温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯の児温泉 中村温泉寿湯

2016年06月18日 | 熊本県

前回記事に引き続き湯の児温泉の日帰り入浴専門施設を取り上げます。今回は家族湯を専門とする「中村温泉(寿湯)」です。
利用の際には、まず温泉街の通りに面している食料品店「中村商店」を訪い、アンニュイな感じの方に料金を支払って受付を済ませます。なお事前予約も可能のようです。


 

受付後は商店から数十メートル離れたところにある湯屋へと向かいます。湯屋の脇にはポンプ小屋や貯湯タンクが立っていますから、お風呂のお湯はここから供給されているのでしょう。湯屋には2つの出入口があり、いずれも家族湯として使うことができますが、出入口は湯屋の中心ではなく、かなり右側に寄って設けられていますから、その状況から察するに右側の方が狭いことが予想されますね。


●小浴室

ひとまず右側の浴室から見てゆくことにします。


 
右側のドアを開けると、いきなり及び腰になりそうな光景が目に飛び込んできました。ここって他所者が入って大丈夫なの? 良い表現をすれば家庭的、そうでない表現だと雑然、そんな雰囲気の小部屋なのです。4畳半ほどの室内にはソファーや棚などの家具がが所狭しと置かれ、その上にタオルなどいろんな私物が放置されているではありませんか。しかも先ほどまで近所のおじいさんが利用していたため、その爺さんの湿布の臭いが充満しています。


 
その小部屋を抜けて浴室のドアを開けると、そこにはやはり家庭の浴室みたいな光景が広がっていました。スカイブルーを基調としたタイル張りの浴室にはシャワーが1基と、1.5m×3mほどの浴槽が設けられています。そして腰掛けや桶が複数備え付けられているのですが、それぞれがバラバラな大きさであるため、整頓することができずに洗い場へ放置されるがまま。ハンドレールには何枚ものアカスリタオルがぶら下がっているのですが、これもどれが誰のものだかさっぱりわからない状況です。そんなお風呂ですが、お湯は絶え間なく供給されており、上向きの湯口からトプトプと音を響かせながら注がれ、縁からしっかりと溢れ出ていました。


●大浴室

続いて左側の浴室も覗いてみることにしましょう。


 
家族湯ということは、貸切利用になるわけですから、入室の際はドア脇にぶらさがっている札を裏返しておき、利用中である旨を知らせます。


 

明らかにこちらの方が床面積は広いのですが、室内の雑然さは右側と互角の勝負。ソファーやベビーベッドなどいろんな家具にタオルが幾重にもかけられているのですが、いずれもシワシワでゴワゴワに固くなっており、しかもめくれ上がったままの箇所もあって、その様子を目にすると、泥棒に漁られた後なんじゃないかと警戒したくなります。部屋の隅にはホコリもたまっており、古いままのタオルやホコリの類から何かの胞子が飛んでいないかと心配にもなります。
その一方、室内にはドライヤーが備え付けられているばかりか、なんとエアコンまで完備されているので、湯上がり時のクールダウン対策はバッチリです。尤もエアコンを運転させたら怪しいホコリや胞子などが部屋中に蔓延するんじゃないかと心配を抱きたくなりますが、もし心配なら運転させなければ良いわけで、私は運転させましたけど、いまのところは特に呼吸器系の疾患を患ったようなことはありません。


 
右側のお風呂は水色基調でしたが、こちらの浴室はピンク基調。一人で貸切利用させていただくのが申し訳なくなっちゃうほど大きな浴槽があり、浴室両端にシャワーが1基ずつ(計2基)取り付けられています。画像を見る限りではちゃんと整頓されているように見えますが、それもそのはず、ゴチャゴチャだった浴室を、入浴に際して私が片付けたのでした。


 
洗い場のシャワーから出てくるお湯は温泉です。2つあるカランのうち、一つはシャワーとスパウトの両方を使えますが、もうひとつはシャワーのみです。


 

淡いピンク色タイル張りの浴槽は1.5m×4.5mはありそうな大きなもので、中小規模の旅館でしたら大浴場と名乗ってもおかしくないほどです。バルブ付きの湯口は小さな浴室と同じく上を向いており、しっかりした量のお湯を間断なく浴槽へ注いでいました。そして桶が積み重ねられている湯尻の切り欠けより排湯されていました。湯使いは完全放流式。浴場としての衛生状態には疑問を抱かざるを得ませんが、温泉のお湯はフレッシュそのものでとても綺麗です。
見た目は無色透明でクリアに透き通っており、甘塩味と石灰の味が感じられます。ちなみに、匂いはあまり嗅ぎとれなかったかも。湯口では44℃ほどの湯温ですが、投入量が多いためか湯船でもさほど下がらず、43~44℃ほどというちょっと熱めの湯加減になっていました。一般的に、湯の児温泉のお湯は塩気の他に石灰の析出がうっすらと現れることがありますが、こちらのお風呂ではそれらしきものが見られず、これに関連するのか、土類的なフィーリングが薄い代わりに食塩泉らしさが前面に出ており、引っかかる浴感は弱いものの、ツルスベ感ははっきりと肌に伝わりました。当地の他源泉よりカルシウムが少ないのかもしれませんね。
ちょっと熱めで火照りやすいお湯ですから、長い時間お湯に浸ることはできませんが、いざ湯船から出ようと思っても、気持ちよさに後ろ髪が引かれてしまい、制限時間ギリギリまで湯船を入ったり出たりを繰り返し、着替える時には冷房を最強にして体をクールダウンさせたのでした。
潔癖性の方にはちょっと厳しいかもしれませんが、B級施設に心惹かれる方にはオススメです。


中村温泉泉源
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 46.8℃ pH7.1 170L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質1.936g/kg 成分総計2.007g/kg
Na+:477.0mg(80.57mval%), Mg++:16.1mg, Ca++:58.2mg(11.28mval%),
Cl-:345.7mg(38.69mval%), Br-:0.6mg, SO4--:11.4mg, HCO3-:915.2mg(59.53mval%),
H2SiO3:65.1mg, HBO2:16.3mg, CO2:70.6mg,
(平成19年12月22日)

熊本県水俣市大迫湯の児1213  地図
0966-63-2278(中村商店)

10:00~22:00(一応このような時間設定になっていますが、実際はかなり適当です)
500円(50分以内)

私の好み:★★+0.5

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湯の児温泉 福田共同浴場(旧竹下共同浴場)

2016年06月16日 | 熊本県
湯の児温泉はどちらかと言うと歓楽方向に傾いていた温泉地ですが、近年は客足が減って沈滞ムードに覆われています。そんな温泉街では、いくつかのお宿で立ち寄り入浴ができるほか、数軒の立ち寄り入浴専門施設がありますので、今回はその中から2軒を訪れてみることにしました。まず1軒目は「福田共同浴場」(旧竹下共同浴場)です。

 
水俣の市街からとんとん峠を越え、海を見下ろしながら坂道をどんどん下って温泉街に入るところで、道の右手にボロボロのプレハブ小屋が目に入ってきます。一見すると倉庫や陋屋に思われますが、これはれっきとした共同浴場なんですね。現在は管理者の名前をとって「福田共同浴場」という浴場名になっていますが、つい最近までは「竹下共同浴場」と名乗っており、出入口の右側には旧名称の札が掲げられていました。


 
小屋の右手には高架水槽が立っており、その直下ではポンプの駆動音が響いていました。この浴場で使うお湯を汲み上げ、タンクでストックしているのでしょう。出入口の引き戸には入浴時間と料金(15~19時、200円)が掲示されていました。ネット上の一部サイトによれば、ここはジモ専になって外来者は入れなくなったという情報が見受けられますが、現地に行ってみたところ、特に外来者を謝絶するような注意書きも気配も無く、きちんと湯銭を納めれば問題無く利用できるようでしたので、せっかくですから入らせていただくことにしました。


 
引き戸を開けると、下足場の右側の壁に料金箱(テレビ用タイマーの料金箱を転用したもの)がくくりつけられていますので、ここに100円玉2枚を投入して中へ上らせてもらいます。


 
館内は公民館のような感じで、いくつかの和室が配置されているのですが、ひと気は全く無く、その代わりにいろんな私物が雑然と置かれていました。こんなB級感の強い陋屋共同浴場ですが、熊本県温泉協会からちゃんと浴場として認められているらしく、玄関には協会の認定プレートが掲示されていました。


 
玄関を上がって右に進むと、突き当たりに男女別の浴室入口が並んでいました。男湯の引き戸を開けるとすぐに脱衣室になるのですが、そのスペースがとても狭く、棚があるばかりで、1~2人でいっぱいになっちゃうような空間でした。


 
モルタル塗り浴室は、浴槽や腰部にタイルが、足元には石板が用いられています。数種類の建材を使い分けることによって、小さい室内にささやかな温泉風情をもたらしているのでしょう。でも、壁の白い塗装はところどころ禿げており、床の石板は長年にわたって温泉成分が付着することでアイボリー色にコーティングされ、浴槽は全体的に赤茶色に染まっていていました。そうした目に見える劣化の数々は、この浴場が相当の年月を経てきていることを物語っているようです。
室内には特に洗い場らしきものはありません。一応蛇口が取り付けられているものの、開けても何も出なかったので、お湯は蛇口から直接桶で汲むことになります。浴槽の脇にはデッキブラシが立てかけられていましたが、まさかこれで自分の体をゴシゴシする人はいないでしょう。


 
前面タイル張りの浴槽は0.8m×2mの長方形で、横に並べば3~4人は入れそうなサイズがあります。後述するバルブから無色透明のお湯が吐出されており、縁からふんだんに溢れ出ていました。加水されているような気配はなく、ご覧のような建物ですから加温や循環設備などあるはずもなく、完全掛け流しの湯使いに間違いないかと思います。なお、私が訪問したときの湯船の温度は44.1℃というちょっと熱めの湯加減でした。


  
壁から突き出た配管にはバルブが付いていますので、湯量を適宜調整できます。吐出口における温度は46.0℃であり、それほど大きな浴槽でもありませんから、バルブを全開しちゃうと、ちょっと熱くなりすぎちゃいます。加水できるような水道もありません。そこで私は入浴前にバルブをちょっと締めてから湯浴みさせていただいたのですが、それでもお湯が湯船からザバーッと豪快に溢れ出し、贅沢な湯浴みを楽しむことができました。溢れ出たことにより湯嵩は一時的に減りますが、バルブを開けばすぐにお湯が補充でき、元の位置まで戻りますので問題ありません。
湯口のお湯を口に含むと、甘い塩味と石灰の味が感じられました。硬い水に塩を少々まぶしたような味と表現したら良いでしょうか。湯中では弱ツルスベの中に少々の引っ掛かりが混在する複雑な浴感が得られました。なお匂いは特に確認できません。見た目は透明なお湯ですから大した個性のないお湯かと侮るとエライ目に遭うこと間違いなし。食塩と重曹がメインとはいえ、カルシウムなどもしっかり含む塩化土類泉的なお湯ですから、湯浴みしているとパワフルに火照って長湯できなくなり、お湯から上がってしばらくの間は汗が止まらなくなります。見た目とは裏腹にかなり力強いお湯ですが、その浴感こそ本物の温泉である証。余計なものが無いプリミティブなお風呂で、掛け流しのお湯をしっかりと味わうことができました。


温泉分析書見当たらず

熊本県水俣市浜

15:00~19:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
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湯の児温泉 平野屋

2016年06月14日 | 熊本県
2016年4月の熊本地震では熊本・大分両県の広範囲にわたって被害が発生しましたが、同じ県内でも被害がほとんど出ていないエリアもあり、たとえば県南部の水俣・芦北地方はその典型例です。地震から丁度ひと月が経った5月中旬の某日、私は歴史ある水俣の出で湯、湯の児温泉で一泊することにしました。


今回お世話になったのは、当地で最も古い歴史を有し徳富蘇峰などとも縁のある老舗旅館「平野屋」です。かつては一般的な旅館と同じく食事を提供していたようですが、現在は素泊まり専門となっているようです。私が訪いますと、気さくで明るい女将さんが笑顔で出迎えてくださいました。


●客室
 
築80年近い木造の建物は3階建。今回案内された客室は2階の広縁付き8畳間です。当然ながらお部屋はかなり年季が入っているものの、清掃が行き届いており、テレビ・金庫・エアコンなどの他、洗面台やトイレもあり、Wifiも使えて便利です。



広縁の隅に小さな部屋があったので、ドアを開けてみたら、中にはかわいらしいお風呂がありました。
これって使えるのかな?


 
広縁の窓からは、湖のように波一つ立てない不知火海が、静かに鏡面のような水面を広げており、その彼方には天草の島が巨大な防波堤のように立ちはだかっていました。海岸線に沿って左へ視線を移すと、巨大な廃旅館が目に入ってくるのですが、これは昨年(2015年)経営破綻した「山海館」の跡。洞窟風呂で有名でしたが、残念ながら経営の方も洞窟へ潜ったままの片道切符となってしまったようです。


●大浴場および庄助風呂
 
さてお宿ご自慢のお風呂へと参りましょう。館内には男女別の大浴場、貸切風呂、風呂付き客室という3種類のお風呂があるのですが、このうち風呂付き客室のお風呂は、この晩ファミリーが宿泊しており利用できなかったため、私は大浴場と貸切風呂の2種を利用することにしました。まずは玄関ホールの奥へ進んで大浴場へと向かいます。


 
タイル張りの浴室は見るからに古そうなのですが、お手入れがきちんと行き届いており、隅々までピカピカに輝いていました。
室内の右手手前に浴槽がひとつ、そして左手の壁沿いに洗い場が配置され、シャワー付きカランが4基並んでいます。


 
4つあるシャワーのうち、海側2つはボイラーの沸し湯が吐出されるのですが、山側の2つは源泉のお湯が出てきます。とはいえ、配管の関係なのか、吐出圧力が弱く、しかもぬるいため、女将さんは「海側のシャワー(ボイラーの沸し湯)を使ってください」と案内していました。沸かし湯のシャワーはしっかりとした勢いでお湯が出てきましたよ。


 

スカイブルーのタイルが綺麗な浴槽は(目測で)1.2m×2.5mほどの四角形で、7~8人は入れそうな大きさがあります。浴槽の隅には焼き物のライオンが口を開けていたのですが、現在このライオンは使われておらず、その代わり竹のカバーが施された温泉用配管が天井から下ろされており、吐出口にネットを被せた上でお湯を浴槽へ注いでいました。湯船のお湯は無色透明でクリアに澄んでおり、湯の花などの浮遊物は全く見られないのですが、浴槽縁にこびりつくベージュ色の石灰が示すように、このお湯は塩化土類泉のような性格を有しているらしく、湯尻の切り欠けから流れ出るオーバーフローの流路周りは、石灰華により分厚い千枚田状態になっていました。ということは、湯口のネットは湯の花を濾すというより、配管内などから剥がれ落ちる石灰華の破片を捕捉するためのものなのでしょう。


 
 
男女別の大浴場にはそれぞれお宿名物の特徴的な露天風呂が付帯しています。女湯は「小町の湯」、男湯は「庄助の湯」と称し、それぞれ樽を巨大化させたような筒状の湯船が、屋外の軒下に設けられています。上画像は男湯に付帯している「庄助の湯」です。朝寝朝酒朝湯が大好きな小原庄助の名前を付しているお風呂なのですから、このFRP製の円形浴槽はおそらく酒樽を模して作られているのでしょう。内湯と同じ温泉が張られた湯船の中央には丸いテーブルが設けられ、槽内には腰掛けがいくつか沈められています。腰掛けに座って湯浴みをすると不知火海や天草の島々を眺めることができました。このお風呂は西を向いているため、日没時には湯浴みしながら夕陽を眺めることができるんだとか。


 
ちなみに女湯はこんな感じです。基本的は男湯とシンメトリですが、ひとまわり小さいつくりになっているようですね。


●貸切風呂
 
続いて、貸切風呂「籠の湯」も利用することにしました。玄関ホール奥にある海側の勝手口から一旦屋外へ出て、壁沿いに左へ折れると、2階の真下に、いかにも増設しましたと言わんばかりの湯小屋が現れます。


 
「籠の湯」という名前が示すように、お風呂は籠の中にいるかのようなコンパクトなスペース。羽目板の壁で囲まれた狭い室内には、1基のシャワー、そして2人サイズの石風呂が据えられており、赤茶色に染まった湯口からお湯が滔々と注がれていました。なおお湯は大浴場と同じ源泉を使用しています。四方を壁で囲まれている上、天井も低いため、かなり圧迫感がありますが、誰にも邪魔されずに利用できますから、他のお客さんとの兼ね合いなどが気になる方には有意義に使えそうです。

ところで肝心のお湯に関するフィーリングですが、見た目は無色透明で綺麗に澄んでおり、湯の花や沈殿などは見られません。でも湯面に長時間流動がないと、お湯に含まれる石灰が析出するらしく、翌朝早い時間に「庄助風呂」の湯面を見たら、薄い石灰の幕ができていました。結構熱いお湯で、湯口では48℃、湯船では(各浴槽においても)43~44℃ほどの湯加減となっていました。お湯を口に含むと甘塩味と石灰の味が感じられ、石灰の存在感を示す砂っぽい匂いがわずかに嗅ぎとれます。湯中では食塩泉的なツルスベ浴感の他、石灰由来と思しき引っかかる浴感も少々混在しています。味や匂いは薄いのですが、塩化土類泉のような性格を有するお湯であるため、湯船に浸かると全身がガツンとパワフルに火照り、湯上がりにはしばらく汗が止まらず、浴衣が汗でビショビショになってしまいました。さすが本物の温泉は力強さが違います。なお、各浴槽とも湯使いは完全放流式です。またお湯は自家源泉で深さ約100mのところから汲み上げているんだそうです。この宿のみならず湯の児温泉では各施設が自家源泉を所有しており、どの源泉も深さ50~100mから汲み上げているんだそうです。

さて、こちらのお宿は素泊まり専門なので、宿泊する場合は食事をどうすべきか気になるところですが、宿の目の前に焼き鳥屋さんがあるので、お酒を飲む方はそのお店を利用すると良いでしょうし、ちょっと離れたところにある福田農場のレストランではスペイン料理がいただけます。また、車で水俣市内へ出ちゃえば選択肢がかなり広がります。朝食に関しては、あらかじめ女将さんにお願いしておけば、数軒先に並んでいるホテル「海と夕やけ」でいただくバッフェ式朝食を手配してくれますが、料金が結構高いので、これがお気に召さなければ市街のコンビニに頼ることになります。そんなこんなで、食事にはちょっとした工夫を要しますが、ビジネスホテル並みのリーズナブルな料金で、海原を眺められる環境と掛け流しの温泉を楽しめるのですから、旅行者にとっては嬉しいお宿です。しかも女将さんがとてもきさくで明るくお話してくださいます。某宿泊予約サイトの口コミでもおかみさんの人柄に心惹かれたという旨のコメントが目立ちますが、私もそれらの意見に共感。実際に女将さんとのおしゃべりに華を咲かせていたら、あっという間に深夜になってしまいました。

ちなみに私が宿泊したのは、本来は書き入れ時であるはずの週末でしたが、この日の宿泊客は、地震で被害に遭った家族1組、そして私だけ。地震発生からしばらくの間、被害が無かった水俣は地震救援の最前線となり、湯の児温泉も関係者(作業員や業者など)で賑わったそうですが、ひと段落つくと、一気に客足が減り、地震による観光客敬遠の影響がモロに表面化しているようでした。同じ熊本でも被害がひどいところもあれば、このように全く問題ないところもありますよ、ということをお伝えしたく、今回記事にさせていただきました。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 48.7℃ 194.4L/min 
(昭和58年分析。詳しいデータは不明)
加水加温循環消毒なし

熊本県水俣市湯の児1213  地図
0966-63-2161

日帰り入浴12:00~20:00頃
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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湯浦温泉 亀井荘

2016年06月12日 | 熊本県
東北の温泉を続けて紹介している途中ですが、今回から熊本県応援企画として、熊本県の温泉を4軒連続で取り上げます。いつもは半年から1年以上前の古いネタばかりをアップし続けている拙ブログですが、この4回分に限っては一ヶ月前に訪問した際の温泉記を、まだ鮮度が落ちていない状態でアップさせていただきます。まずはじめは、私が大好きな芦北町の湯浦温泉から参りましょう。


 
今回取り上げるのは湯浦温泉の川沿いに立地している「亀井荘」です。目の前を流れる湯浦川の上では、たくさんの鯉幟が垂直状態で休んでいました。いつもは風に揺られて川面の上を躍るように泳いでいるのでしょうけど、この時は無風状態でしたので、泳ごうにも泳げなかったわけです。垂直の鯉幟たちをつなぎ留めるロープを縄や竹串に見立てれば、鯉幟ではなく巨大なメザシに見えなくもありません。


 
「亀井荘」は旅館が本業ですが、日帰り入浴も受け入れています。帳場のカウンターには金の豚の貯金箱がありますので、もし入館時にどなたもいらっしゃらない場合、この豚に湯銭を投入すればOKです。帳場前の角を曲がって細い廊下を奥へ奥へと進みます。


 
途中で廊下がクランク状になっており、その周辺には共用の洗面台や女湯、そして家族湯などが設けられていました。私が入るべき男湯は、家族湯の手前左側です。


 
最近全面的に改修されたらしく、脱衣室は広くないものの現代的でとても綺麗です。室内にはロッカーも設置されています。


 
戸を開けて室内に足を踏み入れた瞬間、温泉から放たれる芳醇なタマゴ臭が香ってきました。否応なくお湯への期待が膨らみます。
改修前の浴室は味わいのある鄙び方をしていたそうですが、改修された現在は木目が美しい立派なお風呂へと生まれ変わっていました。足元や腰部までは御影石(石板)で、側壁上部や天井などは木材が採用されており、明るさも抑えられていて、落ち着きある入浴環境が醸成されていました。なお女湯はこれとは全く異なる、タイルをメインとした内装になっているんだとか。


 
浴室内の脱衣室側に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが4基一列に並んでおり、カランから出てくるお湯は源泉です。シャワーのお湯を頭から浴びると、後述する湯浦温泉のお湯ならではのタマゴ臭に包まれ、なんとも言えない良い気分が楽しめます。


 
浴槽は御影石板張りの大きな長方形が1つで、(目測で)寸法は1.8m×5m弱。足を伸ばしても10人は余裕で入れそうなサイズです。壁に括り付けられている四角い湯口からお湯が吐出されており、湯船に無色透明の澄み切ったお湯を湛えていました。湯使いは加温加水循環消毒のない完全掛け流し。源泉温度が40℃くらいのぬる湯であるため、入りしなはちょっとぬるく感じるかもしれませんが、肩までじっくり浸かって長湯をすると、不思議なくらいに全身がよく温まります。しかも体に優しい泉質であり且つぬる湯であるため、時間を忘れていつまでも長湯していられます。

湯口のお湯を口に含んでみますと、ゆで卵の卵黄みたいに濃くて芳醇なタマゴ臭とタマゴ味が感じられます。ツルンツルンの滑らかなお湯は、体への当たりがとても優しく、軽やかで柔らかく、エアリーですらあります。そして長湯をしていると肌に細かな気泡が付着して、浴感をますます軽やかにしてくれます。上述のように時間を忘れていつまでも浸かっていられるお湯ですので、私は浴槽縁に腕枕をして頭を乗せ、うつ伏せになって湯浴みしていたのですが、あまりの気持ち良さにウトウトしてしまい、気づけば本当に軽く寝てしまいました。


 
自家源泉で湯量も豊富らしく、お湯は浴槽へどんどん投入され、切り欠けから惜しげも無く溢れ出ています。切り欠けから出たお湯は、洗い場の床を波を立てながら流れていました。これだけしっかり投入されているので、湯船のお湯はとってもフレッシュ。綺麗に澄んでいて沈殿や浮遊なども一切ありません。今回は日帰り入浴でお邪魔したのですが、こんな素晴らしいお湯ならば、宿泊してひたすら浸かっていたいと、湯浴みしながら強く後悔しました。微睡みを誘うやさしい名湯でした。


(源泉所在地:芦北町大字湯浦91-1)
単純温泉 39.7℃ pH8.11 122L/min 溶存物質405.7mg/kg 成分総計428.0mg/kg
Na+:99.4mg(87.80mval%), Ca++:8.0mg(8.13mval%),
Cl-:40.3mg(25.05mval%), HS-:1.1mg, HCO3-:195.5mg(70.33mval%),
H2SiO3:47.8mg, CO2:22.0mg, H2S:0.3mg,
(平成19年11月26日分析)
加水加温循環消毒なし

肥薩おれんじ鉄道・湯浦駅より徒歩8~9分(700m)
熊本県葦北郡芦北町湯浦66-6  地図
0966-86-0063

日帰り入浴15:00~22:00
300円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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日奈久温泉 しのはらホテル浜膳

2016年01月26日 | 熊本県
 
「しのはらホテル浜膳」は、その名前からわかるように前回記事で取り上げた「浜膳旅館」の姉妹館であり、「浜膳旅館」に宿泊するとこちらのお宿でも入浴できるので、夕食後に一息ついたところで、伺ってみることにしました。単に姉妹館だから利用できるという理由の他、「浜膳旅館」には大浴場やサウナがありませんので、これらの設備を希望するお客さんのための、補完施設としての役割も果たしているのでしょう。こちらは「浜膳旅館」よりもリーズナブルに宿泊でき、外観はどちらかといえば古くて地味な感じですが…


 
夜になればそれなりの雰囲気が醸し出されていました。リーズナブルなお宿とはいえ、スタッフの方の対応はとて丁寧であり、入浴したい旨を申し上げますと、笑顔で親切に案内してくださいました。


 
エレベーターで大浴場がある5階へ上がり、貴重品をロッカーに預けて、男女別の浴室へ。


 
脱衣室はコンパクトですが綺麗にされており、湯上り後のクールダウンに役立つ扇風機の他、水分補給のため冷水サーバも用意されていました。こうした細かな配慮が嬉しいですね。


 
 
浴室は海側を向いており、しかも5階ですから、見晴らし良好…と言いたいところですが、私が利用したのは夜でしたから、海が望めるはずもなく、ささやかに輝く温泉街の夜景を見下ろすばかりでした。でもガラス窓が手前側へ傾斜しているため、夜間でも室内の照明の反射に邪魔されることなく夜景を楽しむことができました。もちろん昼間はさそがし気持ちの良い眺望が楽しめることでしょう。

浴室の右側に主浴槽が据えられ、左右両側に洗い場(シャワー付きカラン計5基)が配置されています。また主浴槽や洗い場がある一角の左隣には、サウナと水風呂が設けられている区画もあり、主浴槽の区画とサウナの区画の間を隔てるように機械室のような扉があったので、その構造から推測するに、両区画は元々別の浴室だったのかもしれません。


 
主浴槽は目測で3.5m×1.8m。槽内には肌触りの良い緑色凝灰岩質の石材が用いられています。そして石積みの壁に設けられた湯口からお湯が滝のようにドボドボと音を響かせながら落とされており、浴槽の縁から惜しげなく溢れ出ていました。掛け流しの湯使いであり、投入量が多いために、お湯の鮮度感は良好です。温泉分析表は見当たらなかったのですが、スタッフの方に伺ったところ協同組合管理の混合泉を引いているとのこと。お湯は無色透明でほぼ無味無臭、くせのないサラスベの柔らかい浴感でした。
「浜膳旅館」の各客室に付設されているプライベート感の強い小さいお風呂も良いのですが、こうした大きなお風呂でザコザコ大量掛け流しのお湯を楽しむこともやっぱり良いですね。姉妹館である2施設を利用することで、いろんなニーズに対応できる日奈久温泉の懐の深さを実感しました。


分析表見当たらず

肥薩オレンジ鉄道・日奈久温泉駅より徒歩10分(約800m)
熊本県八代市日奈久上西町335  地図
0965-38-0010
日奈久温泉旅館組合公式サイト内の紹介ページ

日帰り入浴時間要問い合わせ
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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