あんたはすごい! 水本爽涼
第百十四回
「いや、そう身を乗り出されても、それ以上のことは今の私には分りません。沼澤さんなら話は別ですが…。なにせ、沼澤さんは霊術師をされているんですから」
「えっ? そんなもんで食えるんですか? いや、そんなもんと云ったのは撤回しますが、…しかし、やはり、そんなもん、ですなあ…」
「それが週二回、眠気(ねむけ)会館で教室を開いておられるんですよ。会員も結構、入っているようでして、当然、実入りもそれなりに…」
「そうですか…、教室をねえ。まあ、十人十色と云いますからなあ」
「そうなんですよ。以前の私と今の私の違いのようなもので、不思議な体験をお持ちの方は信じますよねえ」
「塩山さんも、その口でしたな?」
「はい…。沼澤さんから二度ほど、あんたはえらい! と云われ、その頃から自分は普通の自分ではないのだ、という先入観に苛(さいな)まれ、無意識のうちに信じているようです」
「いや、それはそれで結構なことだと思いますよ。霊力で人類のヒーローになって下さい」
「いやあ、とんでもない! そんな大それた者にはなれませんが…」
私は謙遜して否定したが、内心では全否定していなかった。ひょっとすると、私は人類のヒーローになるよう、玉に選ばれた逸材かも知れない…と思えてくるのだった。
第百十四回
「いや、そう身を乗り出されても、それ以上のことは今の私には分りません。沼澤さんなら話は別ですが…。なにせ、沼澤さんは霊術師をされているんですから」
「えっ? そんなもんで食えるんですか? いや、そんなもんと云ったのは撤回しますが、…しかし、やはり、そんなもん、ですなあ…」
「それが週二回、眠気(ねむけ)会館で教室を開いておられるんですよ。会員も結構、入っているようでして、当然、実入りもそれなりに…」
「そうですか…、教室をねえ。まあ、十人十色と云いますからなあ」
「そうなんですよ。以前の私と今の私の違いのようなもので、不思議な体験をお持ちの方は信じますよねえ」
「塩山さんも、その口でしたな?」
「はい…。沼澤さんから二度ほど、あんたはえらい! と云われ、その頃から自分は普通の自分ではないのだ、という先入観に苛(さいな)まれ、無意識のうちに信じているようです」
「いや、それはそれで結構なことだと思いますよ。霊力で人類のヒーローになって下さい」
「いやあ、とんでもない! そんな大それた者にはなれませんが…」
私は謙遜して否定したが、内心では全否定していなかった。ひょっとすると、私は人類のヒーローになるよう、玉に選ばれた逸材かも知れない…と思えてくるのだった。