温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

微温湯温泉 旅館二階堂

2011年06月30日 | 福島県
 
暑い夏には、ぬるいお湯に入りたくなりませんか。昨年夏のレポートになりますが、私おすすめのぬるい温泉、その名も「微温湯(ゆるゆ)温泉・旅館二階堂」を取り上げてみます。こちらには今まで2度ほど日帰り入浴でお世話になっており、お湯といい雰囲気といい、私の心を鷲掴みにしてくれる素晴らしいところ。温泉ファンの皆さんも絶賛なさっています。


 
微温湯温泉は旅館二階堂の一軒のみ。福島市街から県道126号を吾妻小富士方向へ進んだドン詰まりにあります。山道の最奥にある一軒宿で、しかも昔ながらの茅葺き屋根の建物なんですから、その時点でもう既に秘湯風情たっぷりですね。
地図を見ると福島市街から一本道の県道126号を走った方が早そうですが、この県道は所謂「険道」という奴でして、山間部に入ると狭隘で走りにくい未舗装の区間が延々と続きます。山道になれていない人は失禁してしまうかも。従いまして、あえて遠回りですが、国道115号からあづま総合運動公園付近を通って広域農道を経由し、小富士牧場やうつくしま高原美術館、そしてあづま温泉の目の前を通るルートで登って行けば、全区間舗装されており、狭隘区間も農道終点から微温湯までの短い区間で済みますので、是非この迂回ルートでアクセスしてください。


吾妻小富士の中腹に位置しているため吾妻連峰への登山の拠点にもなっており、シーズンになると登山客が多く集まります。路傍にはこんな感じでバックパックがデポされていたり…。


帳場で料金を支払い、渡り廊下を歩いて浴室へ。博物館に収蔵されていてもおかしくない、こんな古い電話が廊下に取り付けられています。受話器を耳に当てながら本体右側のハンドルをグルグル回して電話局の交換手を呼び出して、相手につないでもらっていたわけですね。

 
現在も浄土平に「吾妻小舎」という山小屋がありますが、戦前の鉄道省仙台管理局が昭和9年に建てたこの小屋は当時から旅館二階堂(二階堂家)で代々管理しており、所有権も鉄道省→国鉄→交通公社(現JTB)と移り、現在では旅館二階堂が所有権を有しているんだそうです。そんな関係で、館内には鉄道省や国鉄時代の「吾妻小舎」PRポスターが掲示されています。丸髷を結ってモンペ姿でスキーを滑るなんて、今の私たちの感覚で捉えるとかなりシュールですね。


廊下の途中から外に目を向けると、こんなポリタンクを発見。源泉なんでしょうかね。

 
浴室は男女別の内湯がひとつずつで露天はありません。洗い場の立ち上がり数センチと出入口および男女浴室を隔てるサッシ以外はすべて木造です。浴槽は2つあり、↑画像は源泉がそのまま投入されているぬるい浴槽です。おおよそ30℃位でしょうか。入浴客はみなさん長丁場で、瞑目しながらひたすら体を湯に浸してジッとしています。


このポリ浴槽は加温浴槽で、非加温浴槽の隣に設置されています。非加温槽がぬるすぎるという方はこちらへどうぞ。


湯口から惚れ惚れするほど勢い良く注がれる源泉。非加温、非加水、循環消毒なし。ザブザブとオーバーフローしていきます。お湯は常時新鮮そのもの。
分析表を見ると、陽イオンはアルミニウムイオン43.2mg/kg(30.15mval%) が、陰イオンは硫酸イオン646.5mg/kg(86.56mval%)がそれぞれメインとなっています。見た目は無色透明、口腔が収斂する弱い明礬味+炭酸味+金気+スポーツドリンク味、といった感じで明礬味を中心にいろんな味覚が混在しています。また匂いも、明礬泉らしい酸っぱい匂い+金気臭+タマゴのような匂いなどが、それぞれ弱めながらミックスされています。ギシギシとした浴感です。

体温を下回る30℃程度というかなりぬるいお湯ですが、じっくり浸かっていると、不思議と体の芯からポカポカしてくるので不思議です。しかも湯上りはとてもサッパリ爽快。福島盆地の蒸し風呂のような夏の暑さを一気に忘れさせてくれます。この記事を書いていたら、またここで湯浴みしたくなってしまいました。今年もまた行こうかしら。



源泉名:ぬる湯
酸性-含鉄(Ⅱ・Ⅲ)-アルミニウム-硫酸塩泉(旧泉質名:含緑礬・酸性明礬泉)
31.8℃ pH2.9 194L/min(自然湧出したお湯を浴槽へ動力揚湯) 溶存物質1.139g/kg 成分総計1.379g/kg

福島県福島市桜本字温湯11  地図
0245-91-3173

10:00~15:00 冬期休業
500円
シャンプー類あり、他の備品類なし

私の好み:★★★
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網代温泉 平鶴

2011年06月29日 | 静岡県
 
数カ月前の某日、ふと海を眺めながら温泉に入りたくなり、以前から気になっていた網代の旅館「平鶴」へ行ってみることにしました。網代駅から徒歩圏内にあり、しかも国道沿いという好立地。ご覧のとおり相模湾の海っ縁に位置しており、露天風呂は海に浮かぶようにせり出ているというのです。一体どんなお風呂なのでしょう。


こちらのお宿では日帰り入浴を積極的に受け入れており、フロントの方も実に手慣れた感じで案内してくださいました。ロビーの右手へ向かうと上下二手に分かれ、上へ行くと食堂、下が浴室となっています。訪問時は手前が女湯で奥が男湯でしたが、どうやら男女入れ替え制のようです。なお両浴室の入り口の間に有料ロッカーが設置されています。


訪問した日には多くの宿泊客がお風呂を利用していましたが、さすが人気のあるお宿だけあり、脱衣所はお手入れがキッチリなされていました。アメニティもひと通り揃っています。


(上画像クリックで拡大)
脱衣所内に温泉分析表が掲示されているのはごく普通ですが、このお宿では、このお風呂がどのような利用形態なのか、どんな湯使いをし、いかにして衛生状態を維持してゆくか、という内容が記された衛生管理計画書までもが掲示されていました。一般的にこの手の資料はオモテに出さないものですが、わざわざお客さんに明示している姿勢からは、宿側の誠実さが伝わってきます。

 
内湯は大小の長方形を角でドッキングさせたような形状をした大きな浴槽がひとつ。洗い場にはシャワー付き混合栓が7基とシャワーのみの混合栓が2基用意されています。洗い場の各区画に貼りつけられた鏡は鏡面仕上げをした金属板で、すぐ曇っちゃって使いにくいかも。
小さな四角の浴槽は入口側が浅くなっており、底には石造の亀が沈められていました。


模造の竹を被せられたパイプから結構熱い源泉が投入されています。浴槽の広さの割には投入量は少ないように思われますが、投入量を絞って湯温を調整しているのかもしれません。先ほど紹介した脱衣室内の「計画書」によれば循環消毒はなされていないとのこと。つまり掛け流しで、浴槽の浴槽の縁からオーバーフローしています。先客が多くて既に溢れ出ていたためか、あるいは投入量自体を絞っているためか、この時のオーバーフロー量は少なめでした。


浴室の壁面には伊豆の大きな観光地図が掲示されていました。北が左側、東が上になっているこの地図は、お風呂から海を眺めた時に、景色の正面が地図の上になるように描かれています。ぱっと見る限りでは主要なポイントは大体おさえられていますね。そんなに古くもなさそうです。これから紹介する露天風呂から海を望んで、どこがどの方向なのかさっぱり把握できない方もいらっしゃるでしょうから、そんなお客さんにこの地図は役立つのかもしれませんね(いや、それには大きすぎるか…)。

 
露天風呂。本当に海に浮かんでいるみたいだ。
浴槽は6~7人サイズで屋根付き。設置位置の関係で北側に視界が開けており、相模湾はもちろんのこと、多賀や熱海の街並み、錦ヶ浦、そして熱海峠から連なる伊豆半島の脊梁の稜線を一望できます。
なお初島は建物の影に隠れてしまうため望めないようです。海上を見ると、沖のテトラポットの向こう側に漁網のブイが浮かんでいます。ということは、網を仕掛けた漁師さんからこのお風呂は丸見えなんだな…。
浴槽に突き出た2本のパイプからは、我慢してやっと触れる程度の熱さの源泉が注がれています。源泉投入量は内湯より明らかに多く、やはりお湯の鮮度は露天の方が良いみたいです(おそらくこの時は外気に冷やされないよう露天の投入量を増やしていたのかもしれません)。


内湯同様お湯は掛け流されているのですが、面白いのが、オーバーフローするお湯は海に直接垂れ流されているところ。一旦排水管に集められるでもなく、浴槽の縁からそのまんま溢れ出て海へと落ちているのです。後から入ってきた子供たちも「お湯が海に落ちてるよ」と興味津津の様子でした。何かと規制が五月蠅い今のご時世で、このオーバーフローは保健所から文句こないのでしょうか。露天のお湯ならシャンプーや石鹸が流れ込むわけじゃなく、汚れていない天然の温泉のままなのですから、今後もこのままの状態をキープしていただくと嬉しいです。

さてお湯の特徴ですが、無色透明ながら澄み切ってはおらず、よく観察すると微細で半透明な茶色い浮遊物が湯中を舞っています(でも目をよく凝らさないとわからないほど小さいものです)。海辺の温泉なので塩辛いと思いきや、意外にも塩味はマイルドで、むしろニガリの味の強さが印象的でした。海水を薄めた上で苦汁を濃くしたような感じで、知覚の方向性としては(熱海の)伊豆山温泉の走り湯源泉に近いものがあるかと思います。なお匂いはあまり感じられませんでした。食塩泉的なスベスベ感も多少ありますが、どちらかといえば引っかかり浴感の方が強く、湯上りの温まり方がとても強力です(ということは夏はベタベタして体力を奪われそう…)。

日帰り入浴で1050円という、いかにも観光地伊豆らしい料金設定ではありますが、お湯は掛け流しで良質ですし、海にせり出した露天風呂からの眺望や開放感は掛け値なしに素晴らしいので、泉質重視派にも、お湯のことはよくわかんないけど景色のいい温泉に入りたいという方にも、おすすめできるお風呂かと思います。


 

お湯に満足して外へ出た帰り際、宿の山側斜め前の国道沿いに何やら怪しい小屋を発見。どうやら温泉の源泉小屋らしく、トタンで囲まれたその小屋は錆びて草臥れており、歩道橋の影に隠れて雑草に覆われ全く目立たず、よほど関心のある人以外はこれが源泉小屋だと気づかないでしょう。
つい気になったので、階段を上がって良く見ると、そこには「網代1号源泉」と記されているではありませんか。脱衣所に張られていた温泉の説明プレートにも源泉名として「網代1号」と書かれていたので、もしかしたらこの小屋で汲み上げられたお湯が宿で使用されているのかしら。
でも、同じく脱衣所に掲示されていた分析表には源泉名として「下多賀1号泉」という名称の他、わざわざ源泉所在地(下多賀字大縄480-2)まで記入されており、その住所をたどるとこの小屋とは違った場所に行きついてしまうのです。網代1号と下多賀1号、それぞれの源泉の関係は? そして実際に「平鶴」で使われている源泉はどちら?
 

下多賀1号泉
カルシウム・ナトリウム-塩化物泉 62.2℃ pH7.8 成分総計7.862g/kg

JR伊東線・網代駅より徒歩6~7分(約550m)、または熱海駅から東海バスの網代旭町行で小山バス停下車し徒歩2分(熱海から約25分・540円)
静岡県熱海市下多賀493  地図
0557-67-2221
ホームページ

日帰り入浴時間 11:00~16:00及び18:00~20:00
1050円
ロッカー(100円有料)、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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熱海温泉 福島屋旅館

2011年06月28日 | 静岡県

熱海もバブル崩壊後は大規模旅館が次々に潰れて悲惨な状態でしたが、近年は個人客向けに業態を変化させた施設が少しずつ増えてきており、街の様子も少しずつ変わってきているようです。
そんな時代の変化をあまり感じさせず、昔ながらの姿を保ち続けているお宿のひとつが「福島屋旅館」でして、温泉ファンの間では熱海で掛け流しのお湯に入れる鄙びたお宿として有名です。かくいう私も忙しくてあまり遠出できないにもかかわらず、どうしても鄙びた温泉に入りたくなった時には、しばしばこちらを利用させていただいています。熱海駅から徒歩圏内に位置しており、急坂ばかりの熱海にありながら、駅からあまり坂を上下しなくてよい立地にあるのも嬉しいところです。

ネット上では「かつては旅館だったが、今では日帰り入浴を専門としている」なんて記述が見られますが、今でも素泊まりなら宿泊できるみたいですよ。重くて開けにくい玄関の引き戸を開けると、すぐ左手に小さな帳場があり、先日訪れた時には宿のおばちゃんがアンニュイな空気を醸し出しながらノンビリと紫煙をくゆらせていました(帰るときにはお化粧してました)。
カウンターには貸出用のシャンプー類やボディーソープ、ドライヤーが並べられています。


館内に掲げられた昔の当旅館の写真。3階建てだったんですね、昔にしては珍しい。


いかにも昭和の旅館を思わせる内部の造り。玄関正面の姿見(鏡)左手の廊下を進んだ突き当たりが男湯、その右手が女湯です。

 
脱衣所もレトロ感たっぷり。真ん中に裸電球がぶら下がっているだけの薄暗い室内。板の間は歩くとキュッキュと音がなります。意図的に音を鳴らしているなら鶯張りであると胸を張れますが、こちらの場合は単に古くて軋んでいるだけでしょうね。

 
室内には籐の籠が積んでありますから、衣類や荷物はそれに入れて棚に置きましょう。SL時代の駅のホームに設置されていそうな、重厚感のあるタイル貼りの洗面台もいい味出してます。


段を下がったところにある温泉には良泉が多い、という言葉をどこかで聞いたことがありますが、こちらも脱衣所から数段下りた位置に浴室があります。タイル貼りの浴槽は8~10人サイズ。小規模旅館のお風呂にしては意外と大きめですね。


脱衣所同様、こちらも裸電球だけの照明。日が暮れるとかなり暗くなりそうですね。総木造の建物ですが、窓サッシも昔ながらの木製。特に天井付近の小窓が風情ある草臥れ方をしていて良い雰囲気。また天井と側壁の角には細いスリットが入っているため、これにより常時換気され、湯気で室内が篭るようなことはありません。

 
主浴槽の隣に小浴槽があるのですが、ここはいつも空っぽ。
洗い場にはシャワーなんて上品なものは無く、先が長いお湯と水の蛇口が2組あるだけで、それぞれの下には青い盥が置かれています。


赤いバルブから注がれるお湯はやや熱く、湯船の湯加減もちょっと熱めです。加水の有無はわかりませんが、加温循環消毒は行われておらず、お湯は常時浴槽の一番奥の角からオーバーフローしており、人が湯船に入るとザバーっと勢い良く溢れ出します。澄み切ってはいませんが無色透明、かなり薄い塩味に芒硝の味と匂いが感じられます。弱いスベスベ感と引っかかる浴感が混在しており、熱さのためかあるいは芒硝のためか、お肌がちょっとピリピリします。でも食塩と芒硝のダブルパワーのおかげで、湯上りの温まりがとても強く、厳冬期でもなかなか湯冷めしません(逆に言えば、夏はかなり体力奪われます)。じっくりお湯を堪能すれば、きっと熱海のお湯のクオリティの高さを実感できるはずです。

地元の常連さん曰く、熱海で掛け流しの大きなお風呂に入れる処はなかなかないから、よくここに来ているとのこと。たしかに熱海の共同浴場はどこもかしこも小さくて狭いところばかりですから、手軽に大きなお風呂に入るとなると、どうしても選択肢が限られちゃうわけですね。そういう意味でもこの「福島屋旅館」は貴重な存在だと思います。尤も、好き嫌いははっきり分かれるでしょうけど…。なお、その常連さん情報によると、梅園の時期(早春)には香具師のアンチャンで、盛夏には海水浴帰りの客で、それぞれ混むんだそうですよ。ご参考まで。


JR熱海駅から徒歩10分(約1km)
静岡県熱海市銀座町14-24  地図
0557-81-2105

11:00~19:00
400円
貴重品は帳場預かり、シャンプー類やドライヤーは貸し出し

私の好み:★★★
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谷津温泉 薬師の湯

2011年06月27日 | 静岡県
 
約1500年前に行基によって開湯という伝説が残っている伊豆屈指の古湯「谷津温泉」。河津町の峰温泉や谷津温泉は敷居の高い旅館ばっかりなんじゃないかと勝手に思い込んでいたのですが、某日天城峠を越えて東伊豆へ向かっているとき、河津駅付近の路傍に「薬師の湯」と書かれた看板を見かけ、携帯で調べてみたら、どうやらそこでは気軽に日帰り入浴ができるらしいことを知ったので、事前調査なしで行ってみることにしました。河津の峰温泉から小道に逸れて細い道を谷戸の奥へと進んでいったところに位置しており、奥まった立地故に少々わかりにくいのですが、上述のとおり近辺まで来ると立て看板や電信柱の広告があるので、それを目指せば迷わずに済むかと思います。ちょっと古いカーナビで検索すると「ヴィラ・サーフサイド」という名称で出てくるかもしれませんが、それと同一施設ですのでご心配なく。

 
こちらは民宿兼日帰り入浴施設のようですが、施設内には大きなプールが目立っており、プールサイドにはスキューバ用のボンベが並べられていました。おそらくこのプールでダイビングの練習をするんでしょうね(専らシュノーケル派の私にはよくわかりませんが…)。しかもこのプールの水は全て温泉なんだとか。すごいですね。
館内は店番をしているおばさん以外は誰もいないので、妙に静まり返って不気味でもありました。こちらは温泉入浴の他、源泉の熱を利用した岩盤浴施設もあり、むしろそちらを売りにしているようですが、入浴のみの利用も可能です。


施設内に入ってとっても気になるのが、シューシューと音を立てながら勢い良く蒸気を吹き上げるこの源泉井と櫓。浴室や岩盤浴室のそばにあるので、こちらを利用する方なら誰しもが目を奪われるはず。

 
近づいてみると、蒸気のみならずお湯もボコボコと湧いています。こういう光景っていつ見ても興奮しちゃいますね。我を忘れて夢中になって観察しちゃいました。

 
源泉井には湧いたばかりのお湯を貯めておく枡があり、そこには石膏とおぼしき析出が分厚くコーティングされていました。温泉で石膏をはじめとする硫酸塩の析出はよく見かけますが、こんなに分厚い析出はなかなかお目にかかれません。触ってみたいのですが、湧いているお湯は熱湯ですから、指を咥えて傍観するだけにとどめておきました。


傍らにはスケールがかき集められているカゴを発見。すぐに(析出が固まって)スケールが詰まっちゃうんでしょうね。メンテナンスが大変そうです。

この源泉井で湧いたお湯が浴室へ引かれており、そしてその高熱を岩盤浴で利用しているのです。スーパー銭湯で見られるような人工的な熱ではなく、自然の熱であります。その熱はどんなもんか、さっそく行ってみましょう。

 
では岩盤浴へ。デトックスという言葉が独り歩きしているためか一時期は女性からかなり人気を集めましたが、この手の所謂「お湯のいらないお風呂」は今に始まった話ではなく、信州の渋温泉には「信玄竈風呂」がありますし(そういえば渋温泉の開湯伝説にも行基がかかわってきますね)、秋田県の玉川温泉に行けば中高年が茣蓙を敷いてそこらじゅうに寝っ転がっているわけで、つまりは日本古来の温浴方法のひとつであり、昔から同じようにして爽快感や健康増進を図っていたんですね。
余談はさておき、こちらの岩盤浴場は建てられてからあまり年月が経っていないのかかなり綺麗です。


岩盤浴室内はこんな感じ。こちらの部屋は男女兼用ですが、この反対側には女性専用ルームもあります。窓から外の光が降り注ぐので、岩盤浴は薄暗い部屋じゃなきゃイヤという方にはちょっと不向きかも。しかしながら玉砂利から伝わってくる温泉の熱はやはりすごい。体の芯までしっかり伝わりますね。実に気持ち良い。全身汗だくになったところで、休憩室に備え付けの水を飲んでから浴室へ。


 
浴室の脱衣室もシンプルな構成ながらとても清潔です。なおロッカーは脱衣所内には無く岩盤浴棟に設置されています。


内湯の様子。7~8人サイズの浴槽がひとつ、その手前の洗い場にはシャワー付き混合栓4基設置されています。画像ではわかりにくいのですが、浴槽左脇には飛び石が置かれ、それを渡ってドアを開けて屋外の露天へ向かうようになっています。

 
湧出温度がなんと100℃という、これ以上無い熱湯を源泉櫓からわずか数十メートルの距離で浴槽へ投入しているため、湯口から注がれるお湯は激熱。湯口を観察すると、部分的に冷たい箇所もあったので、源泉投入量を絞って加水しながら湯温調整しているようですが、それでも結構熱かった…。湯口内部の配管や周囲の石には、石膏のトゲトゲ析出がビッシリ付着していますね。
トロトロとしたお湯は無色澄明、よく見ると微細な白い浮遊物もチラホラ。泉質名には塩化ナトリウムが含まれていますが、味に塩気は無く、硫酸塩泉的な味と匂いが明瞭に感じられ、青白い輝きも明瞭で、湯中の肌も青白く見えます。スベスベとした滑らかな肌触りの中に硫酸塩泉的な引っ掛かりが混在。熱い上にしっかりと硫酸塩が効いているので、ちょっと浸かるだけですぐに体がヘロヘロになってしまうのですが、でも浴感がいいので再びお湯に戻りたくなり、自分の体力と相談しながら入ったり出たりを何度も繰り返してしまいました。

 
露天はあまり開放感はないものの、塀の手前に潅木類を配して、小さな庭としてしっかり纏められた造りです。この岩風呂は5人サイズで、こちらの浴槽の縁にもちゃんと白い析出が付着していますね。たまに電車の走行音が聞こえてくるので湯船から見上げてみると、真上を伊豆急の電車が走っていました。「隠れ鉄」な私は密かに興奮。でもお湯は内湯の方がキリっとした浴感が冴えていたので、個人的には内湯の方が好きかも…。というのも、露天も内湯同様に源泉投入量を絞りつつ、加水をして湯加減を調整しており、画像で写っている湯口の他、内湯側から足を入れる浴槽中の段付近にも塩ビパイプの湯口が設けられているのですが、両方の湯口はいずれも投入量が少なく、もしお客さんで混雑したらたちまちお湯が鈍っちゃいそうな感じなのです。ま、そうなりそうな状況なら、施設側で投入量を調整するんでしょうから余計な心配は無用かもしれませんね。
ちなみにこの露天で湯浴みしていると、たまに櫓の方から風に乗って鼻を刺激する微かな匂いが感じられました。源泉櫓のすぐ傍だからこそ、こんなことも体感できるんだと思います。

いかにも伊豆らしい無色透明の硫酸塩泉ですが、お湯の元々の泉質に鮮度の良さが相俟って、湯上りに得られた体の芯からホッコリする温まり方からはパワー漲るお湯の実力を実感でき、それでいてベタベタするわけでもなく、むしろスッキリサッパリした爽快感もあり、見た目からは想像できない潜在能力を持った優れたお湯であると感じました。ただ、料金設定がいかにも伊豆らしい高さであり、これをどう捉えるかは難しいところ。でも私個人の感想としては、お湯の良さや源泉を使用した岩盤浴の気持ちよさを考えれば、決して高くはないかと思います。


谷津38号
ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉 100℃ pH8.6 成分総計1377.28mg/kg

伊豆急行・河津駅より徒歩20分(約1.5km)
静岡県賀茂郡河津町谷津171-1  地図
0558-34-1445
ホームページ

?~22:00
入浴のみ800円(小タオル付)
岩盤浴+入浴1600円(3時間)
ロッカー(100円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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ふじの温泉 東尾垂の湯

2011年06月24日 | 神奈川県
※2019年現在、長期休業中。

 
丹沢から奥多摩、秩父にかけての関東山地周辺地域は、高アルカリ・無色透明・ヌルヌル・タマゴ味&匂い、という共通した特徴を有した温泉・鉱泉が点在していますが、その多くは源泉温度が低いために加温されていたり、しっかり循環消毒されていたりと、なかなか源泉そのままの状態で湯浴みできる施設がありません。そんな中で珍しく源泉掛け流しを実現しているのが「東尾垂の湯」。私個人の話で恐縮ですが、忙しくてなかなか温泉巡りができない時は、比較的短時間で自宅から行くことができるこの施設で温泉に入りたい欲求を満たしており、回数券を購入しているほど度々お世話になっています。
元々病院で利用するために掘削された温泉ですが、湯量が豊富なために日帰り入浴施設を設けて一般客にも提供することになったのがこの施設のはじまり。従って隣接地には大きな温泉病院が聳え立っています。


入口から玄関へのアプローチには足湯槽が設けられていますが、いつ行っても空っぽ。以前はお湯が張られていたような記憶があるのですが、いつの間にやら使用中止になってしまったのでしょうね。


玄関の左手は食堂および休憩室スペースで、右手が入浴エリアとなっています。受付では、入浴券および下駄箱のカギと引き換えに脱衣所のロッカーキーとレンタルタオルセット(フェイスとバスが1枚ずつ)が手渡されます。脱衣所は天井など良く見ると安普請ですが(失礼な表現で恐縮です)、いつ訪れてもよく手入れされており綺麗です。ロッカーは縦長のもので、ハンガー付き。


洗い場はスーパー銭湯でよく見られるような、ひとつひとつがパーテーションで仕切られているタイプのもので、12基用意されています。ちなみに脱衣所から浴室へ出る扉は2ヶ所あり、ひとつは洗い場の前に出られるのですが、もうひとつは洗い場を経由せずに直接浴槽の前へ出られてしまうので、脱衣してから体を洗わずいきなり湯船へドボンと直行してしまう不埒な輩が現れないかと心配でなりません。

 
内湯は大中小の3つに分かれており、大が約10人サイズ、中は3人サイズでジャグジー作動、小は1~2人用です。いずれの浴槽にも源泉が掛け流しで投入されており、大・中の浴槽は槽の縁からオーバーフロー、小浴槽は専用の排水口から排湯されています。

この浴槽に並んで設置されているのが私の大好きなミストサウナ室。湯気が籠ってまったく撮影できなかったので、今回画像は掲載できませんが、このミストサウナは源泉を霧状に噴霧しているのです。室内には温泉由来のタマゴ臭が充満し、頭の上から足の先まで温泉まみれ。サウナ室内には樽風呂4つと寝湯2つが設置され、それらにも源泉が注がれており、掛け流しのお湯に入りながら、経口で源泉のミストを吸引し、また全身の皮膚でそのミストを浴びるという、なんとも贅沢な湯使いを楽しめるのです。ちなみに各湯口やミストの噴射口には白い析出が付着しています。

お湯は無色透明ですが、心なしか薄っすら青白いような気もします。タマゴの匂い&味が明瞭で、芒硝の匂い&味も弱いながらはっきり感じられます。アルカリ性単純泉ですが、明らかに芒硝型に偏った泉質で、ツルスベ感は強いものの、比較的高いアルカリ性であるにもかかわらずヌルヌル感はさほど強くなく、むしろ硫酸塩泉的な引っかかる浴感も混在しています。なお消毒されているそうですが、あまり気になりません。この泉質由来の知覚は浴槽によって程度に差があり、ミストサウナ室と小浴槽が最も匂い・味が明瞭で、お湯のキリっとした鮮度も得られます。それに比べると大きな浴槽は日によってコンディションに波があり、小浴槽なみに知覚面がはっきりした日もあれば、ぼやけちゃってる日もあり、おそらくお客さんの混雑具合で変わってくるのかもしれません。なお各浴槽とも消毒処理がなされているようですが、あまり気になりません(私の嗅覚が鈍いだけかもしれませんが)。

 
土休日に行くといつもお客さんが集中する露天風呂。周囲を山に囲まれた長閑で静かな環境です。目の前には車道に沿って張られている電線が視線を邪魔しており、それがちょっと玉に瑕ですが、都心から近距離であるもかかわらず、緑豊かな景色を楽しめるので、人気が集まるのも当然かもしれません。源泉掛け流しが売りの当施設ですが、露天風呂だけは循環・加温されており、内湯で感じられるようなタマゴ感はほとんど消え、かろうじて芒硝っぽさが残っているような状態。でも浴槽縁からのオーバーフローも見られるので、完全な循環ではなく、源泉を投入しつつ循環も行う半循環なのかもしれません。

土日は混雑するのであまりお湯の良さをじっくり堪能できないかもしれませんが、この界隈でかけ流しの温泉施設はあまり多くありませんから、都心からあまり遠出せずに、自然に囲まれた環境で掛け流しのお湯に浸かりたいとお考えの方にはおすすめのお湯です。首都圏のスーパー銭湯なみの料金にもかかわらず、その中にレンタルタオルが含まれているのも嬉しいところです。なお平日でしたらゆっくり利用できますよ(ただし平日の午後5時以降は料金が安くなるので急に混み始めますが…)。ちなみに私個人的としては源泉噴霧のミストサウナが大好き! 利用するたびに、露天なんかにゃ目もくれず、ひたすたミストサウナ室で「籠城」しています。


アルカリ性単純温泉 pH9.7 44.9℃ 蒸発残留物0.886g/kg 成分総計0.892g/kg

神奈川県相模原市緑区牧野8114-2  地図
042-689-2360
ホームページ

10:00~21:00
850円(レンタルタオル付、平日17:00以降は400円)
(平日のみタオルなしで550円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント (2)
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