水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

楽しいユーモア短編集 (43)邪魔

2019年11月08日 00時00分00秒 | #小説

 総(すべ)てが自分の意に叶(かな)えば、それはもう楽しい気分になることだろう。だが、そういつもいつも叶うということにはならない。そこには、そうはさせじっ! と妨害(ぼうがい)する邪魔が存在する訳である。最近のような殺伐(さつばつ)とした時代では、特にその傾向が強く、油断は出来ない。邪魔に勝つには邪魔を知ることが必要となる。邪魔は邪魔をしよう…と、邪魔邪魔と刺す機会を窺(うかが)っているのだから、邪魔に刺されない防御(ぼうぎょ)が必要となる訳だ。そのためには邪魔を知ることが肝要となる。邪魔を知り、その対抗措置を事前に取れば、邪魔も邪魔邪魔と手出しは出来ず、魔が刺さないことになる。^^
 とある駐車場である。
「あんたの車、邪魔だよっ!! そんなところへ止めてっ!」
 駐車場の所定場所でもないのに、自動販売機があったから・・という、ただそれだけの理由で魔が刺して車を止めた男が、前方から出ようとした車の男に言いがかりをつけられた。自動販売機前の男は楽しい気分が台無しで、少しイラッ! とした。都合の悪いことに、自動販売機前の通路の幅(はば)は広く、避(よ)ければ十分、対向できたのがいけなかった。
「通れるだろうがっ!」
「なにっ!!」
「なにとはなんだっ! 車から下りろっ!!」
 二人の男は邪魔の計略に、まんまと乗ってしまったのである。邪魔は、ここしばらく邪魔邪魔していなかったから、ちっとも楽しい気分ではなかった。そこへ、とっておきの二人の男が現れた・・と、まあ話はこうなる。ところがそこへ、駐車場の老いた警備員がヒョコヒョコと歩いて二人の男に近づいてきた。
「まあまあ、お二人。そういがみ合わず、私の顔を立てて…。実は私、揉(も)めごとがあると、クビになるんですっ! ぅぅぅ…」
「はあ…」「…」
 泣き始めた老警備員に、二人の男は悪いことでもしたかのように一礼して矛(ほこ)を収(おさ)めた。邪魔としては、チェッ! いいとこだったのにっ!! くらいの気分である。片や二人の男は、しばらくすると老警備員を助けたような楽しい気分になった。老警備員も当然、ことがなかったから楽しい気分だ。邪魔だけが、ちっとも楽しくなかった・・ということになる。
 悪いことが起きたとき、邪魔は楽しい気分になる訳だ。^^

                                


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