水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スビン・オフ小説 あんたはすごい! (第ニ百三十四回)

2011年02月15日 00時00分01秒 | #小説
 あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第ニ百三十四
 酒の勢いも手伝って、私はそこで意識が遠退き始めた。そして、フラフラと寝室の方へ行ったように思う。思うというのは、このあとの記憶が飛んでいるからだ。気づけば空が白み始める早暁(そうぎょう)であった。私は廊下で大の字になって眠ってしまっていたのだ。起きた私は、後片づけをしてからシャワー湯を浴び、さっぱりとした。酔いが上手く回ったせいか、二日酔いには幸いならずに済んだ。この日は鍋下(なべした)専務に会う出社日だった。A・N・Lで軽く朝食を済ませ、久しぶりに禿山(はげやま)さんの照かった頭を拝見するか…などと呑気(のんき)に思った。昨夜はお告げが途中になったが、今回はあちらのせいではなく、こちらが睡魔に襲われたのだから仕方がない…と思えていた。この一件も禿山さんに報告しようと考えながら服に着替え、家を出た。ようやく辺りは人の気配がし始めていた。
「おはようございます」
「…ああ、おはよう」
 車に乗ろうとしたとき、いつもの通りかかる牛乳配達の青年が声をかけてきた。学生風に見えたが、たぶんアルバイトをしているのだろう…と思えた。勝手に想像して、感心な若者だ…と、これも勝手に心で褒(ほ)めた。実のところはどうなのか…、そこまでは分からない。

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