温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

みずほ温泉 埼玉スポーツセンター天然温泉

2019年03月27日 | 東京都・埼玉県・千葉県
久しぶりに埼玉県のネタを投稿させていただきます。埼玉県平野部の地中深くには、古東京湾の化石海水やそれに由来する地下水が大量涵養されており、地中で温められたそれらの地下水をボーリングで汲み上げることにより、温泉として利用されています。
今回取り上げる「埼玉スポーツセンター天然温泉」もそんな温泉施設の一つであり、温泉ファンから折り紙が付けられるほどお湯が良いことでも有名です。



まずは埼玉県民の一大集積地である池袋から東武東上線に乗り、みずほ台駅で下車。そして西口の駅前ロータリーから路線バスに乗り継ぎます。このロータリーから発着してる路線バスは1本しかなく、それゆえバス停も1つしかありませんので迷うことは無いでしょう。ライフバスという会社が運行しているのですが、会社の規模が小さい為か、運賃支払いは現金のみで交通系ICカードは使用不可。でも時刻はナビタイムで検索できます。地方の小さな路線まで網羅するナビタイムってすごいですね!



広大な農村風景の中に、住宅、工場、倉庫といった統一感の無い建物がモザイク状に建つ、埼玉県の郊外らしい車窓を眺めながら約5分ほど乗車して「埼玉スポーツセンター」停留所で下車。バスが来た道を若干戻る感じで歩いてゆくと・・・



今回の目的地である「埼玉スポーツセンター天然温泉」に到着です。



スポーツセンターという名前の通り、広大な敷地の中には温泉浴場のほかに、ゴルフの打ちっぱなし、テニスコート、フットサルコート、ボウリング場など、体を動かして楽しむ様々な施設が併設されていますが、今回私は温泉のみ利用しました。ちなみにこの「埼玉スポーツセンター」は、東上沿線の県内各地に広告看板を立てていますので、私も以前からその存在は知っておりました。おそらく地元の方には相当知名度が高い施設なのかと思います。

館内は撮影しておりませんので、ここから先はパンフレットに掲載されている写真を使わせていただきつつ、文章を中心にレポートさせていただきます。

玄関を入り、靴用ロッカーに下足を預け、受付で下足箱のカギと引き換えに脱衣室のロッカーキー付きリストバンドを受け取ります。なお料金は後払いです。正直なところを申し上げますと、田舎臭いネーミングや立地などから、あまりホスピタリティには期待していなかったのですが、受付の方の丁寧な接客にまず良い意味で期待を裏切られました。
受付を済ませたら、薄暗くシックな内装が施されている通路を歩いて浴場へ。たしかに落ち着いた大人な雰囲気を醸し出しているのでしょうけど、とはいえ安普請な感じは否めず、いささか背伸びをしちゃっているような感を受けます。また、話が前後しますが、湯上がり後にゆっくり寛げるような休憩スペースがあまり広くないので、せっかく作りだしたその雰囲気を活かせないのもちょっと残念なところ。



脱衣室を抜けて浴場に入りますと、正面に掛け湯が設けられており、そこから左右に通路が分かれています。
左側を進んだ先にあるのは、洗い場と2つの浴槽です。洗い場には、左右の壁に計14、中央の島に計12、そして奥の壁に4、合計30ヶ所のカランが設置されています。一方、洗い場の向かいには内湯の主浴槽である「静」と泡風呂の「舞」が隣り合っており、前者は石板張りの7~8人サイズで、後者は寝湯のようなスタイルで利用します。いずれも循環された温泉が張られており、露天を眺める大きな窓からは陽光が降り注ぐので、明るく気持ち良い入浴環境が保たれています。さらに、洗い場の奥へ延びる通路を進めば、ドライとミストの両サウナや水風呂へと続きます。


露天ゾーンの中央にはこの施設の主役と言うべき浴槽「和」や「極」があり、それらを取り囲むように多種多様な浴槽がありますので、簡単にご説明します。


内湯に近い方には循環した温泉を加温して熱めの湯加減にしている浴槽「熱」と、その隣に井水加温循環で円形浴槽の「蘇」が隣り合っています。



そして、ちょっと高いところに設置されている「極」へ登る階段の途中には寝湯の「夢」、一人用浴槽の「独」(2つ)が据え付けられています。「夢」の浴槽は石造で4人用。「夢」も「独」も循環した温泉が張られています。



露天ゾーンの中央に盛られた築山の上に設けられた浴槽は「極」。10人サイズの岩風呂なのですが、その名が示すようにこの浴場では極め付けのお風呂とでも言うべき存在であり、加温された源泉がかけ流されていて、赤茶色に染まった湯口から源泉のお湯が絶え間なく供給されていました。また源泉が持つ個性をなるべく損なわないようにするためか、加温は必要最低限に抑えられているため、人によってはかなりぬるく感じるかもしれませんが、ぬる湯好きな方にとっては体への負担が軽い状態でじっくりと長湯することができるでしょう。
この「極」を満たしたお湯は、その下にある浴槽「和」へと流れてゆきます。「和」は見た感じが優しい8人サイズの木の浴槽で、屋根が立てられていますから多少の雨なら凌げるでしょう。「和」のお湯は「極」以外の各浴槽と同じく加温循環されていますが、「極」から流れ込んでくるお湯もありますから、他の浴槽よりはお湯の状態が良いかと思います。



↑画像は各浴槽の湯使いに関する表示です。
井水加温循環の「蘇」と水風呂以外は温泉水を使用しており、温泉水を使っている浴槽は、「極」を除けば全て加温・循環・消毒が行われています。注目すべきは「極」の湯使い。源泉温度が31~32℃なので加温は仕方ないにせよ、それ以外の循環や消毒は行われておらず、しかも上述したように加温が程々に抑えられているので、とてもよいコンディションの温泉を掛け流しで楽しむことができるのです。

具体的に「極」のお湯について申し上げますと、湯口を赤茶色に染めるお湯は、浴槽では琥珀色を呈しつつも透明。湯口のお湯を口に含むと、重曹味と弱い金気味、そして弱いながらもモール臭が感じられます。特筆すべきは浴感であり、湯中ではヌルヌルを伴うツルスベ浴感が強く、しかも全身にしっかりと気泡が付着します。東京近郊という立地でありながら、こんなヌルツルスベで強力な泡付きのお湯に入れるだなんて、驚きとしか言いようがありません。加温を程々に抑えていることが、泡付きの良さに一役買っているものと思われます(加温を強くすると気泡が失われます)。
一方、加温循環されている各浴槽では、見た目は淡い山吹色となって色付きが薄くなり、泡付きもなく、ヌルツルスベ浴感もパワーダウンしていました。でも湯加減はちょうど良いので、私は「極」を中心に入浴し、それに飽きたり、あるいはもう少し体を温めたくなったら「和」など他の浴槽に入って、各浴槽を使い分けながら湯あみを愉しみました。

埼玉県平野部の温泉を大雑把に分類すると、ストレートな化石海水系のしょっぱいお湯と、その化石海水が長い年月をかけて成分を変えていったと思しき重曹泉系の2つに分けることができ、こちらの温泉は後者に属するものと思われます。また、知覚的特徴という点で捉えるならば、私が大好きな山梨県甲府盆地や熊本県人吉盆地のお湯にも近いタイプだと言えるでしょう。あるいは関西の阪神間に点在する温泉銭湯のお湯に似ているかもしれませんね。
通勤電車で行ける本格的な温泉。下手に遠くへ出かけて体力と時間とお金を費やすぐらいなら、こうした近場の温泉に入った方が良いかもしれません。



当記事の冒頭で、私はみずほ台駅から路線バスで当施設へアクセスしましたが、実は無料送迎車が運行されているんですね。館内でそのことを知った私は、帰りに無料送迎車を利用させていただきました。お客さんの利用状況により、ハイエースにするかバスにするか使い分けており、私が帰るときにはハイエースからバスへチェンジして運行されました。ハイエースでは運びきれないほどの利用客があるんですよ。


みずほ温泉
アルカリ性単純温泉 31.6℃ pH8.7 300L/min(動力揚湯) 溶存物質0.5903g/kg 成分総計0.5913g/kg
Na+:154.1mg(96.88mval%),
Cl-:55.6mg(22.29mval%), Br-:0.2mg, HCO3-:309.1mg(71.99mval%), CO3--:11.4mg,
H2SiO3:47.5mg,
(平成17年6月8日)

東武東上線・みずほ台駅より無料送迎バスを利用。もしくはみずほ台駅西口より路線バス(ライフバス)の5系統で「埼玉スポーツセンター」下車すぐ
埼玉県所沢市南永井1116
04-2946-4126
ホームページ

10:00~25:00
平日770円・土日祝870円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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大川温泉 伊豆 AZUMA 東

2019年03月21日 | 静岡県

前回記事に続いて東伊豆の温泉を巡ります。
伊豆急の普通列車に乗り、伊豆大川駅で下車。休日だというのに、この駅で降りたのは私を含め5人程度。しかも風貌から察するに地元の方ばかり。



駅前には足湯が設けられているのですが、私と一緒に下車したお客さんは誰も見向きをせず、足早に駅前から立ち去っていきました。東伊豆にしては珍しく観光色が薄い、とても鄙びた土地であることがわかります。



さて、駅前から伸びる坂道の細い路地を歩いてゆきます。のどかなあぜ道といった風情。実に良い雰囲気です。



細い路地を歩いて間もなく、今回の目的地である大川温泉「伊豆 AZUMA 東」に到着しました。以前は「伊豆大川温泉ホテル」というお宿でしたが、2018年7月にリニューアルしたと聞いたので、伺ってみることにしたのです。上述のような雰囲気の当地は、伊豆観光のメインストリームからちょっと外れていますので、そんな環境を寧ろ地の利と捉え、リニューアル後はお宿自ら「東伊豆の穴場温泉」と称しています。
リニューアルに伴い外観の塗装を変えた建物にお邪魔し、綺麗で明るいフロントで日帰り入浴をお願いしたところ、スタッフの方が快く受け入れてくださいました。



湯銭を支払い、エレベータで大浴場がある4階へ。なおフロントは2階ですので、お帰りの時は間違わないようご注意を。
脱衣室は畳敷きの14畳。浴室越しに視界が抜けており、外の景色が眺望できる明るい環境です。ロッカーは鍵つきですが、実際に施錠できるのは一部だけ。多くは鍵がついていませんでした。リニューアルの際に改修し忘れられちゃったのかな。室内には水分補給用の飲み水サービスが用意されているほか、濡れたタオルを入れるビニール袋も備え付けられていました。こうした細かな配慮は嬉しいですね。



湯の香が漂う内湯。床には伊豆青石が敷かれており、足裏から快適な感触が伝わってきます。内湯の右手には洗い場が配置され、シャワーつきカランが6個並んでいます。また画像には写っていませんが、左手前にはサウナも設置されています。



内湯の浴槽は石板タイル張りで、細長い台形の一部を欠けさせた形状をしています。やや浅めの造りかと思われます、
奥の湯口から温泉がしっかり投入されており、その湯口はオレンジ色に染まって、湯面ラインには同色のコブが線状に付着していました。お湯の濃さがビジュアル的に伝わってきますね。お湯は全量かけ流しており、浴槽の縁から溢れ出ています。なお湯温調整のため湯口において加水しているため、湯口では冷熱が分かれて感じられます。



浴槽のお湯はお湯はやや緑色掛かった笹濁り。塩化土類泉系のお湯によくある色合いや濁り方と言えるでしょう。
内湯のお湯は、縁からの溢れ出しの他、扉の下を介して露天の浴槽とつながっており、露天風呂にも流れてゆきます。



絶景露天風呂。
ビルの屋上に設けられ、大変広々しており、相模灘に浮かぶ伊豆大島を一望できます。もちろん周囲の山々も綺麗です。私が訪れたのは2018年の秋でしたが、常緑樹の中に紅葉が点在しており、また石垣の段々畑にはミカンが鈴なりでした。実に麗しい景色です。



相模灘を行き来する船舶はもちろん、伊豆大島は端から端までよく見え、元町港の様子もわかります。



露天の主浴槽はいわゆる岩風呂。上述したように内湯からお湯が流れ込んできますが、専用の投入口もあり、複数箇所からの投入により広い露天風呂の温度を均等にさせているようでした。この大きな露天風呂の中には岩が据えられ、そこに寄りかかってもいい感じで湯浴みできます。内湯よりもややぬるく、また内湯よりも濁りがやや強く、緑の他に金気色も混じる笹濁りを呈しています。



奥には寝湯のような浅い浴槽があり、ぬるいお湯が張られていました。この浴槽に入っちゃうと大島は見えませんが、空が大変広いので、日が沈んだ後には星空やお月様を仰ぎ見ながらのんびり湯浴みできることでしょう。私の利用時には青空高く流れる筋状の雲がとっても綺麗でしたよ。なお、その手前に設けられた小判形の焼き物の浴槽は水風呂です。

お湯に関するインプレッションですが、甘塩味、弱苦汁味、芒硝味、石膏味、弱い金気味、そしてわずかな収斂が感じられます。湯中ではツルスベに引っ掛かる浴感が拮抗し、しっとりと肌になじんでくれます。無色透明の硫酸塩泉や単純泉、そして食塩泉が多い伊豆半島にあって、この手の塩化土類泉的な濁り湯は大変珍しく、それだけでも入る価値があるかと思います。



建物の裏手には温泉櫓が立っています。ここからお湯を汲み上げているのですね。
なお一部の客室には露天風呂が付帯しており、上述した駅につながる路地を歩いていると、ベランダから湯気が上がっているのがわかります。なお大浴場のお湯は湯温調整のため加水していますが、客室のお湯は加水していないそうです(実際に宿泊した人の話による)。また今回取り上げた4階の大浴場の他、3階には貸切風呂もあるようです。
とにかく静かで麗しい環境に感動しました。なるほど穴場であることに間違いありません。次回は日帰りではなく宿泊して、じっくり堪能してみたいものです。


大川温泉 大川28号
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 76.9℃ pH8.2 155L/min(動力揚湯) 溶存物質2.980g/kg 成分総計3.029g/kg
Na+:717.0mg(71.54mval%), Mg++:6.4mg, Ca++:214.0mg(24.50mval%), Fe++:1.3mg,
Cl-:1027mg(66.34mval%), Br-:0.5mg, I-:0.2mg, SO4--:431.5mg(20.56mval%), HCO3-:348.7mg(13.08mval%),
H2SiO3:166.9mg, HBO2:20.3mg, CO2:48.8mg,
(平成30年1月10日)

伊豆急行・伊豆大川駅より徒歩1~2分
静岡県賀茂郡東伊豆町大川248-1
0557-22-0005
ホームページ

日帰り入浴15:00~20:00(念のため事前確認願います)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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伊東温泉 伊東小涌園

2019年03月13日 | 静岡県
 
2018年晩秋の某日。伊豆急行の普通列車に乗って、伊東の次の駅である南伊東で下車しました。


 
駅から徒歩で向かった先は、伊東温泉の「伊東小涌園 伊東緑涌」です。
小涌園と言えば藤田観光が運営する箱根のリゾートホテルや、それに付帯している「ユネッサン」といった大規模施設を思い浮かべますが、伊東の小涌園は同じく藤田観光のお宿でありながら、華やかさはあるものの規模や迫力は控えめである一方、客室全室に温泉を引くなど、お湯に力を入れている大手らしからぬ実力派のお宿です。とは言え今回は残念ながら宿泊ではなく、日帰り入浴での利用で尋ねました。



玄関を入った先にあるロビーは広く、木材を用いて落ち着きと温かみを醸し出しています。
こちらのお宿、実は日帰り入浴もウエルカムであり、公式サイトにある「ご入浴優待券」を提示すれば、通常1080円のところ700円で入浴可能です(印刷しなくてもスマホの画面を見せればOKです)。私もこの優待券を利用して入浴させていただきました。初めての訪問である旨を伝えると、フロントの方は丁寧に説明してくれます。その説明に従い、1階廊下を進んでエレベータに乗り、下のフロアへ向かいます。


 
エレベーターを降りて左に折れると湯上がり処、右へ進むと大浴場です。


 
飲泉処を挟んで左右に大浴場の出入口があるのですが、右と左で浴場の大きさが異なるため、男女入れ替え制を採用しています。私が訪れた日は小さな浴室に男湯の暖簾が掛かっていました。このため、以下小さな浴室に関してレポート致します。


 
上で何気なく飲泉処と申し上げましたが、伊東温泉は全国屈指の湯量を誇り、かつお宿もたくさんありながら、飲泉場を擁する施設は少なく、この伊東小涌園はそんな貴重な飲泉場がある大変珍しいお宿でもあります。それだけお湯には自信があるのでしょう。析出がこびりついて真っ白になった湯口から注がれる熱いお湯に対し、「ひょっとこ」のように口を尖らせてフゥフゥ冷ましつつ飲泉してみますと、ほぼ無味無臭ながら、わずかに石膏らしい味が感じられました。とはいえ、温泉にしては比較的飲みやすい部類に属するかと思います。


 
綺麗でアメニティ類が揃っている脱衣室を抜けてお風呂へ。
小さい浴場とはいえ、実際に入ってみますと結構ゆとりのある空間ですから、決して窮屈な思いはしません。あくまで相対的に大小を言っているに過ぎないようですから、大きい浴場はどれだけの規模なのか、今度機会があれば再訪して確認してみたいと思っております。
さて浴室内には内湯に2つ、露天に1つの浴槽が据えられているほか、入口付近には掛け湯も設けられています。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が計9(10?)基設置されています。各ブースに備え付けられているアメニティは質の良さそうなもの。業務用の安っぽいアロエなんとかではありませんよ。


 
2つある内湯浴槽のうち、室内の中央に位置する主浴槽は(私の目測で)12人サイズ前後。タイル張りの浴槽は黒い御影石で縁取られています。湯口から大量に投入されているものの、ぬるめの約40℃に維持されていますから、体への負担が少ない状態でじっくり長湯することができるでしょう。放流式の湯使いが採用されており、御影石の縁からはしっかりオーバーフローしていました。


 
もう一つは奥のちょっと高い位置に設けられており、設置場所のみならず湯加減もちょっと高い約41℃。大きさとしては8人前後でしょうか。こちらの浴槽もタイル張りで縁は黒御影石。石積みの湯口から温泉がしっかり注がれ、惜しげもなく溢れ出ていきます。特に湯舟へ人が入るとザバーっと音を轟かせながら勢いよくオーバーフローしてゆくので、その様を眺めているだけでも豪快な気分を味わえます。その様子や湯加減など、私はこの浴槽が気に入りました。


 
露天は岩風呂で和の趣きたっぷり。景色は楽しめないものの庭木の緑などが美しく静かな環境ですから、雰囲気はまずまずです。


 
日本庭園の池を模したかのような露天風呂は、石積みの上からお湯が注がれており、内湯のあつ湯と同じ程度の湯加減がキープされていました。大きさとしては6~7人サイズでしょうか。

お湯に関してですが、無色透明で無味無臭ながら、上述のようにわずかな石膏味が感じられました。それを証明するかのように各浴槽の湯口には白い析出が付着しています。分析表によればpH8.6ですからギリギリでアルカリ性単純泉を名乗っているわけであり、確かにスベスベする浴感を有していますが、個人的な感覚では、むしろ伊豆半島によくみられる硫酸塩泉のような浴感や温まり方が伝わってきたように感じられました。屁理屈は抜きにしても良いお湯であることが間違いありません。小涌園らしいホスピタリティと伊東温泉のお湯の良さ、その両方を堪能できるお宿だと思います。
次回訪問時は大きな方の浴室を利用し、両者を比較してみたいものです。


岡第207号
アルカリ性単純温泉 54.5℃ pH8.6 溶存物質 成分総計
Na+:164.0mg, Ca++:66.7mg,
Cl-:85.2mg, Br-:0.2mg, SO4--:373.2mg, CO3--:6.0mg,
H2SiO3:61.3mg,
(平成24年2月8日)

静岡県伊東市広野2-2-5
0557-37-4131
公式サイト

日帰り入浴13:00〜20:00
1080円(公式サイトのクーポン提示で700円)
ロッカーあり(暗証番号式)、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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ヨシヤーの湯

2019年03月07日 | 山梨県
今回はご紹介する鉱泉は、温泉探険をメインテーマとする数々のブログに度々登場している、マニアにはよく知られた箇所です。



場所は前回記事で取り上げた増富温泉の近く。塩川を堰き止めてできたダム湖は、その名をみずかき湖と称します。前回記事で私が登った瑞牆山の名前を冠しているわけですが、瑞牆という漢字は殆どの人が読めませんので、親しんでもらえるよう名峰の名前をひらがな表記にしたのでしょうね。
さて、湖畔に沿って伸びる道を車で走ってゆくと、上画像のような東屋が建つ駐車スペースがありますので、そこで車を停めます。



周囲はこんな山に囲まれています。ちょうど湖の最奥部にあたるため、景色に占める湖水の割合は少なく、目に入ってくるものはひたすら山ばかりです。ちょうど紅葉の時期に訪れたため、山は紅や黄色に染まっていました。



駐車スペースの前には湖の水際まで下りられる階段があるので、そこを下ってゆくと・・・



下りきった先の広場に、上画像のような看板、そして鉱泉が注がれている水槽が一つ置かれていました。先ほどの階段を含め、あまり人が訪れそうに無い場所にもかかわらず、ダムの管理下にあるためか、よく整備されているのが印象的です。



正面に立ってみました。
マニアックな温泉ファンの方々もブログなどで取り上げていらっしゃる「ヨシヤーの湯」に到着です。



解説板によれば、元々この谷合に水田があり、以前から鉱泉が湧出していたんだとか。その鉱泉は1km下流の塩川集落に引かれて、湯治にも使われていたそうですが、ダム建設に伴い塩川集落が湖底に沈んでしまうため、この鉱泉を残して集落を偲ぼうというコンセプトで、現在の「ヨシヤーの湯」の水槽が設けられたようです。ヨシヤーというユニークな名前は、葦(ヨシ・アシ)が茂っていた場所で湧出していたことに由来しているんだそうです。



時系列地形図閲覧サイト「今昔マップ on the web」で当地の地図を調べてみました。
(同じ地図はこちらからもご覧いただけます)
上画像で、左側はダム湖ができる以前の昭和50年、右側は現在の地図です。同じ場所を示した地図を違う年で比較しています。これによれば、昭和50年に谷頭の水田があった箇所と、現在「ヨシヤーの湯」の水槽が設置されている場所は、ほぼ同じであることが分かります。



人が入るには小さい水槽は、浴槽と呼べるほどの容量は無く、鮮魚店の生け簀みたいです。先人のブログを拝見すると、果敢というか無謀というか、この水槽に入った強者もいらっしゃるようですが、私は遠慮させていただきました。というのも・・・



小さくて体が入りそうにないのはもちろんのこと、かなり冷たいのです。パイプから注がれている無色透明の鉱泉は、私の体感で20℃未満。サウナの水風呂として入るのならともかく、私が訪れたのは紅葉も終わりかけていた晩秋の日暮れ時。こんな温度の冷鉱泉に入ったら確実に風邪を引いてしまうでしょう。塩川集落があった頃でも沸かして入浴していたそうですから、このまま入るのは余程の好事家でしょう。かく言う私も頭のネジが何本か外れているクレイジーですので、本音を言えば入りたかったのですが、ここでは手を浸すだけにして、鉱泉をテイスティングしてみることにしました。m

説明看板によれば「塩味が強」いと書かれているのですが、同じ文章にデータも記載されており、1リットルに含まれるナトリウム及びその化合物が845mgで、塩化物イオンが1390mgとのことですから、たしかに食塩泉としての要素を有しているものと推測されますし、山の中で湧出する鉱泉にしては塩分が多いには違いありませんが、塩辛かったり、しょっぱいと表現するほどではありませんから、以前から私が感じたように薄塩味程度だったものと思われます。その一方で、この鉱泉は炭酸味がとても強く、口に含むとシュワシュワ感が口の中に広がり、独特の味が舌にしっかりと残りました。
付近の増富温泉も炭酸カルシウムを多く含む鉱泉ですから、同じような系統の鉱泉として炭酸が多いのもうなづけます。とはいえ、金気はありません。端的に言えば薄塩味&炭酸といった特徴の冷鉱泉です。もしご興味があり、且つ衆人の目線など気にしないという御仁でしたら、真夏なら入浴できるかもしれませんね。


山梨県北杜市須玉町小尾

いつでも入場可
無料

私の好み:評価対象外




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増富温泉 津金楼

2019年03月02日 | 山梨県
半年前の記録で申し訳ございません。
2018年秋、日本百名山のひとつである山梨県瑞牆山を登りました。瑞牆と書いてミズガキと読むことを、私は登る直前に知ったのですが、そんな無知な私でも十分に楽しめる魅力的で素晴らしい山でした。



今回の登山のスタート地点である「みずがき山自然公園」にて。
園内の紅葉、そして荒々しい岩肌が特徴的な瑞牆山。
この公園に車を停め、瑞牆山を登りながら反時計回りで周遊してまいりました。



不動滝ルートを登ること約2時間で頂上に到着。



裏道的な存在である不動滝ルート(黒森コース)を登っている時にはわからなかったのですが、紅葉シーズン終盤にもかかわらず、山頂には多くの登山客が登頂達成を悦んでいました。この山に登る多くの方は、瑞牆山荘側のルートを利用するでしょう。



山頂で背嚢をおろし、持参したおにぎりを頬張りながら360度の大パノラマを堪能。
↑画像は前年に私が登った八ヶ岳。自分が登ったことのある山を、別の山の山頂から眺めることって、特別な感慨がありますね。



山頂付近ではまるでキノコがニョキニョキ生えるように奇岩が屹立していました。ちょっと日本離れしたこの光景に、登山者は誰しもが反射的にカメラを向けていました。かく言う私もその一人。
そんな奇岩の彼方には南アルプスの稜線が左右に広がっていました。山稜が重畳する壮大な景観を眺めながら頬張るおにぎりは、どんな三ツ星レストランの料理よりも美味しいはずです。なおこの日の富士山は雲に隠れてしまい、姿を現すことはありませんでした。



さて、無事下山した私は、登山の汗を流して疲れを癒すべく、麓の温泉街である増富温泉へと向かいました。温泉街には数軒のお宿が営業していますが、今回訪ねたのは温泉街の一番奥に位置している「津金楼」です。大湯元を名乗っているお宿であり、なんと明治18年創業という老舗でもあります。玄関で声をかけて日帰り入浴をお願いしますと、快く受け入れてくださいました。



湯銭を支払った時、宿の方に「増富温泉は入ったことありますか」と聞かれました。後述しますが、増富「温泉」と称しているものの、当地で湧出している温泉の温度は20℃前後であるため、事情を知らない方がいきなり非加温で冷たいままの「温泉」に接すると驚いてしまうのでしょう。しかもこちらのお風呂には非加温浴槽がありますから、その入浴方法をご存知ないお客様ではないか、という配慮に基づいて声をかけて下さったんだと思います。
こんな屁理屈をこねられる私は当然ながら事情を知っていますので、「大丈夫です」と答えてお宿の方の説明を遠慮させていただきました。
帳場前にある階段で2階へ上がり、廊下を進んで浴室へ向かいます。館内は綺麗にされているものの、寄る年波を隠すことはできないようで、館内の随所に昭和の鉄筋コンクリ建築らしいレトロな雰囲気が横溢していました。


 
途中で大広間の前を通過します。このお座敷って休憩室として使えるのかな? なおその前には冷水のサービスが用意されていました。



長い廊下を歩き、やっとのことで浴室入口に到着です。脱衣室の内部も昭和から時が止まったかのような佇まいですが、特に不自由なく使えますので問題ありません。


 
男女別のお風呂は内湯のみ。男湯の場合、入って右側に洗い場が設けられており、カランが4ヶ所並んでいます(うちシャワー付きは3基)。


 
一方、洗い場の反対側には大小の浴槽がそれぞれ1つずつ並んでいます。
脱衣室側にある小さな方(↑画像)には加温された鉱泉が溜められています。小さいと言っても6~7人は入れそうな容量を有しており、非加温浴槽からの流れ込みを防ぐためか、隣の浴槽よりちょっと高くセッティングされています。
この浴槽では加温したお湯を循環させていますが、冷たい源泉もチョロチョロ注がれており、結果的に41℃前後という長湯したくなるような夢心地の湯加減に調整されていました。お湯からは金気味と石灰味が感じられるほか、若干の甘みや塩味も得られますが、どの特徴も非加温源泉よりは弱まっているように感じられました。またお湯の色はモスグリーンのような色を帯びて濁っていました。



一方、窓に面しているこの浴槽は源泉100%の冷たい鉱泉が張られた主浴槽。山や渓流の景色を眺めながら湯浴みできます。容量は失念してしまいましたが、かなり大きいので相当人数が同時に入れそうです。


 
岩積みの湯口から冷たい非加温源泉が投入されており、完全掛け流しの湯使いを実践しています。明るい黄土色に濁るお湯がオーバーフローする床一面には、千枚田のような析出がしっかりと現れています。また湯口周りの壁面にも鱗状の模様ができています。炭酸カルシウムが多いのですね。
浴槽では濁っているお湯も、湯口から出た瞬間は無色透明。空気に触れたり大気中に出て減圧されることにより濁りが生じるのでしょう。先程から冷たい冷たいと申し上げておりますが、そうは言っても20℃くらいなので、湯船に入る瞬間こそヒヤっと冷たいのですが、一度入ってしまえば体がすぐに慣れ、むしろ気持ち良く、ずーっと長い間浸かっていられます。増富温泉はラジウム鉱泉としても知られており、虚実はさておき、ラジウムの効能、つまり放射能泉の効能を得るには加熱してはいけませんから、この非加温源泉は当地の温泉の恩恵を受けるために欠かせない施設なのであります。

湯口のお湯をテイスティングしてみますと、山の中の鉱泉とは思えないほどしょっぱく、鉄さび系の金気味や土気味、そして炭酸味が強く得られます。また、出汁味も含まれており、金気の匂いも嗅ぎ取れます。口に含むとシュワシュワ感が口腔の粘膜に伝わってきたのですが、でも肌への泡付きは無かったように記憶しています。湯中ではキシキシ引っかかる浴感が肌に伝わります。こうした特徴を見ていきますと、泉質名こそナトリウム-塩化物温泉ですが、実際には重炭酸土類泉のような特徴を兼ね備えた実に面白い鉱泉であることはわかります。
塩分や炭酸のおかげなのか、非加温の湯船に浸かっても湯上がりは体の芯からポカポカするのが実に不思議で面白いところ。登山で疲労した筋肉をひんやりした湯舟でクールダウンしながら、不思議な温浴効果で心身をのんびり癒すことができました。ラジウム云々は正直なところ眉唾なのですが、食塩や炭酸の効果は本物だと思います。しかもこの鉱泉は自然湧出している自家源泉。温泉ファンでしたら是非入っておきたい一湯です。
派手さこそありませんが、質実剛健と言うべき実力派の良質な鉱泉でした。


津金楼源泉
ナトリウム-塩化物温泉 26.0℃ pH6.3 13.7L/min(自然湧出) 溶存物質10254.8mg/kg 成分総計1115.1mg/kg
Na+:2940.5mg(80.80mval%), Mg++:18.8mg, Ca++:269.7mg(8.50mval%), Fe++:7.6mg,
Cl-:3927.3mg(74.33mval%), Br-:9.6mg, I-:0.4mg, SO4--:606.5mg(8.47mval%), HCO3-:1543.1mg(16.97mval%),
H2SiO3:206.6mg, HBO2:176.1mg, CO2:860.3mg,
(平成21年5月15日)

山梨県北杜市須玉町小尾6699
0551-45-0711
ホームページ

日帰り入浴10:00~16:00
800円(1時間程度)
貴重品帳場預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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