弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属

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よくある質問(法令解説1):避難基準20ミリシーベルトと公衆被ばく線量基準1ミリシーベルトの違い

2017-06-19 20:52:28 | 放射能汚染防止法制定運動

 

<記事の複写配付自由です。「制定しよう放射能汚染防止法」と合わせてご活用ください。>

 

よくある質問(法令解説1)

<避難基準20ミリシーベルトと公衆被曝線量基準1ミリシーベルトの違い>

 原子力防災法による避難基準の20ミリシーベルトによって、一般住民の

公衆被曝線量基準1ミリシーベルトは、排除されるのか。

(関連質問=公衆被曝線量規制の1ミリシーベルトがどんな規制なのか、わかったようでわからない。)

 

 排除されません。 

法令の基本的な「仕組み」の理解が必要です。特に「技術基準法」の理解は、基本

中の基本です。

国は、公害法の整備を怠っているだけでなく、現行法さえ無視した違法な政策を実行しています。この際しっかりつかんでおきましょう。

1 「技術基準法」と1ミリシーベルトの理解

① 放射線取扱従事者や一般国民を放射線障害から守るための基準を定めた法律は、複数あります。原子炉等規制法、放射線障害防止法、労働安全衛生法等です。

② これらの複数の法律にまたがる基準を一律に統一的に定めるための法律があります。「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」(以下「技術基準法」)です。

③ 公衆被曝線量基準1ミリシーベルトは、この技術基準法があることによって関係法律一律に統一的に同じ値で決められているのです。このような扱いを「斉一」扱い(技術基準法1条)と言います。

④ 技術基準法第3条には、次の規定があります。

 第3条「放射線障害の防止に関する技術的基準を策定するに当たっては、放射線を発生する物を取り扱う従業者及び一般国民の受ける放射線の線量をこれらの者に障害を及ぼすおそれのない線量以下とすることをもって.その基本方針としなければならない。」

⑤ 行政機関が放射線障害防止の技術的基準を定めるには放射線審議会の諮問を経る必要があることも定められています。(同法5条)

⑥ 以上からわかるように、公衆被曝線量基準1ミリシーベルトというのは、一般国民に障害を及ぼすおそれのない線量以下にすることを基本方針に、放射線審議会の諮問を経て、関係法律一律に統一的に策定された「法令上根拠のある」放射線障害防止の基準です。

⑦ 公害法の未整備との関係も述べておきます。この1ミリシーベルトは、公害規制の法律と異なり違反に罰則が無いなど欠陥制度です。しかし、一般国民に放射線障害を及ぼさないための「法律上の」統一基準です。

  くどいようですが、国民を放射線障害から守るための法律上の統一基準は1ミリシーベルトである。と確認しておきましょう。

*追記 

 公衆被曝線量を巡る議論の多くが、この「技術基準法」をわきまえずに行われているようで、奇異に感じます。同法第一条、第3条を一度は読んでおくべきです。

2 原子力災害特措法による避難基準の20ミリシーベルトの意味

  以下、「制定しよう放射能汚染防止法」の<原子力災害特措法の濫用>から引用します。

 <引用開始↓>

20ミリシーベルトは、原子力災害特措法の緊急事態宣言に伴う避難基準として設定されたものです。

原子力災害特措法による避難基準は、公衆の被曝線量基準とは別です。原子力災害の際「緊急事態なので避難せよ」という防災上の措置として設定される数値です。緊急事態宣言があろうがなかろうが、それに伴う避難基準がどのように決められようが、法律上の公衆線量限度は同じです。 

本来公衆被曝線量の基準は公衆を被曝から守るための基準ですから、防災上の避難基準としてもこれを尊重して1ミリシーベルトに設定すべきです。しかし、これを越えて設定したからといって、公衆被曝線量の1ミリシーベルトが変更されるものではないのです。また、東電の賠償責任が左右されるものでもありません。

従って、避難指示が解除され、そに住むことになった人には、当然公衆被曝線量限度1ミリシーベルトが適用されるべきものです。

ところが政府は、原子力防災の避難の基準に決めた年20ミリシーベルト

を、防災目的の枠を越えて公衆被曝線量基準の代わりに用いるという、法制度の濫用を行っているのです。

政府は、法律上の公衆保護の基準である1ミリシーベルトを無視して、20ミリシーベルトを基準に、原子力防災法による避難指示が解除されたのだから、そこに住めますよ、いやなら勝手にしろ、国も電力会社も責任は負わないぞ、という態度に出たのです。(第6章参照)

政府は、原子力公害を規制する法律がないことをよいことに、原子力災害特措法を悪用して、堂々と法的根拠の無い被曝線量を押しつけています。一旦1ミリシーベルトという基準を無視してしまったので、汚染に合わせた防災の基準を作れば、その基準が通ってしまうという体制です。

<引用終わり↑>

 

3 以上のように、一般国民を放射線障害から守るための基準は、あくまでも法律上1ミリシーベルトです。

 20ミリシーベルトというのは、原子力災害特措法による災害対策本部長(内閣総理大臣)の避難指示の基準、より正確に言えば、避難指示区域の設定基準に過ぎません。国が、放射線による障害から国民を守るべき法律による統一基準は1ミリシーベルトなのです。別の表現をすると、汚染地域の避難指示が解除され、そこに住むようになった地域の住民は、法律上、放射線による障害を受けるおそれのある生活をすることになったということです。国は、避難解除以前にも増して1ミリシーベルトを基準に住民を被曝から守る義務があるのです。「住むことができるようになったのだから被害はない。」という政策は、現行法を無視したとんでもない政策です。

 このような行政による誤導政策に引きずられてはなりません。緊急事態宣言があったのだから1ミリシーベルトを無視しても加害行為にはならなくなってしまう、というような、法的明確性を欠いた誤った考えが広がると、それが「相場」となって、社会に蔓延し、司法の場にさえ影響します。

 チェルノブイリ法では、1ミリシーベルトを基準として移住の選択権がありますが、日本の法律でも、これに相当する共通の基準はあるのです。

 放射能汚染に対する公害規制の欠陥に取り組む一方、現行法令さえ無視した違法な政策を許さないようにすることが必要です。

 

4 国は、技術基準法を改正して、環境審議会の権限を強化しました。

 緊急時被曝線量基準20ミリシーベルトの法令化に向けた動きと言われています。後追い的にこのような立法化をすることは重大な問題です。しかし、緊急時の被曝線量をどのように定めようと、放射線障害防止の基準である1ミリシーベルトを超えて被ばくさせる行為が「違法な加害行為」であることに変わりはないのです。

 行政の動きに注意し、「ごまかされない」ようにしましょう。

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