水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思いようユーモア短編集 (17)曇(くも)り空(ぞら)

2020年11月18日 00時00分00秒 | #小説
 この男、立花も通勤の出がけ、迷いに迷っていた。
「…弱ったなっ! どうするか?」
「何も弱ることないじゃないっ! 持って出りゃいいのよっ! 持って出りゃ!!」
「ああ、まあな…。そりゃ、そうなんだが、立て続けに二度、地下鉄(メトロ)に置き忘れたかったらなぁ~」
「そんなことだろうと思って、ほらっ! 黒い長い紐(ひも)付けといたから、ズボンのバンドに括(くく)りつけておきなさいっ! 黒いからあまり目立たないでしょ!」
「はい…」
 心の蟠(わだかま)りが解けたのか、あれほど迷いに迷っていた立花は、妻の尻(しり)押しでスンナリと玄関から出た。
 ものは思いようで、曇り空のように迷いが生じたときには、迷いを晴らす解決策を考えれば、何の問題もなくなるのである。^^

                   完

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