漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「垂スイ」<たれる>と「睡スイ」「錘スイ」「唾ダ」「郵ユウ」

2024年06月02日 | 漢字の音符
 春秋戦国期の垂スイが、「字源」(中国)に出ていました。篆文の前の形が分かりますので字形の変遷図に追加しました。
 スイ・たれる・たらす  土部 chuí 
 
解字 春秋戦国期の垂は「草木等の枝葉がたれさがった形+土を盛り上げた形」の会意。たれ下がった枝葉が盛り土の上にあるかたち。篆文は枝葉の茎が右上に折れ、茎の右左にを配する形となり土に続く。楷書は上部がノに変化し、土が上部と一体化した垂になった。意味は、たれる・たれて地につく。垂を音符に含む字は、「たれる」イメージを持つ。
覚え方 の()、よこ二()たて二( | | )よこ二()たてぼう( | 直に
意味 (1)たれる(垂れる)。たらす(垂らす)。「垂線スイセン」「垂直スイチョク」「垂涎スイゼン」(よだれをたらす)(2)上の者が示す。「垂範スイハン」(模範をしめす)「率先垂範ソッセンスイハン」(人の先に立って模範をしめす)

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 「たれる」
(垂・睡・唾・錘)
 「上から下へたれる」(郵)
音の変化  スイ:垂・睡・錘  ダ:唾  ユウ:郵

たれる
 スイ・ねむる  目部 shuì  
解字 「目(め)+垂(たれる)」 の会意形声。目のまぶたを垂れて眠ること。
意味 ねむる(睡る)。「睡眠スイミン」(睡も眠もねむる意)「熟睡ジュクスイ」「睡魔スイマ
 ダ・つば  口部 tuò
解字 「口(くち)+垂(たれる)」 の会意形声。口からたれるつばき。
意味 つば(唾)。つばき(唾)。つばする。「唾液ダエキ」「唾棄ダキ」(つばを吐くように忌み嫌う、さげすむ)「唾罵ダバ」(つばを吐きかけてののしる)「固唾かたず」(固は緊張して固くなる意、緊張して唾が口にたまること。かたつばの略で古くは、かたつ、とも言った。現代表記では、かたず、と書く)「固唾を呑む」(事の成り行きを案じ、じっと見つめること)
 スイ・おもり・つむ  金部 chuí
解字 「金(金属)+垂(たれる)」 の会意形声。上から下に垂れる金属のおもり。後漢の[説文解字]は「錘は八銖シュ也(なり)。金に従い垂スイの聲(声)」とする。
意味 (1)おもり(錘)。はかりのおもり。分銅。「鉄錘テツスイ」(鉄のおもり)「鉛錘エンスイ」(鉛製のおもり)(2)重量の単位。[説文]は「一錘は八銖シュ」とするが具体的な重さは不明。

紡錘車を作る(「ばさら日本史」より)
(3)[国]つむ(錘)。円盤の中央に棒をとおし、円盤をまわしながら棒の先のカギを通る糸に縒りをかけて巻き取る紡績用の道具。慣用で錘を用いるが、実際のつむ(錘)は土や木の円盤(地域によっては石の円盤)を木の棒にはめ込んだもので金属製ではない。「紡錘ボウスイ」(糸をつむぐ錘つむ

上から下へたれる
 ユウ  阝部 yóu
解字 「垂(上から下へたれる)+阝(むら・まち)」 の会意。中央から地方(むら・まち)へ通信を下ろしていくための中継所。
意味 (1)ゆうびん。文書・荷物などを送る通信制度。「郵便ユウビン」「郵政ユウセイ」(郵便にかんする国の行政)「郵送ユウソウ」(2)宿駅。宿場。「郵亭ユウテイ」(飛脚や馬の中継所。宿場)
<紫色は常用漢字>

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音符「祭サイ」<肉を祭壇にそなえて神をまつる>と「際サイ」「蔡サイ」「察サツ」「擦サツ」

2024年05月31日 | 漢字の音符
 サイ・まつる・まつり  示部 jì・zhài

解字 金文は「月(肉)+示(祭壇)+又(て)」の会意で、肉を示(祭壇)の上に又(て)で供える形。篆文は「示(祭壇)の上に肉と又(て)を近づけた形。この形が基になり楷書の祭となった。楷書は、手の形が又の変形字となっている。
意味 まつる(祭る)。供物を供えて神をまつる。まつり(祭)。「祭日サイジツ」「祭典サイテン」「祭器サイキ」(祭りに使用する器具)「祭司サイシ」(祭りを司る者)

イメージ 
 供物の肉を供えて神を「まつる」(祭・際・察) 
「形声字」(擦・蔡) 
音の変化  サイ:祭・際・蔡  サツ:察・擦

まつる
 サイ・きわ  阝部こざと jì
解字 「阝(神が降りるはしご)+祭(まつる)」 の会意形声。阝(こざと)は丘のほか、はしごの意味がある。神が降りるはしごの前に祭壇を置き、肉を供えてまつること。そこは神と人との相接するところで、天と地との境になる。また、そこで神とまじわる意となる。[字統]
意味 (1)さかい。きわ(際)。はて。「山際やまぎわ」「際限サイゲン」(最後のところ。きり)(2)まじわる。まじわり。「交際コウサイ」「国際コクサイ」(国と国とのまじわり。inter-national)(3)おり。とき。「際物きわもの」(ある時期だけ売り出す品物。ひな人形・鯉幟など)「間際まぎわ」(差し迫った際)
 サツ・みる  宀部 chá
解字 「宀(建物)+祭(まつる)」 の会意形声。建物のなかで神をまつり、神の意志をよく見ておしはかること。また、よく見てあきらかにすること。
意味 (1)おしはかる。思いやる。「察(サッ)する」(推し量る)「察知サッチ」「拝察ハイサツ」(2)明らかにする。よくみる。みる(察る)「観察カンサツ」「診察シンサツ」「偵察テイサツ」(さぐりみる)「省察ショウサツ・セイサツ」(自分自身をかえりみる)

形声字
 サツ・する・すれる・こする  扌部 cā  
解字 「扌(手)+察(サツ)」 の形声。明代の[字彙ジイ]は「音は察サツ。摩(こする)之(こ)の急也(なり)」と、急に手で「こする」意とする。
意味 する(擦る)。すれる(擦れる)。こする(擦る)。「摩擦マサツ」「擦過症サッカショウ」(すり傷)
 サイ  艸部 cài
解字 「艸(草)+祭(サイ)」の形声。形はサイという名の草むらだが、実際はサイという名の国名や姓に使われる。発音を表す字に草冠を付けて国名や地名、外国語の音訳字とするのは漢字の得意技のひとつ。
意味 (1)くさむら。(2)中国周代の国名。今の河南省上蔡県一帯にあった。(3)姓のひとつ。「蔡倫サイリン」(後漢の人。樹皮・ぼろ布・漁網などから紙を製して献上した)「蔡英文サイエイブン 」(台湾の第7代女性総統。2016.5~2024.5)
<紫色は常用漢字>

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音符「兄ケイ」<神に祈るひと>と「況キョウ」「呪ジュ」「祝シュク」

2024年05月29日 | 漢字の音符
 ケイ・キョウ・あに  儿部 xiōng        

解字 甲骨文は「口(くち)+人(ひと)」の会意。[甲骨文字字典]は、「人が祝詞(のりと)を唱える様子であろう。甲骨文字では同輩の男性はすべて兄ケイと呼称されていて長幼の区別がない」とし、同輩男性の意味に用いた理由は「父祖の祭祀に参列する人」を表したからであろうとする。金文になると長男の意味で用いられるようになり、さらに「兄弟」という語で、あに(兄)の意味ともなった。後漢の[説文解字]は「兄、長ずる也」として兄(あに)の意味が定まった。
意味 (1)あに(兄)。「兄弟キョウダイ」「長兄チョウケイ」「兄事ケイジ」(兄のように尊敬して仕える)「義兄ギケイ」(夫あるいは妻の兄)(2)同輩・友人などに対する敬称。「貴兄キケイ」(貴君)

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 「祝詞を唱えるひと」
(兄・祝・呪)
 「形声字」(況)
音の変化  ケイ:兄  キョウ:況  ジュ:呪  シュク:祝

祝詞を唱えるひと
 シュク・シュウ・いわう  ネ部 zhù
解字 「ネ(=示。祭壇)+兄(祝詞を唱える人)」の会意。神に祝詞を唱え幸いを祈る人。
意味 (1)いのる。のる。神に告げる。「祝祷シュクトウ」(おいのり)(2)いわう(祝う)。ことほぐ。幸いを祈る。「祝典シュクテン」(祝いの儀式)「祝福シュクフク」「祝儀シュウギ」(祝いの儀式。祝いの儀式に贈る品物)「祝言シュウゲン」(3)神主。神に祈る人。「巫祝フシュク」(神に仕える者。神職)
 ジュ・のろう・まじない  口部 zhòu  
解字 「口(くち)+兄(祝詞を唱える人)」の会意。口先だけで祝詞を唱える人。祝シュクはネ(=示:祭壇)に祈る形であるが、呪は口先だけで祈る形であり、のろう・まじないの意となる。
意味 (1)のろう(呪う)。のろい。相手に悪いことが起こるよう祈る。「呪詛ジュソ」(呪も詛も、のろう意)(2)まじない(呪い)。不可思議なものの威力を借りて、災いや病気などを起こしたり、また除いたりする術。「呪文ジュモン」「呪術ジュジュツ」「呪縛ジュバク」(まじないをかけて動けなくする)

形声字
 キョウ・いわんや  氵部 kuàng    
解字 「氵(水:流れる)+兄(キョウ)」の形声。水の流れるさまをキョウといい、ありさま・ようすの意。また、そのありさまを他にたとえる意となる。また、「まして・いわんや」の意の助字となる。
意味 (1)ありさま。ようす。おもむき。「近況キンキョウ」「状況ジョウキョウ」(2)たとえる。比べる。「比況ヒキョウ」(比べてたとえる。比喩ヒユ)(3)まして(況して)。いわんや(況や)。強調の助字。「況(ま)して~乎(を)や」「況(いわん)や~哉(を)や」のように、乎・哉などで受ける。
<紫色は常用漢字>

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音符「尽 [盡] ジン」<つきる> と 「儘ジン」「燼ジン」「贐ジン」

2024年05月27日 | 漢字の音符
[盡] ジン・つきる・つくす・つかす  尸部 jìn・jǐn          

解字 甲骨文は、筆に似たかたちのものを手に持ち、皿(うつわ)の中を掃き出している形。皿の中のものがすべてなくなるので、つきる意となる。篆文で聿(ふで)の下の横二線が「大の左右にハがある形」で表され、さらに旧字でその部分が「一+灬」となった盡ジンに変化した。新字体は「尽」に簡略化された。尽の成り立ちは盡の草書体から変化した形とされる。

左から尽の草書・行書・楷書(「書道三体字典」より)
意味 (1)つきる(尽きる)。なくなる。「無尽蔵ムジンゾウ」(尽きることのない)(2)つくす(尽くす)。つかす(尽かす)。だしきる。「尽力ジンリョク」(3)ことごとく(尽く)。すっかり。「一網打尽イチモウダジン」 

イメージ 
 「つきる」
(尽・儘・燼・贐)
音の変化  ジン:尽・儘・燼・贐

つきる
 ジン・ことごとく・まま  イ部 jǐn
解字 「イ(ひと)+盡(つきる)」の会意形声。人の手段が尽きたさま。ことごとく・ままの訓で使われる。
意味 (1)ことごとく(儘く)。みな。=盡(尽)。「儘日」ジンジツ」(終日)「儘数ジンスウ」(全額)(2)まま(儘)。ままよ。なんともなれ。ほどこす方法がない。(3)[国]まま(儘)。そのまま。思いどおり。「儘ならぬ世」「気儘きまま」(自分の思い通りに)「我儘わがまま」(①自分の思うままにする。②相手の事情をかえりみず、自分勝手にする)
 ジン  火部 jìn
解字 「火(ひ)+盡(つきる)」の会意形声。燃えている火がつきて残った燃えかす。
意味 もえさし。もえのこり。「余燼ヨジン」(燃え残り。=燼余ジンヨ)「灰燼カイジン」(もえ残りと灰。燃えてなくなる。=燼灰ジンカイ)「燼滅ジンメツ」(滅びつきる)
 ジン・シン・はなむけ  貝部 jìn
解字 「貝(財貨)+盡(つきる⇒おくる)」の会意形声。旅立つ人に道中の費用を援助するため金銭を贈ること。自分の財貨はつきて、相手側にわたる(おくる)意となる。
意味 はなむけ(贐)。おくりもの。旅立つ人に金品などを贈ること。「贐餞ジンセン」(はなむけ。贐も餞も、はなむけの意)「贐行ジンコウ」(旅立つ人に贐を贈る)「予將に遠行有り、行者は必ず以って贐す(孟子·公孫丑下)」(私は、ちょうど遠方に出かけようとしていた。旅行く者には、必ず餞別を送らなければならない)。「贐送ジンソウ」(はなむけ。餞別)「贐儀ジンギ」(贐の行い。はなむけ)
※「はなむけ」は「馬のはなむけ」の略で、出発にあたり馬の鼻を進む方向に向けること。
<紫色は常用漢字>

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音符「茲ジ・シ」<草がしげる・はびこる>「滋ジ」「慈ジ」「磁ジ」

2024年05月25日 | 漢字の音符
 シ・ジ・しげる・これ  艸部 zī     

解字 甲骨文・金文で分かるように初形は幺幺ジで、幺ヨウ(ねじた糸束)を並べた形。篆文は上部に糸束の末を結んだ形。「ここ・これ・この」などの指示詞に用いられた。のち、篆文の上部が艸(草)と混同され、草がしげる・はびこる意がある[字統]。新字体で用いられるとき、茲⇒兹 に変化する。
意味 (1)しげる(茲る)。はびこる。(2)ます(茲す)。ふえる。ますます(茲)(3)ここ(茲)。これ。この。(4)とし(茲)。年。「今茲コンジ」(今年)「来茲ライジ」(来年)(5)地名。「亀茲キジ」(中央アジアに存在したオアシス都市国家。現在の新疆ウイグル自治区にあり、シルクロード天山南路に位置した。)

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 草木がしげる・はびこる意から「しげる」(茲・滋・慈)
 上記から転じた意「ふえる」(磁・孳)
音の変化  シ:茲  ジ:滋・慈・磁・孳

しげる
 ジ・シ・しげる  氵部 zī
解字 「氵(水)+茲(しげる)」 の会意形声。水が行きわたり草木がしげること。
意味 (1)しげる(滋る)。そだつ。そだてる。「滋育ジイク」(草木を育てる) (2)うるおう。養分になる。「滋雨ジウ」「滋養ジヨウ」(3)おいしい。「滋味ジミ」(①うまい味わい。②物事の深い味わい)(4)地名。「滋賀県シガケン」(琵琶湖のある近畿地方の県)
 ジ・シ・いつくしむ  心部 cí
解字 「心(こころ)+茲(=滋。しげる。そだつ。そだてる)」 の会意形声。子を育てる親の心。
意味 いつくしむ(慈しむ)。かわいがる。めぐむ。「慈母ジボ」(いつくしみ深い母)「慈愛ジアイ」(いつくしみ愛する)「慈悲ジヒ」(慈しんで悲しみを取り去る)「慈善ジゼン」(慈しんで善を行なう)

ふえる
 ジ・シ  石部 cí
解字 「石(鉱物)+茲(ふえる)」の会意形声。土の中の砂鉄をひきつけて、ふやしてゆく鉱物(石)。
意味 (1)じしゃく(磁石)。鉄をひきつける性質。「磁気ジキ」「磁性ジセイ」「磁針ジシン」 (3)瓷(硬いやきもの)に通じ、高火度で焼き素地がガラス化したやきものをいう。「磁器ジキ」「白磁ハクジ」(純白の磁器)
 ジ・シ・うむ 子部 zī
解字 「子(こども)+茲(ふえる)」の会意形声。子がふえること。
意味 (1)うむ(孳む)。子孫がふえる。「孳息ジソク」(子孫がふえる) (2)しげる。(=滋)。「孳萌ジホウ」(草木の芽が次々と出る)(3)孜(つとめる・はげむ)に通じる。「孳孳シシ」(つとめはげむ)
<紫色は常用漢字>

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音符「臽カン」<落し穴に人がおちこむ> と 「陥カン」「餡アン」「焰エン」「閻エン」「諂テン」

2024年05月23日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 カン  臼部 xiàn          

解字 「人+落し穴」の会意。甲骨文は人が落とし穴におちこんださま。金文はさらに穴の入口の〇印と下にある尖ったクイを描く。篆文から落し穴が臼の字になった。現代字は臽となり落し穴・おちいる意となる。
意味 (1)落し穴。 (2)おちいる。おとす。

イメージ  
 「落し穴におちる」
(臽・陥・諂)
 穴に落ち込むことから「中にある」(餡・焰・閻)
音の変化  カン:臽・陥  アン:餡  エン:焰・閻  テン:諂

落し穴におちる
 カン・おちいる・おとしいれる  阝部 xiàn
解字 旧字は陷で「阝(はしごや階段)+臽(落し穴におちる)」の会意形声。阝(こざと)は一般には丘の意味が多いが、はしごや階段の意味もある。[「阝こざと」と「阝おおざと」
カンは、階段の前に作った落し穴におちること。貴重なものを収めた高床式の倉庫を守るため、はしごや階段の前に作った落とし穴に、おちいる・おとしいれる意となる。新字体は臽の下部の臼⇒旧に変化する。
意味 (1)おちいる(陥る)。おちこむ。「陥没カンボツ」「陥落カンラク」 (2)おとしいれる(陥れる)。「陥穽カンセイ」(おとしあな) (3)(穴があくさまから)かける(欠)。「欠陥ケッカン
 テン・へつらう  言部 chǎn
解字 「言(いう)+臽(おとしいれる)」の会意形声。自分を落としいれて言う。自分の位置を落として他人に、こびへつらうこと。
意味 へつらう(諂う)。おもねる。こびる。「諂笑テンショウ」(へつらい笑う)「諂佞テンネイ」(へつらうこと。諂も佞も、へつらう意)「諂阿テンア」(へつらいおもねる。阿は、おもねる意)

中にある
 アン  食部 xiàn
解字 「食へんの旧字(食べ物)+臽(中にある)」の会意形声。饅頭マンジュウなどの中にいれるあん。
意味 (1)あん(餡)。あんこ(餡子)。小豆などに砂糖をまぜて煮てねったもの。菓子や餠の中に包みこむ。「白餡しろアン」(白小豆等を材料にした餡)「餡蜜アンミツ」(蜜をかけた豆に餡をのせたもの)(2)饅頭や餅の中にいれる引き肉や野菜。「肉餡ニクアン
焰[焔] エン・ほのお  火部 yàn
解字 「火+臽(中にある)」の会意形声。ほのおが奧で燃えているさま。火の燃え始めるさまが原義。のち。ほのお一般に用いる。新字体に準じた焔も通用する。
意味 (1)ほのお。ほむら。「火焰カエン」(2)火が少し燃え上がるさま。「焰焰エンエン」(火が燃え始めてまだ盛んでないさま)
 エン  門部 yán
解字 「門(もん)+臽(中にある)」の会意形声。後漢の[説文解字]は「里中門也」とし、町や村の区域の中に立てられたものを閻という。また、門のある町や村の路地や横町をいう。
意味 (1)路地や横町の中の門。「閭閻リョエン」(閭リョは村里の入り口の門、閻エンは村里の中の門)(2)路地や横町。巷(ちまた)。「窮閻キュウエン」(貧しい町のなか)「窮閻漏屋ロウオク」(貧しい町の中の雨が漏れる家)

深川ゑんま堂(江東区深川)の閻魔様
(3)梵語の音訳用字。閻エンは地獄の門にいるエンという王の意。エンはサンスクリット語のヤマYama(地獄の王)の音訳に使われる字のひとつ。発音はヤマ(yama)⇒イェンマ(yanma)⇒エンマ(enma)と変化したと考えられ、閻魔エンマが当てられる。「閻魔エンマ」は地獄に落ちた死者の生前の行いを裁くという地獄の王。「閻魔帳エンマチョウ」(閻魔が生前の死者の行状を書きしるしているという帳面)「閻浮エンブ」(梵語jambuの音訳字。樹木の名。また、穢(けが)れの意)「閻浮提エンブダイ」(須弥山の南方にあるとされる閻浮樹の茂る島(洲)。人間の住む世界。現世。)(4)姓のひとつ。「閻若璩エンジャクキョ」(清の考証学者)
<紫色は常用漢字>

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音符「景ケイ」 <けしき> と 「憬ケイ」 「影エイ」

2024年05月21日 | 漢字の音符
 ケイ・けしき   日部 jǐng・yǐng 


 上から、京キョウ、高コウ、景ケイ
解字 京は「みやこ」の意味であるが、もとは一階の中央に柱を描いた高層建築。金文では周王の宗廟(祖先祭祀場。京宮とも)の意味だが、周王が近くに居住することから「鎬京コウケイ」(渭水流域(関中)に築かれた周の都)という字で都城を表す「みやこ」の意味となっている。一方、高コウは高層建築だが、下部に口がついており入り口・窓などの説がある。
 その下の景は「日(日光)+京(高い楼閣)」の会意形声。京は都を代表する高く大きい楼閣。その楼閣の上に太陽があり、日光に照らされている高い楼閣を表している。意味は、けしき。ながめ。ありさま。また、建物に日光が当たり、その影(かげ)の意味がある。
意味 (1)ありさま。ようす。けしき(景)。「景色けしき」「景観ケイカン」(景色の外観。ながめ)「風景フウケイ」(ありさま。ながめ)(2)すばらしい。めでたい。「景福ケイフク」(大きな幸い)「景雲ケイウン」(めでたいことの前兆の雲)(3)したう。「景仰ケイコウ」(慕いあおぐ)(4)おおきい。「景行ケイコウ」(大きな道)(5)かげ(景)。「景光ケイコウ」(かげとひかり。光陰)(6)[国]そえる。たす。「景品ケイヒン」「景物ケイブツ」(四季折々の興を添えるもの)

イメージ  
 「けしき」(景・憬)
 意味(5)の「かげ」(影)
音の変化  ケイ:景・憧  エイ:影

けしき
 ケイ・あこがれる  忄部 jǐng
解字 「忄(心)+景(けしき)」の会意形声。都の高層建築に日が当たるさまの景(けしき)を見て心で感銘をうけること。転じて自分の置かれている状態を悟(さと)ること。また、憧憬ドウケイ・ショウケイという語は、ある事物に対して期待をもつ、強く望む意味だが、日本では、あこがれる意味で用いられる。
意味 (1)さとる。気がつく。「憬悟ケイゴ」(憬も悟も、さとる意) (2)[国]あこがれる(憬れる)。「憧憬ドウケイ・ショウケイ」(憧も憬も、あこがれる意)

かげ
 エイ・かげ  彡部さんづくり yǐng
解字 「彡(模様)+景(日に照らされた高楼のかげ)」の会意形声。景には「かげ」の意があるが、彡(模様)をつけて、その意味を明確にした字。日光に照らされた楼閣の姿が地上にできる模様。
意味 (1)かげ(影)。光がさえぎられてできる黒い影。「陰影インエイ」「影絵かげえ」「影響エイキョウ」(影は形に従い、響きは音に応ずる。他に作用が及ぶこと)(2)光りに映し出されたすがた。かたち。「影像エイゾウ」「撮影サツエイ」(3)すがた。かたち。おもかげ。「面影おもかげ」「人影ひとかげ」「月影つきかげ」(①月のかたち。②月のひかり)
<紫色は常用漢字>

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音符「奄エン」<上からおおう>と「掩エン」「淹エン」「閹エン」「庵アン」「菴アン」「晻アン」「俺おれ」

2024年05月19日 | 漢字の音符
  増補しました。
 エン・おおう・たちまち  大部

解字 金文は「イナズマの形(电=申シン)+大(人の正面形)」で、雷雲が人の頭上をおおう意。篆文は大が上にきた形で同じ意味を表す。たちまち・にわかの意も雷雲から由来する。奄を音符に含む字は、「おおう」「おおきい」イメージを持つ。 
イナズマは、音符「申シン」を参照。
意味 (1)おおう(奄う)。「奄有エンユウ」(おおって自分のものにする)(2)(おおわれて)ふさがる。「奄奄エンエン」(息の絶え絶えであるさま=気息奄奄キソクエンエン)(3)たちまち(奄ち)。にわか。「奄然エンゼン」(にわかなさま・くらいさま)「奄忽エンコツ」(にわかなさま)(3)地名。「奄美あまみ」(鹿児島県南部の島、①奄美大島と、②奄美諸島がある)

イメージ  
 「おおう」
(奄・掩・菴・庵・淹・晻・閹)
  雷雲がおおう意から「おおきい」(俺)
音の変化  エン:奄・掩・淹・俺・閹  アン:菴・庵・晻

おおう
 エン・おおう  扌部
解字 「扌(て)+奄(おおう)」の会意形声。奄のおおう意を、手を付けて動詞化した字。
意味 (1)おおう(掩う)。おおいかくす。「掩蓋エンガイ」(おおい)「掩蔽エンベイ」(おおいかくす)「掩護エンゴ」[敵の攻撃から](味方をおおいまもる)(2)かばう。「掩護エンゴ」(かばい守る)(3)たちまち。にわか。「掩襲エンシュウ」(不意におそう)「掩撃エンゲキ」(不意打ち)
 アン・いおり  艸部
解字 「艸(草)+奄(おおう)」の会意形声。草で屋根をおおった粗末な小屋。
意味 (1)いおり(菴)。草ぶきの小屋。「菴舎アンシャ」(墓で喪に服する小屋)(2)雅号や屋号などに添える語。「不審菴フシンアン」(表千家の茶室)
 アン・いおり  广部
解字 「广(やね)+奄(おおう)」の会意形声。菴アン(いおり)の艸⇒广に変えた字で、同じく、いおりを表す。
意味 (1)いおり(庵)。茶室などの小さな家。「草庵ソウアン」「庵主アンシュ」「庵裏アンリ」(いおりの中)(2)仏を安置して住む家。「禅庵ゼンアン」(3)人名。「沢庵タクアン」(①江戸初期の臨済宗の僧。書画・俳諧・茶に通じた。②沢庵漬けの略。干した大根を糠ぬかと塩で漬けたもの。たくわんともいう。)
 エン・ひたす・いれる  氵部
解字 「氵(みず)+奄(おおう)」の会意形声。水でおおわれることから、ひたす意となる。また、(水が)とどまる、(水でおおわれて)ひろい意。日本では、ひたす意から、茶葉に浸してお茶などを「いれる」意で使う。
意味 (1)ひたす(淹す)。つける。「淹漬エンシ」(ひたす。淹も漬も、ひたす意)(2)とどまる。ひさしい。「淹滞エンタイ」(とどこおる)「淹留エンリュウ」(ひさしくとどまる)(3)ひろい。「淹通エンツウ」(ひろくゆきわたる)(4)[国](お茶などを)いれる(淹れる)。「お茶を淹れる」「コーヒーを淹れる」
 アン・くらい  日部
解字 「日(ひ)+奄(おおう)」の会意形声。日が雲におおわれてくらいこと。暗アンの同音代替字となる。
意味 くらい(晻い)。日が隠れてくらい。「晻晻アンアン」(くらいさま)「アンマイ」(①くらい。暗黒。②おろか)「晻世アンセイ」(暗い世の中)「晻曖アンアイ」(暗いさま)
 エン・(かんがん)  門部
解字 「門(もん)+奄(おおう)」の会意形声。門をおおう扉から、宮殿の門を守る役人の意。門番。門番は宮廷で罪を犯して刑罰(宮刑)を受けた男子が行ったので、宮刑(去勢される)を受けた宦官の意となる。「史記」の編纂で知られる司馬遷は漢の武帝の怒りをかい宮刑に処せられ宦官となったが執筆をつづけ史記を完成させた。
意味 (1)宮廷の門を守る門番。「閹謁エンエツ」(門番の取り次ぎ)(2)かんがん。宦官。去勢(生殖器をとる)された男子。「閹割エンカツ」(生殖器をとる)「閹官エンカン」(宦官として宮中に仕える者。=閹宦エンカン。閹人エンジン)「閹尹エンイン」(宦官を管理する官)(3)おおう。かくす。「閹然エンゼン」とは、本心・本性をおおいかくし、人に迎合するさま。(孟子「尽心・下」)
 アン・エン・あみ  罒(网)あみ
解字 「罒(网あみ)+奄(おおう)」の会意形声。网あみでおおうこと。
意味 (1)あみ(罨)。おおかぶせて魚や鳥をとらえるあみ。(2)おおう。上からかぶせる。「罨法アンポウ」(布で患部を冷やしたり温めたりする治療方法)「冷罨レイアン」(冷たい布でおおう)「斜罨シャアン」(傾斜地をおおう)

おおきい
 エン・アン・おれ  イ部
解字 「イ(人)+奄(大きい)」の会意形声。大きな人。自称に用いる。
意味 (1)おれ(俺)。われ。自分の俗称。「俺達おれたち」「俺流おれりゅう」「俺們アンメン」(おれたち)(2)おおきい。ゆたか。
<紫色は常用漢字>

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音符「就シュウ」<つく・つける>と「蹴シュウ」「鷲シュウ」「僦シュウ」

2024年05月17日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 シュウ・ジュ・つく・つける  尢部 jiù  


 上は就シュウ、下は尤ユウ
解字 就の篆文(説文解字)は「京(大きな高楼)+尤ユウ⇒シュウ」の形声文字。音符「尤ユウ」の甲骨・金文は又(て)の一端に短線を引いて指が傷を負う形で、とが・災いの意。また、同音の優ユウに通じ、すぐれる意味がある。篆文から形が変わり尤ユウになったが、就シュウではユウから変化したシュウの発音を表しており「とが・すぐれる」の意味はない。就シュウは大きな高楼に、つく(到着)意からはじまり、その建物で仕事につく、仕事をなしとげるなど、多様な意味をもつようになった。宋代の韻書[広韻]は「成る也(なり)」とする。京は現在「みやこ(京)」の意だが、元の意味は王のすむ大きな建物の意。
意味 (1)つく(就く)。ふれる。すすむ。むかう。「金(属)は礪レイ(砥石)に就(つ)けば則ち利(鋭い)となる」「就寝シュウシン」(床につく。寝る)(2)つく(就く)。つける(就ける)。仕事や任務につく。高い職位につく。「就職シュウショク」「就業シュウギョウ」(業務に就く)「就任シュウニン」(高い職位につく)(3)なる(就る)。なす(就す)。なしとげる。「成就ジョウジュ」(4)たとえ。かりに。「就中なかんずく」(中(なか)に就(つ)くの音変化。その中でも。とりわけ)「就令たとえ」(もしも。かりに)

イメージ 
 「つく・つける」
(就・蹴・鷲・僦)
音の変化  シュウ:就・蹴・鷲・僦

つく・つける
 シュウ・シュク・ける  足部 cù
解字 「足(あし)+就(つく・つける)」の会意形声。ある物に足を上からつけると、ふむ・ふみつける意となる。また、足を横から強くつけると、ける意となる。ふむ意はシュクの音、ける意はシュウの音となる。
意味 (1)ふむ。ふみつける。「蹴踏シュクトウ」(蹴も踏も、ふむ意)(2)ける(蹴る)。けとばす。「蹴球シュウキュウ」(サッカー)「蹴鞠けまり」「一蹴イッシュウ」(ひとけり)  
 シュウ・ジュ・わし  鳥部 jiù
解字 「鳥(とり)+就(つく・つける)」の会意形声。するどい爪で獲物を襲い、爪をつけて獲物をつかみ取る鳥。
意味 わし(鷲)。タカ科の大形の猛禽。「鷲掴(わしづか)み」(ワシがするどい爪で獲物をつかむこと)「鷲鼻わしばな」(ワシのくちばしのような鼻)「鷲峰山ジュブセン」(京都府南部にある山の名。名の由来は鷲が翼を広げたような山から)「霊鷲山リョウジュセン」(中インド・マガダ国にあり釈迦が法華経を説いたという山。山の形が鷹に似るから、また鷹が多くすむからという)

霊鷲山(ウィキペディアより)
 シュウ・やとう  イ部 jiù
解字 「イ(ひと)+就(つく・つける)」の会意形声。人を金で雇い、ある業務や仕事に就かせること。転じて、お金をはらって物を借りること。
意味 (1)やとう(う)。手付金をはらって人をやとう。「シュウジン」(人をやとう。やとい人)「シュウヒ」(雇い人の費用、特に運送料をいう)「シュウバ」(人をやとって馬で運送させること。日本では後に独立した輸送業者になった)「馬の党」(駄馬輸送業者集団。平安時代・9世紀末の坂東諸国で強盗として蜂起した)(2)賃借りする。「シュウオク」(家を賃借りする=シュウシャ
<紫色は常用漢字>

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音符「馬バ」<うま>「罵バ」「闖チン」「媽マ」「瑪メ」「碼メ」 と 「匹ヒツ」

2024年05月15日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 バ・メ・マ・うま・ま  馬部 mǎ         

解字 ウマを描いた象形。甲骨文はウマをタテに描いており、上に頭、その下にたてがみと足、最後に尻尾をつけている。金文はその流れを引き継ぎ、篆文にいたって抽象化された芸術的な馬の字が完成した。現代字の馬は、足を四つの点で表現している。馬は部首にもなる。
意味 うま(馬)。「騎馬キバ」「馬具バグ」「馬蹄バテイ」(馬のひづめ)「駿馬シュンメ」「伝馬テンマ」(運送用の馬)「馬子まご」(馬引き)
参考 馬は部首「馬うま・うまへん」になる。左辺や下部について馬にかんする意味を表す。常用漢字で11字(馬を含む)あり、約14,600字を収録する『新漢語林』では133字が収録されている。
常用漢字 11字
 バ・メ(部首) 
 駅[驛]エキ・うまや(馬+音符「睪エキ」)
 キ・のる(馬+音符「奇キ」)
 キョウ・おどろく(馬+音符「敬ケイ」)
 ク・かける(馬+音符「区ク」)
 ク・こま(馬+音符「句ク」)
 験[驗]ケン・ためす・(馬+僉セン」)
 ソウ・さわぐ(馬+音符「蚤ソウ」)
 (馬+音符「太タ」) 
 チュウ・とどまる(馬+音符「主シュ」)
 トウ・あがる(馬+音符「滕トウの省」)
常用漢字以外
 ガ・のる(馬+音符「加カ」)
 キョウ・おごる(馬+音符「喬キョウ」)
 駿シュン・すぐれる(馬+音符「夋シュン」)
 ジュン・なれる(馬+音符「川セン」)
 ラク(馬+音符「各カク」)ほか

イメージ 
 「うま」
(馬・罵・闖・瑪・碼)
 「マの音」(媽)
音の変化  バ:馬・罵  チン:闖  マ:媽  メ:瑪・碼

う ま
 バ・ののしる  罒部あみがしら mà
解字 「罒(=网:あみ)+馬(うま)」の会意形声。罒は网(あみ)の形だが馬に網をかぶせても、ののしる意は出てこない。ののしる意の字は、詈である。この字は「罪人に网(あみ)をかけて言う⇒ののしる意。[字統]は、馬に罪人をのせて市中を引き回し、人々が罪人を詈(ののし)るさまを「馬+罒(=詈。ののしる)」⇒罵と表現したとする。下図は日本の市中引回しだが、中国にあったかは定かでない。後漢の[説文解字]は「詈也(なり)。网に従い馬の聲(声)」とするだけであり、馬に乗せての市中引回しは覚え方としていいと思う。

引回<死罪大秘録>(「日本国語大辞典」の、ひきまわし(引回)より)
意味 ののしる(罵る)。口ぎたなくけなす。「罵声バセイ」「罵倒バトウ」「罵詈バリ」(罵も詈も、ののしる意)「罵詈雑言バリゾウゴン」(口をきわめた悪口)
 チン  門部 chuǎng
解字 「門(もん)+馬(うま)」の会意。馬が門から突然入り込んでくる形だが、馬に乗った兵士が突然、門に入ってくる(私見)イメージがある。
意味 (1)急に入りこむ。「闖入チンニュウ」(突然、無断で入り込むこと)「闖将チンショウ」(荒武者。ならずもの)「闖子チンシ」(暴れん坊)「闖然チンゼン」(だしぬけに頭を出すさま)(2)うかがう。ねらう。
 メ・バ  王部 mǎ
 瑪瑙メノウ
解字 「王(玉)+馬(うま)」の会意形声。馬の脳に似た宝石の意から、馬に王偏を付けた字。同じく、脳に王をつけた瑙ノウとともに瑪瑙メノウとして使われる。
意味 瑪瑙メノウに用いられる字。瑪瑙とは、石英・蛋白石などの結晶の混合物。赤褐色・緑・白などの美しい縞模様があり、装飾品・彫刻材料などに用いられる。
 メ・マ・バ  石部 mǎ
解字 「石(貴石)+馬(うま)」の会意形声。馬の脳に似た貴石の意から、馬に石偏を付けた字。同じく、脳に石をつけた碯ノウとともに碼碯メノウとして使われる。
意味 (1)碼碯メノウ(=瑪瑙)に用いられる字。碼碯とは、石英・蛋白石などの結晶の混合物。瑪瑙とも書く。(2)数を示す符号。「号碼ゴウマ」(中国語で番号の意)(3)「碼ヤード(yard)」英語のヤード(yard)の音訳字。1ヤードは91.44㎝。

形声字
 マ・ボ・モ  女部 mā
解字 「女(おんな)+馬(マ)」の形声。マはママ(mama・母親)のマを表す語として用いられる。馬の発音「マ」は唐音(宋~清代)で比較的新しい発音。
意味 おかあさん。「媽媽ママ」(おかあさん。中国で俗語として使われたが、今日では母親の意の口語として定着している。簡体字は妈妈māmā)


     ヒツ <二頭のならんだ馬>
 ヒツ・ひき  匸部 pǐ 

解字 金文は 厂(屋根)の下にいる馬の尻(尾を含む)が二つ見える形とされ、並んでいる馬を二つ描いた形の象形。金文では並ぶ馬の数を表す量詞の「馬四匹」という語がある。転じて、たぐい・仲間の意に用いる。日本ではさらに獣・魚・虫などを数える言葉とする。字形は篆文で形が変化し現代字は匹になった。
意味 (1)ひき(匹)。二つがならぶ。対になる。なかま。「匹敵ヒッテキ」(ほぼ対等であること)「匹偶ヒツグウ」(相手になること。結婚すること)(2)ありふれた。つまらない。「匹夫ヒップ」(①ひとりの男。②身分の低い男)「匹婦ヒップ」(3)馬や動物を数える言葉。「猫一匹いっぴき」(4)布の長さの単位。古くは四丈を一匹とした。「匹絹ヒツケン」(四丈の長さの絹布)
<紫色は常用漢字>

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