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ダイナミックレンジって・・・どうよ?

2014-08-22 00:21:52 | ダイナミックレンジって・・・どうよ?

近頃のカメラのおウワサには、割と頻繁にダイナミック・レンジってのが出てまいります。
・・・で、これってどうなのよってお話です。

このカメラのダイナミックレンジのウワサをさかのぼって行くと
Dxo MarkかGanrefという所にぶつかる。

Dxo Markって所はどうにも曲者で、いくら探しても何をどう評価・数値化したのか
具体的な解説には至らない。
(探し方が悪いだけで実際にはあるのかもしれないが)
かろうじてRAWベースでテストし、撮像センサの性能評価と主張していることくらいの
情報が出てくるくらいであった。

でもこれね、センサレベルのハナシならRAWのbit深度に支配されるんじゃね?って思う。
つまり、12bit RAWなら約12EV、14bit RAWなら約14EVにしか原理的にはなりようがない。
RAWデータってのはセンサのフォトダイオード直結(寄生)のコンデンサに充電した電荷を
フォトダイオードの光電流(光量比例)で放電して行き、
露光時間後にコンデンサに残った電荷による開放電圧(露光量比例)をソースフォロワ回路で
できる限り露光量比例を維持して取り出して、A/D変換したシロモノになっているはずだ。

(光量ゼロの出力ゼロ値は計算が成り立たないから除外して)
だから、最小出力値1となる光量を2倍した量の光を与えた出力値は2となる。
つまり1を元にすると1EV増(2倍)の出力が2だ。
同じく2EV増は4倍(2の2乗倍)の4になる。
だから14EV増は2の14乗倍で16384・・・となりたい所だが、
14bit RAWは出力範囲0~16383なので、ひとつ手前の16383でサチってしまう。
(だから原理的に14bit RAWはダイナミックレンジ14EVと述べた)
なのにD800の評価結果が14bitRAWなのに14.4EVってありえないじゃん?

この疑問点を説明する情報はどこにも見当たらない・・・から、Dxo Markのレポートは信用しないのである。


もう一方のGanrefなんだが、これも「なんだかなぁ」なのである。

GanrefではDxoと違って、何をどう測ったのか簡単にではあるが説明してある。
いわく・・・

テストターゲットは、濃度ステップが露出値換算で1/3段に相当の刻みで41ステップあるチャートを使用。
ダイナミックレンジの測定には、チャートの濃度を露出レベルに置き換えて横軸にとり、
各ステップの出力レベルを縦軸にとって特性曲線グラフ化。
グラフから中間グレーの出力レベル118が得られる露出レベルを読み取り、原点とする。
特性曲線から読み取った、白トビしたと判断できるポイントの露出レベルをハイライト側ダイナミックレンジ。
黒つぶれしたと判断できるポイントの露出レベルをシャドー側ダイナミックレンジ。
ダイナミックレンジ(合計)とは、ハイライト側及びシャドー側のダイナミックレンジの合計。トータルのダイナミックレンジを表します。

としか書いていない。
Ganrefの最もイタいところは、白トビ・黒つぶれしたと判断できるポイントの基準が不明確なコトだ。
また、Jpeg撮影した画像からデータ値を抽出しており、その時の元画像を公開しているのは良いのだが、
画像はカラー撮影したものなので濃度ステップ毎の値を見ると、大抵はRGB値が若干異なる。
このRGBのズレをどう扱ったのかについては言及していない。

・・・で、せっかくGanrefさんが元画像を公開してくれているので、
これを使って同じように特性曲線をグラフ化し、ダイナミックレンジを調べてみた。

まずグラフ化の前に白トビ・黒つぶれの判断基準を決めるために下の画像を作成した。


この画像はPhotoshopでLabカラーモードにしてチャンネル分離し、
そのL(輝度)チャンネルにおいて4ステップごとの輝度変化を短冊状に塗り分け
各ステップの輝度値を記入して作ったものである。
(PhotoshopのLabのL:輝度とYCbCrのY:輝度とは若干異なるようだが、今回は統一してLabのLを使用することとした)

この画像を朝な夕なにじぃ~っと眺めて、どのあたりで白トビ・黒ツブレを感じるかを考えた。
・・・で、ワタシは
L値20・16はグレーだが12以下はもはや黒である。
L値243以下はグレーだが247はむしろ白に近い。
と判断した。(247が白かは微妙で悩んだ)

コレより少々キリの良い数字を取って視感上のダイナミックレンジはL値15から245までと基準を定めた。
また、レタッチ処理に使用でき得る範囲としてのダイナミックレンジをL値4から250までと定めた。
このレタッチ範囲は250overだと色飽和の可能性が高いと考えられ、
4未満では実際の画像にノイズ影響が見られたり、その影響によるバラツキをEV数値で見ると
EV値変化が大きくなりすぎる様子が見られたため、この範囲までとした。

いくつかのカメラに関してGanrefのチャート画像を元に作成した特性曲線を以下に掲載する。

言うまでも無いが青線が特性曲線で、対象機種は凡例の記載を参照されたい。
赤線はワタシが定めた視感上のダイナミックレンジの範囲。
グレー線はワタシが定めたレタッチ対象のダイナミックレンジの範囲。
黄色線はGanrefが結論としたダイナミックレンジの範囲である。
各ポイントの値の抽出では、元画像をPhotoshopでLab分解し、L値を抽出している。
なお、原点のL値118やワタシが定めたL値245などのポイントは直近3点の値から
2次関数近似で補間して求めている。

お気付きの方も多かろうが、各ダイナミックレンジ範囲のハイライト側の端を見比べていると、
大抵はGanrefの判断ポイントが一番ハイライト寄りなのだが、PEN E-P5ほか数機種では
グレー線の内側に沈んでいる。
(EOS 70Dでは赤線よりも内側、つまりL値245未満になっている!!)

基準が不明確というGanrefのイタさが露呈した部分である。
グラフの見た目ではわからないシャドー側はどうなっているのかを確認して一覧にすると・・・



ハイライト側は243.4から254.4で、シャドー側もL値0.9から2.3でバラついている。
(L値は直近値から補間計算しているので小数点以下の値が出る) 

このバラツキは基準を設けず、都度、担当者の感覚で「えいやっ」で判定しているためなのか
単なる計算ミスあるいは誤記でのWeb掲載なのかはGanrefのみぞ知るところではあるが、
Ganrefの組織は「えいや判定」の企画を通してしまうレベルか、
誤りを見逃して世間にリリースしてしまうチェック体制ということであり、やはり信用するに足りない。



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