合の図式は、まあ、そんな大げさな話じゃない・・と言ってしまえば、それまでのことになる。ただ、犯罪構成の一要因ともなりますから、皆さんもご注意をお願い致します。^^

 ※ よくは分かりませんが、法学では、こうした行為を未必の故意と呼ぶそうです。^^

                   完


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