水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (72)寂(さび)しい

2021年01月12日 00時00分00秒 | #小説
 失敗した訳でもなく、なんとなく気分が寂(さび)しいことはありませんか? 私なんか、寂しくて寂しくて…というようなことではないが、やはり寂しい今日この頃である。^^ この寂しい・・という気分を考えれば、つまり寂しい訳だ。^^ 寂しく感じるのは思いようによるものだが、同じ状況だとしても人それぞれで違う。
 庭に落ちた晩秋の落ち葉を見ながら、老人が一人、物思いに耽(ふけ)っている。ついこの前までは一緒に妻とこうして見ていたな…と、老人は寂しい気分に苛(さいな)まれていた。はは~~ん、お亡(な)くなりになったのか? と皆さんはお思いのことだろう。さにあらず、さにあらず[時代劇的な古い表現]。^^ 妻はとあるヨ-ロッパへ旅立ったのである。老人も行きたかったのだが、どういう訳か、俄かの腰痛が再発し、断念したのだ。キャンセルせざるを得なくなったとき、寂しい気分に老人は苛まれたが、今、それと同じような寂しい気分に老人は苛まれていた。そのとき、家の外から、「♪石焼芋~~石焼芋~~~♪」という音が流れてきた。老人の寂しい気分は一瞬にして吹っ飛んだ。
 ものは思いようで、寂しい気分が消え去るのは、案外、単純な出来事によるのだ。^^ 

                      

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