鳩に襲われる

中学から友人のS君が我が家に来る。
CDを借りに来たらしい。しかもガンズを。
とりあえずCDを渡すと、時間もまだ余裕があるし中学へ行こう、と言われる。


二人で校庭を歩いていたのだが、花壇の辺りに20羽ほど鳩がいる。
みな普通の鳩よりも白い。白地にインクを飛ばしたように細かく黒い斑点模様がある。
揃ってこっちをずっと見ているので気味が悪く、二人で追い払おうとする。
しかし距離を取らないのだ。近寄れば後退するのだが、こちらが踵を返すスキに
また前進しているのだ。本当に気味が悪い。
仕方が無いから諦めて校舎に向かおうとした矢先、鳩達は襲ってきた。


なまじ飛び続けるコトが出来ないものだから、低い高度で飛び、
こちらの頭をかすめながら着地、これを往復させて何度も攻撃してくる。
これは危ない。
鳥類独特の異臭が漂い、視界が羽毛で遮られ、抵抗する気も失せてきた。


そんな時だった。
妙な痛みを感じる。
頭だ。
切り裂かれる痛みではない。
クチバシに突かれるような痛みでもない。
爪だ。紛れもなく。
どうやら僕の頭上に乗っているらしい。
これは堪らない。いくらなんでも、やっていいコトと悪いコトがある。


とりあえず殴ることにした。
しかし、どうも勝手が悪い。
頭上にパンチを打つのに、ここまで力が入らないとは。
仕方が無い。数を打つしかない。
そんな中でも、当たった感触はある。力は入らずともクリーンヒット。
しかし頭上の重さは消えない。
手には吹っ飛んだ感触が残る。いったいなんなんだ。
瞼は降りっぱなしでSなどもう見えない。
砂塵と羽で咽る。鼻を突く異臭は一層酷くなっている。
そして、途切れた。


まったくもってSは不幸を招く。
前は深夜に現れ、高さ20mはある崖でクボヅカをやらされた。
その前にもさらにその前にも。色々不幸に合わされてきたが、
そろそろ人の夢に出てくるのはやめてもらいたいモノである。
殴り飛ばした鳩は布団になり、枕元の携帯やスピーカーを軒並みひっくり返していた。
おかげで悪い寝覚めになった。
このツケは後日清算してもらうとしよう。