水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ⑤<24>

2015年06月26日 00時00分00秒 | #小説

『ホッホッホッ…気になどしておりません。ふむ! 立国といえば、この国では建国記念日というのがござるが…。そういう意味ですかな?』
『いや、どうだか。僕には…』
 小次郎には分からず、語尾を暈(ぼか)した。だが、老猫の股旅(またたび)が言うのだから、何かその辺りに里山がその時、言った意味が隠されているようにも思える。
『先生! ひょっとすると、それかも知れません』
『んっ? と、言われると?』
『僕に猫王国を作れと…』
『猫王国でござるか…。それはドでかい閃(ひらめ)きですな』
 股旅は片手の毛先を舌で舐(な)め、顔を拭(ふ)きながら言った。朝の洗顔を忘れていたことを、不意に思い出したのだ。
『いや…ご主人がそんな大それたことを一瞬にしろ考えたとも思えないんですが…』
 小次郎は語尾を濁(にご)した。
『それはともかくとして、里山殿はこの先も小次郎殿を駆使されるご所存かな?』
『駆使? 駆使されることはないと思いますが、今後もタレント猫としての猫生を歩むことになろう・・とは思います』
『なるほど…』
 股旅は口毛(くちげ)を微細に動かして得心した。人間なら首を動かして…となる。


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