水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

疑問ユーモア短編集 (96)リサイクル

2020年04月10日 00時00分00秒 | #小説

 とある日の午後、田坂は飲んだ缶ビールの空き缶が溜(た)まったのを見て、リサイクルに出そう…と単に思った。田坂が溜めておいたということはリサイクルに出すつもりでいた・・ということに他ならない。^^ ということは、田坂には、そうしよう…というリサイクル心が少しはあった・・ということになる。しかし、である。田坂には、そんな心は少しもなかった、といえば、皆さんは、? と、疑問に思われることだろう。田坂のその辺(あた)りの深層心理を紐解(ひもと)くことにしよう。紐解かなくても括(くく)ったままでいいんじゃないか? と思われる方もお有りだろうしそれが当然だが、そこはそれ、敢(あ)えて紐解きたいのだから仕方がない。^^
 田坂は市のゴミ出し表でリサイクルのゴミ日を調べた。すると、段取りのいいことに、明日だと分かった。 「おっ! これは、これは…」  田坂は、したり顔になった。ところが、市が委託した業者の都合で、その日が回収されなかったことを田坂が知ったのは二日後の夜である。
『田坂さん! すみませんねぇ~。リサイクルのゴミ日は月末までありませんから、申し訳ないんですが、取りに来て貰(もら)えませんか?』 
 気づいた同じ町内の牧野から電話だった。
「えっ! 昨日(きのう)じゃなかったんですかっ!?」
『昨日は業者の都合でなかったですよ。お知りじゃなかった?』
「ええ、全然! それじゃ、すぐ取りに寄せて貰いますっ! ご迷惑をおかけし、申し訳ありませんっ!」
『い~えぇ。明日の朝でもよろしいですよ』
「いや、すぐにっ! どうもっ!」  田坂は電話を切ると、すぐに家を飛び出した。ゴミ置き場は近く、田坂の家から僅(わず)か数分の距離だった。さて、そのときの田坂の深層心理だが、そこを詳細にご紹介したいと思う。^^
『そうか…。回収がなかったのか…。ということは、今度の回収日だと、かなり溜まるな…。それならそうと市も知らせてくれりゃいいのに…』
 市が態々(わざわざ)、田坂個人の家へ『コレコレ、シカジカですよっ!』と知らせてくれる訳がないのに、田坂は勝手に心で愚痴(ぐち)った。溜まって捨てないとっ!…くらいの気分で、田坂には少しもリサイクル心はなかった訳である。
 今の時代、ポイ捨てる人が増えているが、物を大事にしよう! というリサイクル心を取り戻(もど)して欲しいものだ。…などと、偉(えら)そうなことは少しも考えていない。^^

                               


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