水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

忘れるユーモア短編集 (15)予定

2020年04月29日 00時00分00秒 | #小説

 決めていた予定を忘れることがある。誰も忘れようとして忘れる訳ではないが、俄かの用とか不測の事態などが起きたときに忘れる場合が多い。しかし、食べることを忘れる者がいないのは不思議といえば不思議だ。^^
 とある弁護士事務所の所長と所員の会話である。
「あ~君! 新幹線のチケット、取っといてくれた?」
「新幹線のチケット? なんですか、それっ?」
「馬っ鹿! 二日前、弁護士会があるから取っといてくれ、って言ったよねっ!」
「… そうでした?」
「そうでした、って君っ!」
「あっ! ああ、そういえば…」
「言っただろっ!」
「はい、確かに予定が入ったから取っといてくれって言っておられました…」
「だろっ!?」
「はい。でも、昨日(きのう)、その予定が中止で消えたから、チケットをキャンセルしてくれって言われましたよねっ?」
「ええっ! そうだった?」
「言われました、言われましたっ! 私、駅へまた足を運びましたから…」
「? …ああ、そうそう! すっかり忘れてたよ。で、渡したお金は?」
「えっ!? ああ、でしたよね…」
 所員は、チャッカリしてるな。そういうことは憶えてるんだ…と思ったが、口にはせず笑って返した。
 予定は忘れても、お金のことは忘れることがない・・というお話である。^^

                                   


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