温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

肘折温泉 ゑびす屋 前編(客室・食事・朝市)

2018年03月29日 | 山形県
 
前回記事では肘折の山奥に湧く秘湯「石抱温泉」を取り上げましたが、今回はその「石抱温泉」を管理なさっている温泉街の旅館「ゑびす屋」を取り上げます。昨年肘折を訪れた私は、藪蚊の猛襲に遭いながら山奥の秘湯で湯浴みを体験し、それから温泉街へ戻ってお宿へチェックイン。一晩お世話になったのでした。温泉街のメインストリートに面しているこちらのお宿は、いかにも肘折の温泉宿らしいファサードです。場所としては「上の湯」の斜め前、バス折り返し場の真向かいです。お宿の裏手には駐車場がありますので、車でのアクセスも問題ありません。


 
この日は廉価で宿泊できる湯治プランで予約しました。通されたお部屋は1階の続きの間。通りに面した縁側に部屋が並んでおり、襖一枚で隔てられているだけですから、セキュリティーやプライバシー面に厳しさを求める方にはちょっと難しいかもしれませんが、綺麗に維持されている客室の広さは8畳もあり、テレビ・エアコン・ポット・金庫が備え付けられていますので、私としては快適に過ごすことができました。なおWifiは帳場の前で使うことができます(客室までは届いていませんでした)。


 
帳場前のロビーには大きなスピーカーが置かれ、ムーディーなジャズが流れていました。館内に飾られているものを見ると、けだしお宿の方はジャズに造詣が深いのでしょう。レトロなお宿にジャズが合い、なかなか良い雰囲気です。
スピーカーのそばにはコーヒーのマシーンが置かれ、朝には自由に飲むことができます。重度なコーヒー党の私も勿論いただきました。



肘折の温泉宿といえば湯治ですね。私は2食付きのプランで利用しましたが、もちろん自炊も可能。館内にはこのような自炊場も用意されています。



湯治プランとはいえ、お食事付きでお願いしました。2食ともお部屋出しです。
上画像は夕食です。配膳は18時。御膳の上に揃った料理は、タラのホイル焼き、煮物、パスタのサラダなど、家庭的な献立ながらとても美味しく、しかも無駄に食べ過ぎない適度なボリュームも私にとっては嬉しい点でした。一見すると、大食漢の御仁には物足りないように思えるかもしれませんが、意外と量があり、少なくとも私には十分でした。



一方、こちらは朝食。植物性のおかずが主体の、質素ながらもバランスの良さそうな献立ですね。しっかりいただき一日の活力を蓄えました。リーズナブルな湯治プランでありながらお部屋出しなのは有難いですね。


 
肘折といえば朝市が有名ですね。私も宿泊した翌朝の6時頃に、宿で下駄を借りて出かけてみました。決して大きな規模ではありませんが、平日、しかもこんな交通不便な山奥であるにもかかわらず、途切れることなく朝市が継続されていることは、奇跡としか言いようがありません。細長い道に沿っておばちゃん達が露店を開き、肘折界隈の山の幸が店先にズラリと並びます。たしかに眺めているだけでも楽しいのですが、朝の短い時間にしか店を開かず、しかも客数だって限られている、当然客単価は低く、総売り上げは高が知れている・・・市を開いたところで、ちゃんと商売として成り立っているのか、つい心配したくなっちゃいます。


 
当初は市を見学するだけに留めておくつもりでしたが、そんな心配が私の心を動かし、気づけば私はいくつかの露店で、おばちゃん達から粽やナスの漬物などを購入していました。見るだけじゃなく買わなきゃ、伝統の朝市は続いていきませんよね。でも買って結果的に正解。温泉街からの帰路は、それらを口にすることで、おいしく小腹を満たすことができました。

さて、次回記事ではお宿のお風呂の様子を取り上げます。

次回に続く
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石抱温泉

2018年03月26日 | 山形県

前回記事に引き続き山形県肘折温泉の周辺を巡ります。今回は温泉ファンでしたら名前を知っているであろう有名野天風呂「石抱温泉」を取り上げます。まずは「石抱温泉」を管理している肘折温泉街の旅館「ゑびす屋」を訪ってこのお風呂に入りたい旨を告げ、宿の方から現地までの行き方を記した地図を入手します。



銅山川を遡りつつ、地図に従って所々で右へ左へ曲がりながら、雨上がりで随所に水たまりができている凸凹だらけの未舗装路を進んでゆくと、その狭隘な道の突き当たりで俄然視界がひらけ、「石抱温泉」と彫られた石が目に入ってきます。温泉街から約10分ほどでしょうか。



その石の横に広がる駐車スペースで車をとめ、その先に伸びる杣道を歩いてゆくと・・・



100メートルも歩かないうちに、目的の野天風呂にたどり着きました。傍らには天明年間のものと思われる薬師如来の石碑が祀られています。出羽三山の山中ですから、信仰を求めて杣道を歩く人々を、この仏様は見守ってきたに違いありません。
とはいえ、あまりに簡単に到達できてしまい、ちょっと拍子抜け。とてもワイルドなロケーションですから秘湯といえば確かに秘湯なのですが、車があれば意外とイージーにたどり着けてしまうため、いわゆる秘湯と称されるものを巡っているようなマニアにとっては、秘湯でも序の口か序二段あたりの格付けになるのかもしれません。もしあなたが「石抱温泉に行った」と温泉ファンに話した時、「あぁ、あそこね。秘湯とはいえないな」なんて上から目線で語ってくる人がいたら、その人はきっと私のような面倒臭いマニアに違いありません。軽蔑の眼差しを向けながら心の中で石を投げつけてやりましょう。



山中の草叢の中、石を組んでお湯をせき止めているだけの、至ってシンプルな浴槽です。私が訪れた日はあいにくの天気が続いていたため、湯船の周囲はちょっとした泥濘と化し、お湯の中にも落ち葉や小枝などが浮いていましたが、湯船に関しては手でささっと除去することで、入浴するには差し支えないような状態になりました。



お湯は山からの流れ込みの他、浴槽底の岩盤の割れ目からも湧き上がっており、常にプクプクと気泡が上がっていました。つまり湧き立てのお湯に入れるわけです。請け売りですが、石抱という風変わりなネーミングは、お湯に含まれる炭酸の量が異常に多くて体がぷかっと浮いてしまうため、石を抱いて入浴したという事に由来しているんだとか。私が入浴した感じですとそんなに浮くような感覚はなく、さすがにその逸話は眉唾物ではないかと思ってしまいましたが、とはいえ、岩盤の表面にこびりついているコケに気泡がたくさんついている他(光合成による気泡も含まれているのかも)、私が実際に入浴すると肌に気泡が付着しましたから、決して完全なるフィクションではないようです。



グリーンを帯びた山吹色に濁るこの湯は、肘折のお湯に似たタイプ。この時の湯温は34.3℃でした。繰り返しますが前日まで雨が続いていたため、その影響で温度が低下していたのかもしれません。正直なところ全身浴をするにはぬるかったのですが、一度肩まで浸かってしまえば、もうこっちのもの。体がお湯に慣れてゆくので、ぬるさを気にせず湯浴みが楽しめました・・・と申し上げたいところなのですが、草叢に囲まれ、且つジメジメとしており、しかもお湯から炭酸ガスが放出されている環境ですから、湯船の周りには藪蚊や虻のようなブンブン飛び回る吸血性の忌まわしい虫だらけ。まだ湯船に入る前の、辺りの様子を伺っている時点から、すでに服の上から奴らは刺してきやがります。そして、私が入浴のために服を脱ごうものなら、奴らは狂喜乱舞で猛攻撃を仕掛けてくる始末。はじめのうちは正々堂々と戦うつもりでしたが、四方八方から攻撃を仕掛けてくる奴らに歯が立たず、湯船にちょっと浸かるだけで白旗をあげざるを得ませんでした。この秘湯は虫対策ができる人向けであり、玄人好みするという意味では、たしかに秘湯なのかもしれません。とはいえ、なかなか面白いお風呂でした。話題作りにはいいかもしれません。いや、虫に刺されて体の一部が腫れること必至ですから、ヒアルロン酸注射が高くてお困りの方は、こちらへ行って蚊に刺されて顔を部分的に盛り上げてみても良いかもしれませんね(なんて)。


分析書なし

山形県最上郡大蔵村

冬季アクセス不可
無料ですが利用前には肘折温泉の旅館「ゑびす屋」に声をかけること

私の好み:★★







入浴
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黄金温泉 カルデラ温泉館

2018年03月23日 | 山形県
 
前回記事に引き続き山形県黄金温泉を巡ります。前回記事の「金生館」は鄙び風情が漂う渋い旅館でしたが、温泉地を貫く一本道の突き当たりには、それと対極を為すような立派な温泉入浴施設「カルデラ温泉館」が営業しています。私個人としては約10年ぶりに再訪することにしました。建物自体は現代的ですが、そのファサードは伝統的な農村建築をイメージしているものと思われます。


 
決して大きなわけではないのですが、場違いなほど綺麗で立派。敷地にはお庭まであり、その端っこには源泉と思しき設備が立っていて、そこから湯気を上げながら熱いお湯が迸っていました。


 
玄関を入って券売機で湯銭を支払い、券を受け付けに差出し、食堂を左に見ながら廊下を奥へと進みます。廊下の途中には露天風呂へ出るドアがあるのですが、1つしかないため男女入れ替え制であり、しかも私が訪問した時間帯は既に露天風呂の開放が終了していたため、今回は利用できませんでした。なお露天風呂の男女時間割については公式サイトでご確認を。


 
廊下の突き当たり正面に、薄暗い中で神々しい存在感を放つ炭酸泉の飲泉場が設けられ、その両側に男女両浴室の入口が配置されています。これだけ堂々とした構えでお風呂の入り口を左右に侍らせているのですから、余程飲泉に誇りを持っているのでしょう。備え付けの柄杓で実際に飲んでみますと、まず非常に冷たい感覚が全身をシャキンと刺激します。冷蔵庫ではなく天然でこれだけ冷えるのですから驚きです。そして淡い金気の味と炭酸のシュワシュワ感が口腔の中に広がります。決して美味しいものではありませんが、いかにもミネラルたっぷりといった感が強く、良薬口に苦しと自分に言い聞かせながら飲むと、それだけで健康になれそうな気がします。日本では温泉や鉱泉を入ることばかりに関心が向きがちですが、海外では飲んで健康に役立てている文化も多く、国内でももっとこのような利用方法がフューチャーされて良いはず。なかなか良い試みですね。

ちなみにこの炭酸泉の分析書によれば、溶存物質は89.7mg/kgですが成分総計になると971.3mg/kgと一気に10倍以上の数値に跳ね上がります。一般的な温泉では両者にここまでの差は見られないのですが、これは冷鉱泉の中に炭酸ガスが881.6mgも含まれているためです。温泉の場合は温かいためガスが飛んでしまうのですが、冷鉱泉ならばガスも液体中に潜んでいられるのですね。


 
八角堂のような建物の下が更衣室。オープンして結構な年月が経っているはずですが、落ち着いた雰囲気の室内はとても綺麗で、利用にストレスを感じることがありません。


 
ダークチーク調のシックな趣きで、ゆったり寛げる佇まいの浴室。更衣室同様に手入れが行き届いています。木材が多用され、床には十和田石を採用。見た目のみならず実際に触れた感触も上質。気持ち良く湯浴みを楽しむことができました。
洗い場にはシャワー付きカランが5基取り付けられています。


 
浴室内には槽が二つあり、うち一つは先程の飲泉場に注がれていた冷たい炭酸泉です。槽といっても全身浴ではなく足湯用であり、腰掛けに座って足を冷鉱泉の中に入れるのですが、あまりに冷たいためジッとしていられず、私は10~15秒が限界でした。この冷たい足湯ならぬ足冷泉と交互に入ると良いのが・・・


 

ちょっと熱めにセッティングされている主浴槽です。湯口から直に触れないほど熱い温泉が浴槽へ注がれており、熱いお風呂に慣れている私でも初めのうちはたじろいでしまいましたが、しっかり掻き混ぜることにより、加水を経ないで全身浴することができました。湯船のお湯は淡いウグイス色を帯びているように見えますが、これは浴槽の材質が影響しているものと推測され、実際には山吹色の微濁ではないかと思われます。底面が目視できるほどの透明度を有しており、お湯を口に含むと薄い塩味と弱い金気味、炭酸味、土類感、そして少々の石膏臭を感じ取ることができました。湯中ではスルスベの中に少々の引っかかりがあり、熱いながらもしっかりと肌に馴染んでくれます。館内表示によれば、温度調整のため加水しているものの、循環などの無い掛け流しとのこと。その言葉に嘘偽りは無いでしょう。湯口からの投入量と同量のお湯が浴槽縁の切り欠けから溢れ出ていました。なお炭酸が含まれているお湯とはいえ、湯中における泡付きはありません。なお泉質名こそ「ナトリウム-塩化物温泉」ですが、実際には炭酸水素塩泉として性格も有しており、お湯としては肘折に近いタイプと言えそうです。

私は熱い湯船で火照った後に、すぐ冷たい炭酸泉へ足を入れてクールダウン、そしてまた熱い湯船へ・・・というサイクルを繰り返して、当地の大地の恵みを堪能させていただきました。もちろん飲泉もしておりますので、まさに全身で鉱泉や温泉の恵みを享受したわけです。綺麗で使い勝手もまずまず、しかもお湯も良く、主張が強くてキンキンに冷たい炭酸の冷鉱泉まであるという、実に素晴らしい施設でした。

良い施設であるにもかかわらず、私が訪れた時は私以外にお客さんがおらず閑散としていました。奥まった場所ですから、集客力に欠けるのかもしれませんが、それにしては非常にもったいない。肘折エリアを含めた当地で気軽に日帰り入浴をしたければ、第一選択の候補として相応しい施設であると私は断言できます。


黄金温泉組合7号源泉
ナトリウム-塩化物温泉 54.0℃ pH6.0 掘削動力揚湯 溶存物質2275mg/kg 成分総計2849mg/kg
Na+:625.6mg(80.88mval%), Ca++:60.9mg(9.04mval%), Mg++:14.6mg, Fe++:1.7mg,
Cl-:861.5mg(75.00mval%), Br-:1.8mg, SO4--:86.8mg, HCO3-:381.2mg(19.29mval%),
H2SiO3:118.5mg, HBO2:44.1mg, CO2:573.0mg, H2S:0.4mg,
(平成19年3月23日)
加水あり
加温・循環・消毒なし(ただし清掃時のみ塩素系薬剤使用)

炭酸泉源泉
単純冷鉱泉(二酸化炭素型) 9.4℃ pH4.4 自然湧出 溶存物質89.7mg/kg 成分総計971.3mg/kg
Na+:6.6mg(42.65mval%), Mg++:2.6mg(30.88mval%), Ca++:2.8mg(20.59mval%),
Cl-:6.0mg(28.33mval%), SO4--:11.4mg(40.00mval%), HCO3-:11.8mg(31.67mval%),
H2SiO3:46.3mg, CO2:881.6mg,
(平成25年11月20日)

山形県最上郡大蔵村南山2127-79
0233-76-2622
ホームページ

4月~10月→9:30~18:30(受付18:00まで)、11月~3月→10:00~16:30(受付16:00まで)、第1・第3火曜定休
露天風呂の男女時間割については公式サイトでご確認を。
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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黄金温泉 金生館

2018年03月20日 | 山形県

前回記事に続いて肘折温泉エリアを巡ります。といっても、今回記事で取り上げるのは、肘折のご近所にある黄金温泉です。肘折も黄金も同じ肘折カルデラの中で湧出する温泉であり、兄弟みたいなものなので、ここでは肘折と一緒に取り上げます。今回訪れたのは金生館です。日帰り入浴で訪いました。黄金温泉に2~3軒ある旅館のひとつなのですが・・・



かなり年季が入った外観を目にした私は「訪ねて大丈夫なのかな」と少々及び腰になってしまいました。意を決して玄関の戸を開け、ごめんくださいと声をかけると、建物外観に負けず劣らずのかなり草臥れたご様子のお婆さんが対応してくださったのですが、敢えて断定的な表現を避けるならば、ドリフのコント「もしもシリーズ」を連想せずにはいられないような旅館なのです。いかりや長介のような仕打ちに遭いたくないなと警戒しながら廊下を進んで、一番奥の突き当たりにある浴室へと向かいました。



脱衣室に足を踏み入れると、今度は時空間が歪んでいるかのような錯覚に陥りました。ドア枠や小窓が撓んでいたり歪んでいたりと、全体的に傾いているのです。いや、もしかしたら私が体調不良で目眩に襲われていただけかもしれませんが、そうでなければ、少なくとも自分が館内にいる時だけは天変地異が起きないことを祈るばかりです。「本物 源泉100%」と手書きされた張り紙も、この状況の中では何かのまやかしに見えなくもありません。



湿った石膏の匂いの他、表現の難しい臭いも一緒に充満した浴室。床のモルタルはコケか何かで緑色に染まり、壁も長年に及んで使い込まれている跡がしっかり染み込んでいます。そして足元からは何かしらの不穏な感触が伝わってきます。もしかしたら湯気に交じって何かの胞子が飛んでいるかもしれません。



洗い場は室内の左右に分かれて設置されていました。左右いずれも、れっきとしたシャワー付きカランです。



手前側の縁が大きな曲線を描く浴槽は4~5人サイズ。湯口からお湯がトポトポ注がれており、ちょうど良い湯加減が保たれていました。いくら建物が草臥れていようとも、お湯の調整にはぬかりが無いようです。湯舟を満たすお湯は、お隣の肘折のお湯よりもさらに色合いを強くしたような山吹色の濁り湯です。



浴槽のお湯は基本的にオーバーフロー管から排出されているのですが、私が湯船に入ったときだけ縁の上を越えて洗い場へ溢れ出ていきました。ちゃんとした掛け流しの湯使いのようです。



建物と裏手の山の間に設けられた露天風呂は、頭上をポリカーボネートの屋根に覆われているため、開放感はあまり期待できませんが、周囲を緑に囲まれたロケーションのもとで風が入り込んできますし、駐車場側は視界が開けていますから、爽やかな環境で四季折々の湯浴みが楽しめるかと思います。
浴槽は2つに分かれており、建物側の槽は(私の体感で)44℃近い熱さなのですが、山側の槽は建物側からのお湯を受けている関係で、お湯の鮮度に欠けるものの適温に抑えられていました。



建物側の熱い浴槽の底には橙色の沈殿がたくさん溜まっており、私が湯舟に入るとそれが一気に舞い上がって、お湯の色が山吹色の濁りから濃い橙色に変わってしまいました。左(上)画像は濁ってゆく過程を写したもの、右(下)画像は濁っている浴槽とそうでない槽との対比を捉えたものです。これらの画像で見ても、色の違いがおわかりいただけるかと思います。たしかに沈殿が発生するお湯なのでしょうけど、ここまで溜まってしまっているということは・・・いや、余計な詮索はやめておきましょう。

上述している通りお湯は濃い山吹色に濁り、場合によってはオレンジ色に近い濁り方を呈します。はっきりとした金気の味と弱い塩味、そして石膏の味と匂いが感じられます。金気に関しては、味覚は明瞭だったものの、匂いはそれほどでもなかったような気がします。肘折より金気が強く、また炭酸味もしっかりと含まれていたように記憶しています。
お湯はまずまずなのですが、建物が全体的に相当お疲れの様子であり、お客さんを選ぶ宿だと言えそうです。けだしお宿の方がご高齢であるため、管理が思うように行き届かないのかもしれませんね(推測が誤っていたらごめんなさい)。鄙びたお宿をお好みの御仁にはピッタリかと思います。


組合1号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 49.3℃ pH6.9 蒸発残留物2848mg/kg 溶存物質3194mg/kg
Na+:701.4mg, Mg++:76.0mg, Ca++:107.4mg, Fe++:3.6mg,
Cl-:703.3mg, Br-:1.7mg, I-:1.2mg, SO4--:106.2mg, HCO3-:1282mg,
H2SiO3:94.8mg, HBO2:44.1mg, CO2:649.5mg,
(平成20年10月31日)
加水加温循環消毒なし

山形県最上郡大蔵村南山2156-1
0233-76-2418

日帰り入浴時間不明(17時頃まで?)
300円
シャンプー類あり、その他見当たらず

私の好み:★★
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肘折温泉 元湯亀屋旅館

2018年03月16日 | 山形県

前回記事では、、私が大好きな山形県の温泉地として村山地方の東根温泉をご紹介しましたが、今回から最上地方の大好きな温泉地である肘折温泉を取り上げます。今回取り上げるのは未訪問であった「元湯 亀屋旅館」です。日帰り入浴で利用させていただきました。共同浴場「上の湯」の並びに建っており、肘折のお宿では典型的な、いかにも湯治宿らしい佇まいです。


 
亀屋というお宿だけあり、玄関には大きな亀があちこちに飾られていました。縁起がよさそうですね。日帰り入浴をお願いしますと、お宿の方はお風呂の様子を確認してから、中へ通してくださいました。


  
物干し竿が掛けられている湯治宿らしい廊下を進んで浴室へ。
廊下を曲がった先に、浴室の暖簾が左右にふたつさがっているのですが・・・


 
今回は浴槽が二つある左側の浴室へ入らせていただきました。暖簾に「男女」とあるように、どうやら混浴として使われているようです。脱衣室は至ってシンプル。棚と籠、腰掛け、そして扇風機があるばかりです。


 
白いタイル貼りの浴室は、2方向から外光が差し込むためにとても明るく、そのお蔭で実際の床面積以上の広さがあるように感じられました。室内には石膏や芒硝らしい湯の香が漂っていますが、表の通りとは反対側に位置しているためかとても静かであり、私が訪問した時には、湯口からお湯の落ちる音が響くばかりでした。
室内には後述する2つの浴槽の他に洗い場があり、シャワー付きカランが2つ離れて取り付けられていました。シャワーが遠慮がちに、いかにも後付けしたと言わんばかりに取り付けられているこの光景も、古くからある湯治宿のお風呂ではしばしば見られますね。


 
二つある浴槽のうち、窓下に設けられている大きな浴槽は(目測で)2.5m×1.8mほどで5~6人は入れそうな容量があり、仏様が傍で見守っている湯口からお湯が滔々と注がれています。浴槽内に張られているタイルはオフホワイトとブルーのストライプで、肘折のお湯にしては比較的透明度が高いため、浴槽内の様子を目視することができます。


 
合掌している石仏の傍で注がれているお湯は、上の湯共同浴場と同じ源泉であり、それゆえ上の湯と同じような透明度が保たれているわけです。なおこの源泉のお風呂に入れるのは、上の湯共同浴場とこのお宿だけなんだとか。元湯という語句を宿名に冠しているように、もともとは自家源泉を有していたようですが、その源泉が枯れてしまったため、それ以来上の湯から引湯しているそうです。

仏様に挨拶してから湯口のお湯をテイスティングしてみますと、薄い塩味と淡い金気、そして土類感が得られるほか、はっきりとした炭酸味が口の中に広がりました。黄土色の濁り湯がメインな肘折にあって、上述の通りこちらのお湯は比較的透明度が高いのですが、濁り湯を張る後述の小さな浴槽からもお湯が流れてくるため、その影響を受けてか、僅かに赤茶色を呈しているように見えます。湯中では皮膚のシワ一本一本にお湯が入り込んで全身をコーティングしてくれるようなシットリした浴感があり、その影響なのか非常によく温まります。なお肌への泡付きはありません。


 
一方、その隣の小さな浴槽は1人サイズで、湯口より肘折各源泉のブレンドが注がれています。引湯とはいえ熱いため、湯口の中で加水した上で浴槽へ供給しています。湯船のお湯は赤茶色に濁っており、浴槽やその周りも同色に染まっています。お湯を口に含んでみますと、薄い塩味と金気味、そしてカルシウム感がよくあらわれており、お湯に含まれている金気が原因なのか、私の訪問時、湯面には酸化被膜が張られていました。
個性の異なる2つの源泉(浴槽)を行ったり来たりしながら、肘折のお湯を存分に楽しませていただきました。


 
お風呂上がりに、今回入らなかった右側のお風呂をちょっと見学させていただくことに。


 
浴槽は一つしかなく、引かれているお湯は肘折では一般的な複数源泉のブレンド湯ですが、内装改修が行われているのか、私が入った浴室よりも全体的に綺麗であり、洗い場もきちんと確立されていますので、使い勝手はこちらの方が良いかと思います。

なお、このほかにも館内にはもうひとつ浴室があるらしいのですが、今回はそこまで探し出せずに退館してしまいました。何はともあれ、肘折で湯巡りしていると、使用源泉の関係でハシゴを重ねてゆくうちに同じようなお湯ばかりになってしまう傾向があるのですが、そんな中でこちらのお湯はちょっと異色ですから、アクセントを加えたり、あるいはいつもと違ったお風呂の宿で宿泊したいという場合にはもってこいかもしれませんね。


貯湯槽(上の湯1号・上の湯2号・上の湯3号・組合2号・組合3号・組合4号の混合)
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 42.2℃ pH6.6 溶存物質2396mg/kg 成分総計2629mg/kg
Na+:608.0mg(80.81mval%), Ca++:66.3mg(10.11mval%),
Cl-:659.2mg(56.63mval%), SO4--:141.6mg(8.99mval%), HCO3-:686.4mg(34.27mval%),
H2SiO3:127.1mg, HBO2:38.5mg,CO2:232.8mg,
(平成23年1月6日)
加温・加水・循環なし、塩素系薬剤使用あり(清掃時?)

貯湯槽(組合2号・組合3号・組合5号の混合)
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 65.9℃ pH6.6 溶存物質3410mg/kg 蒸発残留物2935mg/kg
Na+:879.2mg, Mg++:22.0mg, Ca++:89.6mg,
Cl-:991.2mg, SO4--:234.9mg, HCO3-:912.0mg,
H2SiO3:146.1mg, HBO2:54.2mg,CO2:357.9mg,
(平成28年9月21日)
加温・加水・循環・消毒なし

山形県最上郡大蔵村南山521  地図
0233-76-2311

日帰り入浴時間不明
350円
シャンプー類あり、他見当たらず

私の好み:★★+0.5




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