水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (19)雪だるま論争

2020年11月20日 00時00分00秒 | #小説
 いつまでも残らない…と分かっていても、子供達は雪だるまを作る。ただひたすら、作る。ところが、大人になると打算的となり、すぐ融(と)けると分かっているそういう無意味なものは作らない! と、こうなる。^^ 思いようによっては、社会の中で生きる術(すべ)を大人は身につけていて、人生を生き抜く防衛手段で無意味なものは作らない・・ともいえる。^^
 牟田橋(むだはし)乃(ない)は名前そのままで、決して無駄はしない古参キャリアのOLだった。
「牟田橋さん、これコピ-お願いねっ!」
「課長! またですかっ!? 昨日(きのう)も同じコピ-取りましたよねっ! 机の中にあるんじゃないですかっ!?」
「いや、それが…、探したんだけどねっ!」
「もっと、よく探してくださいよっ! 雪だるまみたいに融けてなくなりゃしないんですからっ!」
「相変わらず怖(こわ)いねっ、君はっ! 僕が言ったんだから、黙って『分かりました…』でいいだろっ!?」
「言っときますが、私はそういう無駄なことはしない性分(しょうぶん)の女なんですっ!」
「性分かなんだか知らないけど、やってくれりゃいいじゃないかっ! これは業務命令なんだよっ!」
 課長の井麹(いこうじ)は苗字(みょうじ)そのままで、意固地(いこじ)になった。^^
 両者の雪だるま論争は凍(こお)りついたように、その日、ずぅ~~っと続いた。他の課員達は、馬鹿馬鹿しい…とばかり、二人を無視し続けた。
 雪だるま論争は、融けようと融けまいと無視するのが思いようによってはいいようだ。^^

                    

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